業界ニュースアーカイブ

先日ついに発売されました、『このミステリーがすごい!2019年版』

皆様、もうご覧になられたでしょうか?

 

そうです、なんと、うちの『インターンズ・ハンドブック』海外編9位に入ったんです!

嬉しい!! やりましたーっ!!!

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今年もベスト10に扶桑社ミステリーが名を連ねることができましたのは、ひとえにご投票いただいた皆様と、その背後にたくさんいらっしゃる、本作を面白いと思って応援してくださった読者の皆様のおかげでございます。本当にありがとうございました。

とくに、福井健太さんにおかれましては、古山さんに続き、今年の海外編ベスト1に推していただき、感謝の思いでいっぱいです。「軽妙なテンポと語り口がすばらしい」との寸評をいただきました!

 

せっかくなので、もう一度、あらすじと、作中作の序文をアップしておきます。

 

おれはジョン・ラーゴ。もちろん本名ではない。
ヒューマン・リソース社のエース工作員だ。
うちは表向き人材派遣の会社だが、裏では
派遣インターンによる要人の暗殺を請け負っている。
おれは子供のころから暗殺者として鍛えられ、
ずっとここで働いてきた。だがもうすぐ25歳で引退だ。
だからおれは新入り諸君のために、最後の任務を詳述して
暗殺の心得を伝授したいと思う...。
教則本の体裁で描かれる、血と硝煙と裏切りに彩られた
キッチュでオフビートなアサシン・スリラー。
鬼才衝撃のデビュー作!

 

「インターンは透明人間だ。たとえ百回名乗ったとしても、重役たちがその名前を憶えてくれるなんてことはぜったいにない。なぜなら彼らは、組織の最底辺でただ働きしているような人間のことなど、屁とも思っていないからだ。そのくせ重要な仕事を次から次にふってくる。つまりこちらがよろこんで引きうければ引きうけるほど、仕事は――おまけに信用とアクセスも――向こうからやってくる。最終的には、命まで預けてくるようになる。そのときこそ、ターゲットの命をもらうチャンスだ。」
――『インターンズ・ハンドブック』より

 

ふだんミステリーを読まれる方のみならず、気の利いた犯罪映画や、オフビートなクライム・ドラマのファン、それから、殺し屋&悪党たちが大活躍するようなコミックのお好きな方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

あと、必殺ファンの皆様も、ぜひぜひ!

 

こういう年間賞は、順位そのものよりも、今年出版された作品のなかで、見逃していた作品、ふだんはチェックしていない版元の作品、誰かが猛烈に推している作品を改めて確認するうえで、とても重要な機会だと考えております。(編集者自身も、ランキング本が出始めて、初めて買う本がたくさんあります。)

 

ぜひ、この機会に、騙されたと思って、『インターンズ・ハンドブック』を手にとっていただければ、これほど嬉しいことはございません。そして、面白ければ、「面白かった」という声を、口コミで広げていっていただけるとありがたいです!(編集Y)

 

 

 

2018年12月12日 15:44 | | コメント(0)

シェイン・クーン。

皆様、この名前を覚えておられますでしょうか?

そう、今年5月に弊社から出しました『インターンズ・ハンドブック』(高里ひろ訳)の著者さん。

 

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もともとの紹介記事は、こちら

 

実は、シェイン・クーンの新作『謀略空港』(原題 The Asset、見次 郁子訳)が、この11月30日に創元推理文庫から発売されます!

なのでまあ、それに便乗いたしまして(笑)、うちの可愛い『インターンズ・ハンドブック』にも、もう一度光を! ということで、評論家の皆さまからいただいたお褒めのお言葉などを、いろいろと並べてみようかな、と。

 

まず、今月すでに発売になりました『ハヤカワ・ミステリマガジン』2019年1月号「ミステリが読みたい!」。ランキングにこそ入りませんでしたが、そこで、書評家の古山裕樹さんが、

 

「軽妙にしてひねくれた語り口の『インターンズ・ハンドブック』が最も心に残った一年だった。狂った設定の犯罪小説としても十分読ませる。かっこよさといかがわしさにあふれる作品だ。」

 

として、なんとベスト1に推してくださいました!

