新刊案内アーカイブ


またぞろがっつり更新をため込んでしまって、大変申し訳ございません。
まずは4月末(5月奥付)の新刊から、ご紹介させてください。

〈トム・クランシーのオプ・センター〉新シリーズの第5弾『黙約の凍土』(上・下)。
今回は、ロシアとキューバを舞台とした「核弾頭」をめぐる陰謀に、オプ・センターのメンバが立ち向かいます!

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ひえっっ! 久しぶりにこんな感じの装丁やってみました!

あらすじは、こんな感じです。

老齢のロシア人元武器商人ボリシャコフが長く疎遠になっていた息子ユーリーからの連絡を受けて向かった先は、シベリア北東部アナドゥイリの寒村だった。

そこには、1962年のキューバ危機の際、ソ連によってひそかに設置されたサイロと二基の核ミサイルが今も眠っているのだ。

一方、オプ・センター長官チェイス・ウィリアムズは、イランから米国への亡命を希望するガセミ准将の尋問を行なうなかで、彼の亡命の裏に何か大きな策謀が隠されていることを察知し、メンバーに周辺調査を指示する。

その結果、イランで拘束され人質に取られているはずのガセミ准将の娘、原子物理学者のパランド博士に不穏な動きが見いだされる。

イランによる核爆弾入手計画の可能性に思い至ったチェイスは、部下のマコードをキューバに派遣して、核サイロのありかを知り得る高齢の女性革命家との接触を図るのだが......。

ロシアのGRUとイランが結託して展開する核爆弾移送作戦を、オプ・センターの面々は水際で食い止めることができるのか? 緊迫のミリタリー・サスペンス!


前作『暗黒地帯(ダーク・ゾーン)』では、まさにロシア対ウクライナの戦争勃発危機を題材に、プーチン大統領による軍事的戦略や、戦車軍団による大進撃など、いままさにウクライナ侵攻で起きていることを「予見」するかのような内容を描いていて、本当に驚かされました。

本作では、過去に封印されたまま忘れ去られた「核弾頭」をめぐって、ロシアとイランがはかりごとをたくらみ、それをいち早く察知したオプ・センターの面々が、最悪の事態を回避するために、水際で奮闘します。

ロシアによる「核使用」の可能性というのも、いまこの瞬間においては、大変ホットなトピックです。
ミリタリー・サスペンスにおいて、これから起こりうる危機としてかつて取り上げた内容が、4年、5年と経過するなかで、現実によって後から追いつかれるというのは、まさに著者陣の「見識」と「分析力」、「未来透視力」を指し示す、見事な証左であるといえましょう。

ただ、本書に先駆けて昨年9月に日本で刊行された、ジャック・ライアン・シリーズの『密約の核弾頭』[上・下 新潮文庫]とも、ロシア、イラン、核弾頭というキーワードや大まかな展開が丸かぶりしちゃってることに気づいたときは結構焦りました......本国では『密約の核弾頭』も『黙約の凍土』も、同じ2018年に刊行されてるんですね。トム・クランシー銘柄どうしで、横の連絡とか内容調整とかはやらないものなんかね、とかちょっと思っていしまいました(笑)。

あと、今回の物語では、キューバの老女性革命家が大きな役割を果たします。
この葉巻をくわえた女丈夫が、じつに魅力的なキャラクターなんですね。
個人的には、コーネル・ウールリッチの『恐怖の冥路』に登場する、あの印象深いハバナ人女性を想起しましたが、さすがにちょっと古いですか(笑)。
彼女をめぐる物語にもまた、「ロシア(ソ連)」という国の影が落ちています。

次回作、『Sting of the Wasp』では、オプ・センターが大きな危機に見舞われます。
無差別テロの勃発。オプ・センターへの解散指令。
だが、その背後では、極秘の計画が動いていた......。
緊迫の展開が待っておりますので、ぜひお楽しみに。
これまで1年に1作のペースでご紹介してきた本シリーズですが、次作はあまり間をあけずに、2022年の9月末にはお届けしたいと思っております。ご期待ください!(編集Y)







2022年6月24日 19:39 | | コメント(0)

先月の新刊を今頃ご紹介して申し訳ありません。
NUMAシリーズの第13弾、クライブ・カッスラー&グラハム・ブラウンの『オシリスの呪いを打ち破れ』(上・下)(土屋晃 訳)、もう読んでいただけたでしょうか。

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上巻出だしのあらすじは、こんな感じです。

地中海で沈没船の調査をしていたNUMA(国立海中海洋機関)のオースチンはそこで不可解な救難連絡を受け取る。
「こちらはドクター・レナタ......わたしたちは攻撃されました......」
発信元であるシチリアの離島、ランペドゥーザに急行したオースチンが目にしたのは黒煙に覆われた島と無数の亡骸だった――。
同じ頃チュニジアにいたNUMAのトラウト夫妻は、北アフリカ諸国の水源たる地下水が忽然と姿を消してしまったことを知った。
今、地中海世界が未曾有の恐怖に呑み込まれようとしていた。