 

嬉しい!! ありがとうございます!!

(そういや、何年か前に小財満さんが『このミス』で『ジグソーマン』を一位に推してくださったのを思い出すなあ。こういう、誰か一人でも、一位に推してくださるくらい偏愛していただける本を、一年に一作でもいいので出していければなと思う、今日このごろです!)

 

その他、翻訳者の上條ひろみさんや三角和代さん、書評家の若林踏さんも年間ベスト10にあげてくださっていて、本当に、ありがたいかぎりでございます。

 

若林さんは、『週刊新潮』2018年6月7日号こちら)で、

 

「設定といい構成といい、どこを取っても奇妙で愉快な殺し屋小説である。ラーゴのペーソスと映画愛(やたらと映画の場面に例える癖がある)溢れる語りに乗せて描かれるのは、テンポの良いアクション、容赦のないバイオレンス、常に斜め上を行く展開の連続だ。」

 

と、本書を取り上げてくださってもいます。まさに、おっしゃるとおり! 『インターンズ・ハンドブック』は、とにかく、「奇妙で愉快」なんですよ。

 

発刊当時は、他にもいろいろな書評家の方が、本書をご紹介くださいました。

『WEB 本の雑誌』【今週はこれを読め! ミステリー編】の2018年5月の回(こちらでは、杉江松恋さんが本書を取り上げ、「奇抜な設定」の妙と、「構成」の仕掛けの巧みさ、「序盤の展開」の面白さなどに触れたあとで、

 

「冒頭でラーゴは、自分が『インターンズ・ハンドブック』を書き上げた理由をこう説明する。「おれ」ラーゴと「きみたち」見習い殺し屋は「おれたち」なのだと。

 この世に産み落とされてしまった「おれたち」。
 自分自身を社会から疎外しようとも、こう生きるしかない「おれたち」。

 そこには〈安物雑貨店のドストエフスキー〉と称された犯罪小説作家、ジム・トンプスン作品にも通じるものがある。「きみたち」に語りかけつつラーゴはずっと「おれ」の内奥を見ようとし続けている。そこに見えるものは光と闇のいずれか。あるいは光に瞳を灼かれるか、闇の中に心地よい居場所を見出すか。轟音と共に物語は結末へと向けて落ちていく。」

 

と締めくくっておられます。

 

霜月蒼さんも、『翻訳ミステリー・シンジケート』「書評七福神の五月度ベスト!」こちら)で、

 

「殺し屋の小説が好きなひとなら問答無用のマスト。プロの犯罪者の小説のファンも、皮肉なユーモアの愛好者も必読であるし、アクション小説好きは無論、青春小説の醍醐味まであるよ!という快作。」

 

と絶賛してくださいました!

 

さらには、酒井貞道さんも、『ミステリーズ!』2018年8月号こちら)で、

 

「語り口が飄々(ひょうひょう)としていて可笑(おか)しい。独白の活きがいい殺し屋が好きな人なら、まず間違いなく楽しめよう。」

 

と紹介してくださっております。

 

とまあ、こんな感じで、名だたる読み巧者のみなさんが、『インターンズ・ハンドブック』の面白さにお墨付きをくださっております。ね、皆さんも読みたくなってきたでしょう?

ぜひ年の瀬、賞レースで一年を振り返ることの多いこの時期に、改めてこのぶっとんだ異色作を思い出し、ぜひ手にとって読んでみてほしい、

そんな願いをこめて、この記事をアップいたします。

 

合わせて皆さん、東京創元社さんの新刊『謀略空港』のほうも、ぜひ読んでみてくださいね!

編集者もなるべく早く読みたいです!   

もちろん、店頭で買わせていただきますよ! (ちらっ)

読んだら、必ず感想をブログでアップしてちゃんと宣伝しますからねっ!(ちらっ)

 

とおねだりも終わったところで

その他の年末ベストなどでも、意外な好位置に食い込んでるなどという情報もあったり、なかったり。

また、なにか新たな情報などありましたら、逐一ブログでご紹介してまいります。

それから、弊社からも12/2日にクライブ・カッスラーの新刊『英国王の暗号円盤を解読せよ!』(上・下)が発売となります。こちらは、ファーゴ夫妻ものの最新刊!