前作『失踪船の亡霊を討て』では、記憶喪失を起こして傷ついた姿を見せたカート・オースチンでしたが、本作では完全復活。スーパーヒーローとして大活躍します。
カッスラーの小説では、ときどき「毒霧」系の化学兵器と、「地殻変動」系の地質兵器が登場しますが、今回はその合わせ技のような作りとなっております。
あと、なんといっても面白いのが、〈オレゴン・ファイル〉の主人公、ファン・カブリーヨがカメオ出演します。というか、皆さん、オレゴン号シリーズの『ハイテク艤装船の陰謀を叩け!』で、カート・オースチンが登場したのを覚えておられるでしょうか? 本作では、あのときの邂逅が、「オースチン」の視点から改めて描かれているのです。
ときにシリーズ・キャラクターをクロスオーバーさせるカッスラーですが、ファン・サーヴィスを第一に考えていた生粋のエンターテイナーらしい趣向だといえるでしょう。
ぜひ相棒と美女をお供に巨大な陰謀に立ち向かうオースチンの雄姿をご堪能ください。

それなりに〈NUMAファイル〉は過去作がたまっているので、次回作『Nighthawk』もほぼ半年後の8月刊でお送りしたいと思っております。久々の超ハイテク兵器もの。こちらもお楽しみに!

2022年4月29日 17:22 | | コメント(0)

またも更新が大変遅れまして申しわけありません。
今月のもう一点の新刊、ラーシュ・ケプレル『墓から蘇った男』(上・下)(品川亮・訳)、もう読んでいただけたでしょうか。
ヨーナ・リンナ・シリーズ第7弾。いよいよ物語は佳境に入ってまいりました。

担当は、おそらくこれが最後の海外文庫編集となるかもしれない上司Y(次作から、新たに配属されてくる若手にシリーズを引き継ぐと明言)。彼女が皆様にお送りする、魂の一書でございます。


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あらすじは、こんな感じです。

オスロの集合住宅の住民から悪臭の苦情が寄せられ、警官が向かった先には、腐敗が進行し、腹部を膨張させ両足の開いた男の死体があった。
一地方警察官として勤務し、数週間後に警察庁の警部に復職することになっているヨーナのもとに、色を失った監察医ノーレンが訪れる。
死んだ男の冷凍庫には多数の切断された人体のパーツがあり、その中に亡くなったヨーナの妻スンマの頭蓋骨があったというのだ。
スンマの墓が荒らされたことにショックを受けるヨーナは、かつて対峙した怪物の狂気に満ちた記憶を蘇らせる......。
その怪物は、ひとの人生を破壊し、犠牲者からすべてを奪った。
その魔の手はヨーナに及んだ。
ヨーナは、妻スンミと娘のルーミを守るため彼らが亡くなったと見せかけ、高い代償を払った。
一方、怪物の捜査に覆面捜査官として携わった公安警察の警部サーガは、父と和解し、腹違いでダウン症の妹ペレリーナに愛情を注いでいた。
そんな矢先、パトロール中のヨーナに、国家警察長官カルロスから、ドイツ連邦刑事庁の警部が連続レイプ魔の死亡事件について大至急連絡を取りたがっていると電話が入る――二人の軛は断ち切れるのか?


いやあ、こういう言い方はなんですが、まあまあ「えげつない」話です。
ちょっと、作者のドSぶりが、ただごとではない。
扶桑社ミステリーの長い歴史を考えても、稀に見るくらいの「ひりついた」話だと思います。

しょうじき、ゲラを読んでいて、ここまで徹底的にやるものなのかと、結構びっくりしました。
あんな優しそうな顔して、ラーシュ・ケプレル(もともとは覆面作家ですが、いまはもう顔出しで、3人の娘さんがいる作家夫婦による共作であることを明らかにしています)、どんだけ怖いこと考えてるんだ......!?

まず、本作は実質的に、シリーズの2つ前の作品にあたる『砂男』(上・下)の「続編」に近い内容であるといえます。
すなわち、これまで基本、一巻一話完結で進んできた本シリーズですが、いよいよシリーズ全体に関わる「大きな物語」が動き出したという感じですね。
なので、本作に限っては、先に『砂男』をお読みいただいてから手に取っていただいたほうが、十全にその内容を楽しめると思います。

『砂男』では、ハンニバル・レクターを想起させる、恐るべき万能のサイコ殺人犯が登場しました。
肉体をもったひとりの人間でありながら、超越的な存在として君臨し、捜査官の人生まで支配する恐るべき犯罪者。彼は、恐怖をまき散らし、殺戮の限りを尽くしながらも、ヨーナ・リンナとサーガ・バウエルの活躍によって、なんとか倒されました。
前作、『ウサギ狩り人』では、彼が本当に死んでいることを確定する証拠が発見されます。
ようやく世界に平穏が戻り、とまっていたヨーナ・リンナの人生も動き出したかのように思われました。
とある殺人事件の現場から、ヨーナの亡き妻スンマの頭蓋骨が発見されるまでは......。

本作の原題にあたるLazarus というのは、聖書でいうところの「ラザロ」で、キリストの奇跡によってよみがえった蘇生者です。すなわち、本作では、一度死んだとされ、その死が証拠によっても確定づけられていた殺人鬼の「復活」の物語なのです。

ミステリーにおいては、ある種の「絶対悪」、人でありながらも「厄災」といっていいような力を発揮するモンスター犯罪者の登場する小説がときどき現れます。
本作『墓から蘇った男』が、その系譜のなかでも図抜けて強烈な印象を与えるのは、おそらくなら、彼が「捜査側の人間を徹底的に巻き込んでいく」犯罪者だからかもしれません。

サイコキラーものでは、とあるオブセッションに取り憑かれた殺人鬼と、その心理をプロファイルする捜査官の対決物という構図がとられますが、たいていの場合、捜査官は「追跡者」サイドの人間であり、事件を「外」から解釈する存在にすぎず、その意味では読者の側に立つ人間です。
捜査官が犯罪者の臭跡と思考に寄り添いすぎると、本人の心まで汚染される危険があり、そのことをテーマにした作品もたくさんありますが、それはいわゆる「闇堕ち」の恐怖であり、実質的な危険は、捜査対象に近づくなかで敵に「反撃される」までは発生しないのが通例です。

ところが、本作の「怪物」は違います。
自分の起こした事件を担当する捜査担当者まで、速攻で次なる「犠牲者」リストに加えてくるのです。
しかも、狙うのは捜査官自身ではなくて、その家族。
つぎつぎと、捜査官の「家族」を奪い去ることで、相手の心と屈服させ、人生を破壊しようと企ててくるわけです。
ケプレルの世界では、「楽しい探偵ごっこ」は成立しません。
事件の捜査に乗り出した瞬間に、犯人が、探偵役とその家族までターゲットとして「鏖殺」を図ってくるのですから。
捜査官もまた安全圏にはいないし、実際、『砂男』では、ひとりの捜査官が破滅へと追いやられます。
ほんの一瞬の気のゆるみから、足元が瓦解してゆく感覚。
ちょっとした扉の隙間から、目に見えない不定形の「とてつもなく悪い」何かがはいりこんでくる感覚。
この、ペストか放射能汚染でも相手にしているような非人格的な恐ろしさは、探偵と事件、探偵と犯人という対立軸を無効化し、「狩人」はいつしか「狩られる者」として、デスゲームのさなかに放り込まれることになります。

境界を越境して、すべてを汚染してゆく恐怖。
それは、捜査官の側に寄り添って立ち、作品世界を間近で傍観している、われわれ「読者」自身にまで忍び寄ってくる恐怖でもあります。

とにかく上下巻を通じて、サイコ・サスペンスというより、ほとんどホラーに近いような緊迫した「マジモンの恐怖」が充満しています。サイコ犯を倒すというよりは、人智を超越した「悪神」とでも闘っている感覚に近いかもしれません。
悪しきカリスマにみいられてしまった、ヨーナとサーガの運命やいかに。
その顛末は、ご自身の目でお確かめください。

なお、当初ヨーナ・リンナ・シリーズは8巻で完結との触れ込みでしたが、先日届いた最新作『Mirror Man』の概要を読むかぎり、あとしばらくシリーズは続きそうな気配ですね。
今回の、あのどうなるのかわからないエンディングのまま宙ぶらりんというのはかなりつらいものがありますが、今のところ、次巻の邦訳は秋くらいの発売を予定しておりまして、鋭意版権交渉中でございますので、続きを楽しみにしてお待ちください。(編集Y)
















2022年3月27日 07:10 | | コメント(0)

扶桑社ミステリー、というと、みなさまいろいろなイメージをお持ちだと思うのですが、スティーヴン・ハンターやカッスラーやケッチャムやノワールなどなどの裏で、長くご愛顧いただいてきたのが、ミステリー・クイズです。
ケン・ウェバーの『5分間ミステリー』はシリーズ7作を数え、ローレンス・トリートの『絵解き5分間ミステリー』は3作。さらには、新保博久教授の『5分間ミステリー 容疑者は誰だ』もあります。
(他社からも、似たような本がいろいろ出ましたっすね)

そんなミステリー・クイズの新機軸が、この『5分間ミステリー あなたが陪審員』(マーヴィン・ミラー著/高橋知子訳)です。
表紙イラストは、おなじみ杉田比呂美さん。
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タイトルどおり、あなたは陪審員となって、裁判に臨みます。
殺人未遂や強盗や脱獄といった重大な刑事事件から、近隣のいさかいや企業の環境汚染や特許侵害などの民事事件まで、多様な訴訟がそろっています。
原告も被告も、自分の主張をとおそうと弁論を展開します。
それとともに、証拠物件(現場写真や供述書類等々)が3点提示されますので、それらをもとに評決をくだしてください。

アメリカで出版された原著は、シリーズ5作を数える人気の作品です。
ぜひ、この裁判クイズをご体験ください。

2022年3月 3日 20:09 | | コメント(0)

だいたい2年に1作くらいのペースで書き継がれてきたクライブ・カッスラー&ダーク・カッスラーダーク・ピットもの。
その最新作、『悪魔の海の荒波を越えよ』(上・下)(中山善之・訳)がいよいよ発売になりました。ダークが引き続き、著者をつとめています。
内容は、まさに原点回帰のバリバリの海洋&山岳冒険小説で、個人的には扶桑社に移ってからいちばんおもしろいのではないかと。