ぜひお楽しみに!(別途、記事はエントリーいたします)(編集Y)

 

 

 

2018年11月29日 22:42 | | コメント(0)

先日、逝去したジャック・ケッチャムさんを偲んで、ただいま、紀伊國屋書店新宿本店さんにて、ケッチャム追悼企画を大々的に展開してくださっております。
 
以下、ケッチャム愛なら誰にも負けない、弊社販売部Mによるご紹介です!
 
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ケッチャム死去のニュースを聞いて、誰よりも早く扶桑社に電話をかけてきて、「『隣の家の少女』を100冊ください!あと、残っている他の作品をあるだけください!」と言ってきた人物がいました。
その男性は日本一、いやおそらく世界一ケッチャムを愛する書店員で、ッチャムマニアの間ではリスペクトを込めて"ケッチャム王子"と呼ばれている森瑞人さん。
 
5年以上前から、ケッチャムの全作品が常時平積みから外されることがなく、森さん手作りの【ドキドキ☆ケッチャム占い】のパネルとともに、「紀伊國屋書店新宿本店の文庫売り場のケッチャム愛が異常」とネット上で話題になっていました。
 
 
現在、紀伊國屋書店新宿本店さんでは、ケッチャム追悼のすさまじい大展示を実施しています。
 
アメリカ横断ウルトラ双六アップ小.jpg 
★(一部)ネタバレ上等!ケッチャムと行くアメリカ横断ウルトラ双六
→森さんの手作り!作品ごとの犠牲者の人数まで記してある親切なガイド。ちゃんとサイコロも置いてあります。
 
ケッチャムコーナー全体小.jpg
 
 

隣の家の少女ワゴン全体小.jpg

隣の家の少女パネルアップ小.jpg

★森さんによる追悼文巨大パネル
レジ前の、行列に並ぶ人が必ず立ち止まる、売り場の一等地に設置(撮影時。現在はケッチャム双六の横に掲示してあります)。
小さい字でめちゃめちゃびっしりと、面白おかしく書かれたケッチャムへの愛。
そして最後に書かれたこの一文に、同じ思いを持つ私は思わず涙をこぼしてしまいました。
「この作品(隣の家の少女)には何者も真似出来ない凄さ、切なさ、青春の輝きが詰まってます。最高だという人も最低だという人もいます。どっちかしかないって、本当にすごい事だなって。もちろん僕にとってはケッチャム作品の全てが最高ですが。ケッチャム、好きですから。」
 
 
coverサイン本小.jpg
 ★『Cover』(邦題『森の惨劇』)ケッチャム直筆サイン本(森さん私物)展示
 
二代目缶バッジ.jpg
★ただいま紀伊國屋書店新宿本店でケッチャム作品をお買い上げの方に
もれなく特製ケッチャム缶バッジ(二代目)をプレゼントしています。
 
 
「万人に好かれる作品は良い。
でもそうじゃない作品の方が、
心に残る事もある。 それがケッチャム。」です。 (販売M)

2018年2月19日 21:43 | | コメント(0)

弊社海外文庫の中心的作家として長く読者の皆様に愛されてきたジャック・ケッチャムさんが、2018年1月24日ご逝去されました。享年71。長いがんとの闘病の末、亡くなられたとのことです。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 

代表作としてはやはり、実際にあった少女監禁事件に題材をとった傑作『隣の家の少女』と、食人族をモチーフにして当初発禁に近い扱いを受けたデビュー作『オフシーズン』の二作を上げるべきでしょう(後者の文庫は残念ながら品切れです。電子版をどうぞ......)。
とくに『隣の家の少女』は、弊社書籍としては異例の頻度で版を重ねてきた、弊社文庫の「顔」ともいえる作品であり、現時点ですでに41刷を数えております。
くわえて編集者自身は、『老人と犬』と中編集『閉店時間』(とくにそれに収録されているウェスタン「川を渡って」)をみなさんにぜひ強力にお薦めしたいところです。(以下、敬称略)