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あらすじは、こんな感じです。

フィリピン沖のルソン海峡で深海流の調査を行っていたダーク・ピット親子とジョルディーノたちは、突然発生した高波に襲われながらも、海底に沈んでいる古いダグラスC-47輸送機を発見する。
そんな折、サンデッカー副大統領から、中国が最近発射して海に墜落した超高速ミサイルの残骸を中国に先んじて回収せよとの依頼が入る。
ピットとジョルディーノが水中艇でその任務へ向かう一方、ダークとサマーは墜落機の機内を探索、スーツケースの中に収められたチベット製の彫像を発見するが......。

今回、ダーク・ピットとジョルディーノの年長組は、海中探索艇に乗って謎の津波現象と対峙したうえ、遭難して南海の孤島でのサバイバル生活をいやおうなく体験します。いっぽうで、息子のダークと妹サマーの若者コンビは、台湾からインドへと飛び、ヒマラヤの高山地帯でチベット仏教の秘宝を捜索することに。
いわば、「海」と「山」を舞台とした極限のアクションがひたすら続く、ファンにとっては一粒で二度美味しいつくりとなっています。

敵が「中国」というのも、いままさに北京オリンピックが開催されているまっただなかで、なかなかに刺激的な設定ではありますが、チベット問題と台湾問題に焦点を当てた本作の内容は、まさに覇権国の生々しい野望を浮き彫りにしており、時事的にヴィヴィッドな題材選択といえるのではないでしょうか。
ラストには、あの「チベットを象徴する人物」が登場して、お話を締めくくってくれます。

「大国とアメリカとの諜報合戦」に「新型ミサイル開発」と「稀少鉱物」が絡み、海洋での「引き揚げ」合戦で両国がしのぎを削る......本作がまさに『タイタニックを引き揚げろ』と相似形を成すプロットを有するのは、「もう一度初心に帰って、この世界を代表する海洋冒険シリーズをいっそう骨太に盛り上げてゆく」という、ダークの強い決意の現われといっていいでしょう。

読み応え十分、無条件に面白い最強のエンターテインメント、ダーク・ピット・シリーズはこれからも不滅です。ぜひお楽しみください。

なお、3月末にはクライブ・カッスラー&グラハム・ブラウンによる本作の姉妹編、カート・オースチンが大活躍するNUMAファイル・シリーズの第13弾、『The Pharaoh's Secret』(上・下)をお届けする予定です。こちらもお楽しみに! (編集Y)



2022年2月 7日 19:37 | | コメント(1)

いよいよ、クリント・イーストウッド監督・主演による『クライ・マッチョ』が1月14日より全国公開となりました。
本作は、監督生活50周年、監督作品40作目の記念作となっております。

それに合わせまして! 扶桑社より、本作の原作『クライ・マッチョ』を緊急出版することになりました。
著者は、N.リチャード・ナッシュ。彼の作品が翻訳されるのは、本邦初となります。翻訳者は、古賀紅美さん。
本書がアメリカで書かれたのは、1975年。それから、何度も映画化の話がありながら、ようやく今回実現した作品でもあります。
映画公開に合わせて13日発売で世に送り出しましたので、今日あたりには全国津々浦々の書店店頭にもう並んでいることかと思います。

カバーはこちら!

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あらすじはこんな感じです。

かつてロデオスターとして盛名を馳せたマイク・マイロは、落馬事故のあと雇い主のハワードから首を宣告される。
一方で彼から、メキシコで母親と住む息子のラファエルを米テキサスに住む自分のもとに送り届けることができれば、5万ドルを支払うという仕事の依頼を受ける。メキシコに向かったマイクは、路上で闘鶏に生きる少年ラファエルを遂に見出すが......。

熾烈な逃避行と、道中の交流を通じて再生してゆくふたりの姿を描き出す、C・イーストウッド監督&主演映画の原作本、遂に本邦初訳!


出だしを見てもらってもわかるとおり、本作にはいろいろと映画版『クライ・マッチョ』とは異なる部分があります。
たとえば、主人公の年齢。
なんと、原作のマイクは38歳なのです。

たしかに、70年代で38歳はそれなりにいい齢だし、ましてロデオやスポーツをやる人間からすると、大ベテランといっていい齢です。
でも、御年91歳になるクリント・イーストウッドが御自ら主演を買って出るってのは、たぶん今は天国にいる著者も、さすがに想定外だったことでしょう(笑)。

映画版は映画版で、「クリント・イーストウッドを愉しむ」作品として、実に味のある作品に仕上がっています。でも手前みそながら、この原作小説のほうも、本当に素晴らしいんですよ。
たぶん、読み始める前に予想されるより、ずっと「ぐっとくる」小説だと思います。

すでに読んでくださった北上次郎さんが、翻訳ミステリー大賞シンジケートの『書評七福神の十二月度ベスト』で、(少し早いですがw)さっそくご紹介くださっています。(こちら
ありがとうございます!!

曰く、
「(前略)映画化のおかげで、1975年の原作が翻訳された波乱万丈のロードノベルだ。
 ふーんと思って読み始めたら、なかなか面白い。
 こういう小品が世界にはまだまだたくさんあることを教えてくれる一冊です。」
とのこと。

そう言っていただけると、担当としても本当にうれしいです。

冒頭、佳境で登場するアクションシーンがそのまま掲載されています。
そこから、そのシーンに至るまでの過程が順を追って語られるわけですが、まずは驚かされるのが、上のあらすじにも書いてあるメインイベント、「少年ラフォ」と出逢うまでが、異様に長い!(笑)

映画では、始まってしばらくしたら、もうマイクはメキシコにいますが、原作ではそこまでに、なんと100ページ以上かかるのです。
じゃあ、何をやってるかというと、マイクの不幸な結末に終わった結婚と、喪った子どもの話がじっくり描き込まれるんですね。で、なぜ敗残のロデオスターであるマイクが、この理不尽で危険な任務に身を投じることにしたかが、筆を費やして描かれる。

原作では、この前提があって、初めて少年ラフォとの出逢いと交流が描かれるわけです。

結果として、原作は映画版と比べて、かなりテイストはシビアだし、アクションも暴力的だし、少年も映画版ほどには素直な性格ではありません。

でも、これはこれで、本当に胸を打つ、本格的な「南部小説」「ロデオ小説」なんですね。

映画を観る前に読むもよし。
映画を観てから読むもよし。

本作を読むことで、クリント・イーストウッドが「自分がこの作品に出るために、どう原作を改変したか」という、大変面白い分析も可能になります(冒頭からラストまで、実に考え抜かれた改変ぶりなんですよ)。

読んだら、観よう!
観たら、読もう!
というわけで、
ぜひ、映画と合わせて、皆さんも原作の魅力に触れていただけると幸いです!

ー ー ー ー

弊社としても、今回の映画化がなければ出すこともなかったし、検討の俎上にすらのぼらなかった作品ではあります。でも、こうやって出してみると、本当にうちから出せて良かった。そう素直に思います。

南部小説の衣鉢を継ぐ、巨匠スティーヴン・ハンターの作品を出している扶桑社。
かつてビリヤードの世界を描いた小説『ハスラー』と、ポーカーの世界を描いた小説『シンシナティ・キッズ』を出していた扶桑社。
直近でチャールズ・ウィルフォードの「闘鶏小説」、『コックファイター』を世に問うてみせた扶桑社。

で、『クライ・マッチョ』ですよ!
この、南部男によるバリバリのロデオ小説を今更、復刻出版するとしたら、やっぱりうちしかないでしょう!?
だろ? なあ、マッチョ?(注:本作に登場する裏主人公であるニワトリの名前)

ちなみに、編集者のなかでは『コックファイター』『クライ・マッチョ』『ナイトメア・アリー 悪夢小路』は、「扶桑社『ニワトリ』三部作」と位置付けられております(笑)。
今あげたようなノワールやギャンブル小説が好きな人にも、100%楽しんでいただける小説だと思います。皆様、ぜひご一読ください! (編集Y)












2022年1月15日 15:43 | | コメント(0)

またまた更新がたいへん遅れて申し訳ありません。
巨匠ケン・フォレットが久々にものした現代もののポリティカル・スリラー『ネヴァー』(上・中・下 戸田裕之・訳)、もう手に取っていただけましたでしょうか?
発売月としての初速はとても順調で、ほんとうにうれしく思っております。

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 あらすじはこんな感じです。
3巻分として書いたものをまとめたので、ちょっと長いですが(笑)。

中央アフリカに位置するチャド共和国。
タマラはその首都ンジャメナに駐在するCⅠA工作員だ。
彼女はテロリストの隠れ家とドラッグの密輸ルートを潜入捜査中の同僚アブドゥルの後方支援を担当している。アブドゥルが砂漠に隠された敵宿営地の発見に成功、急襲作戦の勝利に沸き立ったのもつかの間、タマラは国境にかかる橋で起きた小規模な武力衝突に巻き込まれる。
だがそれは、チャド・スーダンの背後にいるアメリカ・中国をも巻き込み世界を揺るがすことになる争いの端緒に過ぎなかった・・・。
アメリカ合衆国大統領ポーリーン・グリーンは相次ぐ事態の対応に苦慮していた。アフリカのチャドとスーダン両国間で発生した報復の連鎖は、やがて抜き差しならない大惨事を引き起こし、被害に遭った中国による報復行為まで呼び込んでしまう。どこで矛を収めるか、これ以上の紛争状態に発展することを避けるため、米中間でぎりぎりの交渉が行なわれているさなか、今度は中国国家安全部対外情報局長チャン・カイのもとに驚くべき情報が舞い込む。北朝鮮でクーデターが進行中だというのだ・・・!
対立の度を次第に深めてゆく米中二大国。極東で勃発した恐るべき事態によって、両国のお互いに対する疑心暗鬼はますます増幅され、誰もが望んでいない最悪の結末へと世界は雪崩を打って進んでゆく。決して引き起こしてはならない最終戦争を回避するため、ポーリーン・グリーン大統領、チャン・カイら両国首脳は日夜、必死の外交交渉を水面下で繰り広げるのだが・・・。