隣りの家の少女 表紙画像ミニ.jpg

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ケッチャムは、一般にはジャンル・ホラーの作家と認識されているかもしれません。
たしかに、ケッチャムの小説は、残虐で、無慈悲で、血みどろの描写にあふれています。
しかし、ケッチャム・ファンの多くは、単なる恐怖、単なる残虐性、単なるイヤミスの枠を超えたところで、彼の露悪的ではあっても繊細な、「暴力への感受性」それ自体に惹きつけられているのではないでしょうか。少なくとも編集者はそうです。

 

ケッチャムの提示する"つくりもの"ではない「悪」の実存と、天災のごとく降りかかる理不尽な加害のリアリズム(およびその逆説としての世界の平等性)、心の痛みすら伴う体感的な恐怖は、おそらく文学史上、唯一無二のものです。

 

同時に、その裏からほとばしる、立ち向かうことへの肯定的意思、被害者も加害者も報われない神なき世界でなお生きるひとびとの矜持は、意外にもみなさんの胸を打つかもしれません。

 

そして、そんな真摯で謹直ですらある作家性......ほんとうの痛みを知る繊細でたおやかな世界認識(そうじゃないと、9.11のあと小説が書けなくなったりはしない)を、なにかとジャンル・ホラー愛好とエキセントリックな過剰性でつつまずにはいられない、この人物の「含羞」と、出自を裏切らない誠実さを、編集者はこころから愛します。

 

改めて、この不世出の作家の早すぎる死に対し、衷心よりお悔やみ申し上げるとともに、ひとりでも多くの方にケッチャムの諸作を読んでいただけることを願ってやみません。(編集Y)

 

 

付録その1
★ケッチャム中・長編リスト

急遽、今作ってみたので若干誤植とかあるかもしれませんが、お許し下さい。
(発表順、邦題のあるものはすべて扶桑社ミステリー刊)

『オフシーズン』(Off Season, 1981年)
『Hide and Seek』(1984年)
『森の惨劇』(Cover, 1987年)
『She Wakes』(1989年)
『隣の家の少女』(The Girl Next Door, 1989年)
『襲撃者の夜』(Offspring, 1991年)
『ロード・キル』(Joyride,  英Road Kill,1994年)
『オンリー・チャイルド』(Stranglehold, 英Only Child,1995年)
『老人と犬』(Red, 1995年)
『Lady's Night』(1997年)
『地下室の箱』(Right to Life, 1998年)
『黒い夏』(The Lost, 2001年)
『ザ・ウーマン』(The Woman, 2010年)(ラッキー・マッキーと共作)
『わたしはサムじゃない』(I'm Not Sam, 2012年)(ラッキー・マッキーと共作)
『The Secret Lives of Souls』(2016年)(ラッキー・マッキーと共作)
---

『The Box』(1994年,中編)
『Station Two』(2001年,中編)
『狙われた女』(Triage, 1990年)―競作集 「シープメドウ・ストーリー」(Sheep Meadow Story,中編)収録
『閉店時間』―中編集 「閉店時間」(Closing Time,2007年)「ヒッチハイク」(The Passenger,2001年)「雑草」(Weed Species,2006年)「川を渡って」(The Crossings,2003年)収録
『Old Flames』(2008年,中編)
(その他、短編多数)

 


付録その2
★翻訳者によるケッチャム入門

ずっと、弊社でケッチャム作品を翻訳してくださっている金子浩さんによるケッチャム紹介です。
下記のリンクからどうぞ。

翻訳ミステリー大賞シンジケート 初心者のためのジャック・ケッチャム

 


付録その3
★ケッチャムの選んだオールタイム・ベスト

文春さんの依頼で弊社からケッチャムさんにお願いしたら、速攻でお返事がいただけたのでした。本当に良い方だったんですよ......(泣)。ケッチャムという作家の核心を成すものが、むしろホラーではなく「ノワール」であることを明示する興味深いリストではないかと思い、再掲します。

●『長いお別れ』(レイモンド・チャンドラー)

●『羊たちの沈黙』(トマス・ハリス)

●『ゲット・ショーティ』(エルモア・レナード)

●『ミレニアム2 火と戯れる女』(スティーグ・ラーソン)