本来、今年弊社では、同じ著者の、『大聖堂』につづくキングズブリッジ・シリーズの最新作『The Evening and the Morning』(『大聖堂』の前日譚に当たる)を秋ごろにお届けすべく、準備を進めておりました。
ところが、春ごろに権利元から連絡がはいり、コロナ禍のさなか、ケン・フォレットが一気呵成にひとつの物語を書き上げたとのこと。著者は「11月の世界同時発売を切望している」と言います。
著者たっての希望ときましたか・・・。
そりゃ、こうなったら、乗るしかない。
さっそく翻訳者の戸田さんにご連絡とご相談を差し上げ、途中まで進めてもらっていたキングズブリッジ新作の作業を、こちらの本のほうに切り換えていただき、神速のスピードで11月末搬入(12月初書店売り)に間に合わせていただきました。この膨大なボリュームの内容を、あの驚くべき短期間で、しかもほぼ完ぺきな翻訳として仕上げていただけたことに関しましては、ほんとうにいくら感謝してもしたりません。
この場を借りて、戸田さんには改めて御礼を申し上げたいと思います。

今回、なぜケン・フォレットはコロナ禍のさなか、あえて執筆中の歴史小説の作業を「中断」してまで、本書を書かねばならなかったのか。
なぜ、彼は「世界同時発売」にこだわったのか。
彼がわれわれに問わねばならなかった「今」「ここ」とは、なんなのか。

それは、読んでいただいた方なら、すぐにわかっていただけると思います。
一言でいえば、本書は「世界滅亡のカウントダウンをめぐるシミュレーション小説」なのです。
著者は、本書の冒頭に置かれたまえがきで、以下のように述べています。

『巨人たちの落日』を執筆するための調査をしていたとき、第一次世界大戦が一人欲していない戦だったことに気がついた。ヨーロッパのどちらの側の指導者も、その戦争を起こす意図を持っていなかった。しかし、皇帝と首相が下した判断――論理的で節度あるものだった――の一つ一つが、世界が知っているなかで最も悲惨な戦争へと、徐々にわれわれを近づけていったのである。私はそれがまったく悲劇的な偶発事故だったと信じるに至った。
そして、考えた――同じことが再現される恐れはないだろうか、と。

そう、本書は、あの20世紀初頭に起きた悪夢が「今」繰り返されるとしたら、どのように始まりうるのかという問いに、仮想小説という形で迫った一書なのです。

どこからほころびは始まるのか。
どの国がそこに絡んでくるのか。

本書に登場する政治家は、みな優秀なエリートばかりです。急進派と穏健派の対立はあっても、彼らは皆、最悪の事態を回避すべく、必死で打開策を模索します。
でも、事態は刻一刻と悪化の一途をたどっていく。
この悪循環に歯止めをかけるのは、いったい誰なのか。
いや、そもそも悪循環を生じている根本的な原因とは、いったいなんなのか。

圧倒的な筆力と描写力で、リアリティとイマジネーションを紡いで編み上げられた、渾身のポリティカル・スリラー。本書は、会議室や執務室における政治家たちのつばぜり合いとともに、最前線で命をはるエージェントの闘いぶりや、彼らの日常生活のようすをも活写することで、抜群のリーダビリティを提供してくれます。
かわぐちかいじや『シン・ゴジラ』でも体験したのと同等の、とびきりのスリルと知的興奮をお約束します。
まあ、下巻における日本国の扱いに苦笑してしまう読者も出てきそうですが・・・・・・それくらいの危機的な状況に、日本もまた直面していると考える必要があるのでしょう。

ケン・フォレットの危機意識は切実です。
だからこそ、彼は今、この小説を書いて、われわれにまっすぐ問いかけている。
ほんとうに、このままでいいのか、と。

ぜひ読者の皆さんも、フォレットの懸念と祈りを本書を通じて共有し、受け止めていただけたら担当編集としてもうれしく思います。

なお、延期する形になった『The Evening and the Morning』は、現在のところ、2022年秋ごろを予定して仕切り直しております。戸田さん曰く、現時点でのフォレットの最高傑作なのではないかとのこと。そちらもぜひご期待ください!(編集Y)









2021年12月25日 16:07 | | コメント(0)

今月の新刊はもう手に取っていただけたでしょうか。
クライブ・カッスラー&ロビン・バーセルによる、『ヴァンダル王国の神託を解き明かせ!』。ファーゴ夫妻ものの第11弾となります。

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あらすじはこんな感じです。

ファーゴ夫妻は、財政的に支援しているチュニジアの遺跡発掘計画の会計処理に不正の気配を嗅ぎ取る。
夫妻はアフリカに飛んで、発掘の責任者でレミの大学時代の親友レネイ博士に直接会って帳簿を精査しようとするが、再会の喜びもつかの間レネイは足場の崩落事故で怪我を負う。
一方、夫妻がナイジェリアの自然公園内に建設中の女子学校で、開校準備のための輸送物資が何
者かに強奪される事件が発生。夫妻自らが新たな物資を運ぶ役を買って出たものの、トラックを狙う怪しい影が迫ってくる。
攻防のなかで、ファーゴ夫妻は街のギャングに使われていたナイジェリア人の少女ナーシャを救い出し、絆を深めていく。さらには、女子学校を占拠して身代金を得ようと画策する武装集団との壮絶な死闘が二人を待ち受ける。
やがてチュニジアに戻った二人は、すべての謎が現地で発掘が進められているヴァンダル王国の遺跡とつながっていることに気づく。古代より巫女に継承されてきた「神託」の真の意味とは? 
アフリカの地を舞台に巨匠が贈る冒険活劇の決定版!

カッスラー最晩年の時期の共作ということもあってか、今回はロビン・バーセルの関心や興味の強く打ち出された一作になっているというのが、編集を担当しての率直な感想です。
ロビン・バーセルは、気づいていない方もいらっしゃるかもしれませんが、女流作家さんです。
単独では、FBI捜査官ものの国際スリラーと、サンフランシスコの女性刑事を主人公にした警察ものの2シリーズを執筆しています。
今作では、悪党とのガンファイトや、女子生徒たちを連れての逃避行など、レミが身体を張って戦うシーンが明らかに増えていて、「強い女性」としてのレミ・ファーゴ像がはっきりと打ち出されています。
さらにもうひとりの主人公ともいうべき、ナイジェリア人少女ナーシャの存在と、彼女の八面六臂の大活躍ぶりからも、ロビン・バーセルなりの新機軸が感じられます。
ファーゴ夫妻の慈善活動家としての側面の強調、現代の奴隷として搾取される少年少女の悲劇を描く視点など、社会派的なメッセージ性が高まっているのも、本作の特徴といえるでしょう。

総じて、子供たちの生き生きとした描写は今までのカッスラーにない感じで、とても新鮮な魅力があります。それでいて従来のファーゴ夫妻ものの「お宝さがし」×「Vs悪の組織」の醍醐味も喪われていません。
日本人には若干縁遠いアフリカ中部の大自然や街のようすがクローズアップされているのも、楽しみのひとつです。ぜひご堪能いただければ幸いです。

なお、次回のカッスラーは来年1月刊行予定の『The Devil's Sea』となります。ひさびさのダーク・ピットもの。こちらもお楽しみに!(編集Y)





2021年11月 5日 15:47 | | コメント(0)

今月のもう一作は、ラーシュ・ケプレル『ウサギ狩り人』(上・下)
ヨーナ・リンナ・シリーズの第6弾で、弊社では『砂男』(上・下)、『つけ狙う者』(上・下)に続く紹介作品となります。

ウサギ狩り人ブログ.jpg

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あらすじはこんな感じです。

ストックホルムの高級住宅街。売春婦の目の前で客が撃ち殺された。
公安警察警部サーガが緊急出動するが、犯人はシリアのテロ集団と関わりのある男の名前を口にして、現場を立ち去ったあとだった。
唯一の目撃者を尋問すると、犯人の頬には長い髪の束のようなものが垂れ、被害者に童謡をきかせ、ゆっくりと時間をかけて止めを刺したという。
4年の刑で服役中の元国家警察警部ヨーナの元に、意外な人物が訪れる。
ヨーナは国を揺るがす凶悪犯を追跡するために、復帰する。
犯人の奇妙な行動から、犯人が十人の殺害を計画していると見破ったヨーナは、サーガとともに連続殺人犯の動機に迫る。
浮かび上がってきた被害者の共通点を見つけたヨーナは、30年前に起こった、陰惨な事件の真実を探るが――。
巧みな伏線とスピード感、ダイナミックな展開と精緻なディテールの融合からなる、シリーズ最高傑作!

編集担当は前作、前々作に引き続き上司のYなのですが、今回は趣向を変えて、搬入初日に一気読みしたという販売担当Mくんに、作品の魅力をガツッと紹介してもらおうと思います。
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私はラーシュ・ケプレルを(勝手に)「北欧のジェフリー・ディーヴァー」と呼んでいます。息をつかせぬサスペンス、巧妙に仕組まれたミスリード、落とすべきところにきちんと落とす伏線回収。こうした点が、前々作『砂男』、前作『つけ狙う者』にみられるケプレル作品の魅力ではないでしょうか。
もちろん、それは今作『ウサギ狩り人』にも健在。私はこの作品を見本段階、すなわち書店店頭に並ぶよりも一週間ほどまえの段階で手にしたのですが、会社の机で読みはじめると途端にその世界に引き込まれ、まさに「巻を措く能わず」、そのまま一両日中には読み終えてしまったほど、勢いがありました。『砂男』で出会ったシリーズですが、今作がいちばん好きな作品かもしれません。

そもそも『ウサギ狩り人』は、前作『つけ狙う者』から地続きではじまります。『つけ狙う者』は、ヨーナは有罪判決を受け刑事としての地位を追われ、収監されてしまうという衝撃のラストでした(私は判決が読みあげられるときにヨーナの仲間たちが起立するシーンが大好きです)。
今作では、そんなヨーナがいかにして捜査の第一線に戻るのか、というのが序盤の読みどころのひとつとなっています。前作をお読みになったかたは気になっていたのではないでしょうか。刑務所でたくましく生き抜くあいだに捨てたはずの「刑事」「警察官」としての本性が、捜査に協力することでだんだんと頭をもたげてくる......そのあたりのヨーナの心理描写もお楽しみください。
また今回、国家警察のヨーナだけでなく、公安警察のサーガ・バウエルにもスポットライトがあたっていることも大きな特徴で、魅力あるキャラクターへの掘りさげがまた一段階進んだ印象があるといえます。ヨーナとサーガの共同捜査は、ふたりが別々に行動し、同時進行のかたちをとっています。当然、片方がわかっていることがもう片方にはまだ伝わっていない、といったこともでてくるわけで、そこもまたサスペンスの一要素となっています。