●『TALK TALK』(T.コラゲッサン・ボイル)

●『夜の終り』(ジョン・D・マクドナルド)

●『THIEVES LIKE US 』(Edward Anderson)

●『血と暴力の国』(コーマック・マッカーシー)

●『ブラック・ダリア』(ジェイムズ・エルロイ)

●『おれの中の殺し屋』(ジム・トンプスン)

 


付録その4
★ケッチャム鬼畜営業日記

おそらく日本一ケッチャムを愛する弊社営業の女性販売員による、
ケッチャム『ザ・ウーマン』販促大作戦のブラッディー・ドキュメント!

翻訳ミステリー大賞シンジケート ケッチャム鬼畜営業日記

 

文中に登場する「書店時代のエピソード」は下記の座談会でお読みいただけます。

扶桑社ミステリー&ロマンス入門ガイド 第3回

 

 

2018年1月25日 15:45 | | コメント(0)

遅まきながらあけましておめでとうございます!

本年も扶桑社ミステリーを、よろしくお願いいたします。

 

さて、新年早々嬉しいニュースが飛び込んでまいりました。

翻訳ミステリー大賞シンジケートの情報によれば、せんだい読書会さんと福島読書会さんで連動して、レオ・ブルースの二作品をとりあげていただけるとのこと!!

本当にありがとうございます!!

 

なんでも、東北読書会ツアーが組めるように、わざわざ作家を揃えられたとのこと。すごい!

 

せんだい読書会

開催日:2018年2月17日(土曜)

課題書: 『ミンコット荘に死す』(レオ・ブルース:著 小林晋:訳)

詳細・応募は こちら

ミンコット荘に死すblog.jpg

 

当ブログによる紹介文は こちら

 

★福島読書会

開催日:2018年2月18日(日曜)

課題書:『三人の名探偵のための事件』(レオ・ブルース:著 小林晋:訳)

詳細・応募は こちら

三人の名探偵のための事件がJpegブログ画像.jpg

 

当ブログの紹介文は こちら

 

レオ・ブルースは、イギリスの本格ミステリー黄金期を支えた巨匠のひとりといっていいでしょう。

 

まず、レオ・ブルースの作品には、練り上げられたトリックと、プロット全体におよぶパズラーらしい凝った趣向、そしてロジカルなフーダニットという、「王道」の本格ミステリーとしての重要な要素がすべて備わっています。

この点で、彼はクイーンやクロフツ、カー、クリスティといった大作家にも、けっして引けを取っていない、と編集者は思っています。

 

一方で、レオ・ブルースからは、そんな本格ミステリーというジャンルや登場人物のありようを、徹底的に茶化し、分析し、メタ化していくような部分も、色濃く感じ取れます。

ただそれは、本格ジャンルを否定的にとらえて批判しているわけではなく、あくまで本格を愛するがゆえに、斜に構えて面白がっているのですね。

これは、彼がミステリーライターであると同時に、イギリスにおいて伝統的なユーモア小説/諷刺小説の系譜に属してもいるからであり、その点で彼は、正しくアントニー・バークリーの作風を継承する本格ミステリー作家であるといってよいかと思います。

『三人の名探偵のための事件』解説で、真田啓介さんはレオ・ブルースを「英国余裕派」のひとりとして分類しています。真田さんが唱える「英国余裕派」とは、E・C・ベントリー、A・A・ミルン、ロナルド・ノックス、アントニー・バークリー、シリル・ヘアー、エドマンド・クリスピンといった作家に代表される「遊び心が旺盛で、ゆとりと落ち着き、現実との適度の距離といったものをその作品に感じさせる作家の一群」とのこと。それぞれの作品を読んだ方には、当然ピンとくるところがあると思います。

編集者はこの解説原稿があがってきたとき、まさにそれだよね!と思わず膝を打ちました。

 

そして、ここからは個人的な意見であり、同時に大変重要なポイントと思うのですが、英国における本格ミステリーの発展史は、「名探偵が活躍する王道のトリッキーな本格と、本格をゆとりをもって諷刺するような余裕派の本格が、同時期に創作されることで、ジャンルの両輪として高めあって」形成されてきたのです。

皆さん、なんとなく思い込んでいないでしょうか? 「先に」王道の本格があって、「後から」それをパロディ風に扱うタイプの作品が書かれだしたかのように?