さて、今回の敵は、プロの殺しの技術を持ち、ときに拳銃、ときに刃物で、はたまた狙撃で連続殺人をくりひろげる謎の殺人鬼・ラビットハンター。頭には切り落としたウサギの耳を垂らし、殺す相手には童謡を聴かせ、動けないようにしたあとはゆっくり時間をかけてトドメを刺すという、なんとも猟奇的な殺人者です。動機はなにか? 正体は? 
そうしたものがわかるのは、ケプレルのこれまでの作品からすると比較的早いような印象もありますが、今作はそこからが真骨頂。読者はラビットハンターの動機がわかった状態で、その企みの推移と、それを知らぬヨーナやサーガの捜査あるいは関係者の動きを俯瞰することになります。そこからは一気呵成、怒涛の展開。さまざまな要素が終着点へと収斂していきます。このたたみ方、ページターナーぶりこそが、ラーシュ・ケプレル"らしさ"といえるのかもしれません。
また、ラビットハンターがかなり戦闘能力に長けた人物ということもあり、常々語られていたヨーナの身体能力を活かしたアクションシーンも極めて読ませる描写がつづきます。たとえば終盤、ついに対峙したヨーナと殺人犯がおたがいを見極めていくというシーンがあります。指導教官の教えを回想しながら、ヨーナがひとつひとつ相手の動きを読んでいく、その静かな緊張感ただよう、気合いのはいった描写はひとつの読みどころです。

というわけで、サスペンス、アクション、ミステリー三方良しの『ウサギ狩り人』そして<刑事ヨーナ・リンナ>シリーズは、扶桑社海外文庫販売担当としていまもっともオススメしたい作品群です。絶対に損はさせません。ぜひお近くの書店さんでお買い求めのうえ、お楽しみいただければと思います。
ラーシュ・ケプレルは、スウェーデンはストックホルム在住の夫婦作家。<刑事ヨーナ・リンナ>シリーズは本国で現在8作目まで刊行されており、次作第7弾の邦訳も刊行すべく準備しております。私は企画書を読んだとき、「ついに!」と嬉しくなるような展開が示されておりました。乞うご期待! 私も早く読みたい!(販売担当M)





2021年10月20日 08:57 | | コメント(0)

今月の2冊目は、フランスの新鋭女流作家アメリー・アントワーヌ『ずっとあなたを見ている』
日本初紹介の作家さんです。もとは自費出版で出したものが、フランスの大手出版社の目にとまり、商業出版物として米・仏で25万部のヒットにつながったとのこと。
評判を呼ぶのも納得の、いかにも「フランス」らしい味わいの逸品でございます。

ずっとあなたを小.png

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あらすじはこんな感じです。

銀行員のガブリエルは、最愛の妻クロエとともにパリからサン・マロに移り住み、幸せな結婚生活を送っていた。

だが彼の人生はクロエが水泳中に事故死したことで一変する。

悲嘆のなか失意の日々を送るガブリエル。

そんな彼の前にある日、報道カメラマンを目指す若いエマが現れる。

死んだ妻とは対照的な魅力をもつ彼女に、ガブリエルは徐々に惹かれていくが......。

男女が織りなす心の綾を丹念に描きだしながら、巧緻な構成と意想外の展開で読者を翻弄するフレンチ・ミステリーの傑作ここに登場。


まあ、なんていっていいのか、本作はとある「趣向」の凝らされた小説なので、これ以上はなんとも申し上げられないといいますか(笑)。
ぜひ、まずは予備知識なしで手に取っていただけると幸いです。

ジャンル・ロマンスのようなタイトルと装丁だと思われるかもしれませんが、白背で出しておりますとおり、あくまでミステリー/サスペンスのジャンルに属する物語ですので、くれぐれもお間違えなきよう(間違えて買ってしまう行為自体はもちろん、止めませんw)。
ただし、ロマンスが好きで、かつミステリーも好きな方なら、それこそドンピシャで愉しんでいただける作品ではないかと思います。日本のミステリー作家でいえば、連城三紀彦とか泡坂妻夫のような。

一人の男と、二人の女。
それぞれの愛の形。
不思議な視線の交錯。
読んでいくなかで、そっと胸に差す違和感。
その違和感はやがて芽を吹き、きちんと「ミステリー」として昇華します。

複数視点の行き来する章構成、現在形でつづられる洒落た文体など、いかにもフランス産の香りのする凝った作品です。
現代的なテイストでありながらも、カトリーヌ・アルレーやボアロー&ナルスジャック、あるいはフレッド・カサック『殺人交叉点』、ミッシェル・ルブラン『殺人四重奏』あたりの、古き良きフレンチ・ミステリーの香りをうまく引き継いでいると思うのは編集者だけでしょうか。

多少力業のところもありますが、そこを言われてしまうのは作者も想定済みなのではないかと。
むしろ、211ページで転調を迎えてから、その「あと」を100ページ以上にわたってじっくり描いているのが、本作ならではの価値なのだろうとも思います。

秋の夜長に、ベッドの友として楽しんでいただけると幸いです。(編集Y)




2021年10月 4日 17:35 | | コメント(0)

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