実際には、ベントリーの『トレント最後の事件』は1913年、ミルンの『赤い館の秘密』は1922年の発表ですし、ノックスやバークリーの活躍期はクリスティの創作活動の最初期とかぶり、クイーンやカーの登場には若干先行すらしているわけです。

要するに、英国本格史において、本格ミステリー独特のお約束や虚構性、「名探偵」の機能といったものに自覚的に言及し、あるいは茶化し、あるいは逆手に取ってネタにするような作風は、ジャンルのごく初期から存在し、本格ミステリーという異形の文学を、常に内から「再規定」し続けてきたのでした。

加えて、それ(英国本格)に「外から」憧れ、恋焦がれて、さらなるジャンルの「純化」を図った、アメリカのスクール(ヴァン・ダイン、クイーン、カーなど)の存在(日本の新本格を見ても分かるとおり、「外」からジャンルに横恋慕した愛好者は、本国のどぶろくを蒸留酒に変えてしまうのです)。三者がお互いに刺激し合うことで、20世紀前半の本格ミステリーは急速な発展を遂げた、ということができるのではないでしょうか。

 

レオ・ブルースは、そんな「余裕派」の作風を正しく継承し、本格ミステリーという枠組みそのものを、茶目っ気たっぷりに外から「揺るがす」ことで(同時に枠組みの「中」もちゃんと設えられているからこそ、それが生きるわけですが)、新たなミステリーの沃野を切り開いていった作家でした。

ビーフ巡査部長を探偵役とする初期の作品群(長編は8作)は、とりわけ実験性に富み、型を破ろうとするチャレンジ精神が一作ごとに強くうかがわれます。その第一作、ブルースのミステリー作家としてのデビュー作が、今回福島読書会で課題となる『三人の名探偵のための事件』です。

その後、レオ・ブルースは、1955年刊行の『死の扉』(創元推理文庫)で、よりオーソドックスな「素人探偵」キャロラス・ディーンを主人公として初めて登場させ、作風にも一定の変化をみせます。以降、23作にわたってレオ・ブルースはキャロラスを探偵役とする長編を書き続けることになりますが、今回せんだい読書会で取り上げてくださる『ミンコット荘に死す』は、その第三作となります。

 

まあ、精読すると、いろいろ細かいアラにも気づいてしまうかもしれませんが(笑)・・・そんなの愛さえあればきっとへっちゃらですよね?

未読の方はこの際ぜひ、既訳作に手を伸ばしていただき、レオ・ブルースの滾る本格愛をぜひ体感していただくとともに、その小説を書くことで彼が「なにを狙っていたのか」をじっくり考えてみていただければと思います。

両日、編集者は残念ながら東京で私用があって参加できませんが、楽しい会になることを心よりお祈り申し上げます! そしてみなさま、ふるってご参加を!(編集Y)

2018年1月11日 14:18 | | コメント(1)

先週末、『このミステリーがすごい!2007年版』が発売されました。

弊社の『拾った女』(チャールズ・ウィルフォード著 浜野アキオ訳)は、

海外編で4位を獲得しました!

 

祝・各社年末ベスト企画 オールベスト5入り!!

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作品紹介は こちら !

 

今年はほんとうに良い年となりました。

あとは、ひとりでも多くの方が『拾った女』に手を伸ばしてくださることを祈るばかりです。

 

それと! ブレることなく弊社の怪作『ジグソーマン』(ゴード・ロロ著 高里ひろ訳)を年間一位に推してくださった小財満さん、本当にありがとうございました!! 

ああ同好の士よ!いくら感謝しても、したりません!! 

評論家人生を懸けて(?)ご推薦いただいた蛮勇、

もとい、その熱い想い、しかと受け取りました!

 

皆様も、『拾った女』と合わせて、ぜひこの機会に世紀の傑作『ジグソーマン』をお読みください!

 

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紹介は こちら !

 

その他、女性麻薬捜査官が麻薬組織相手に大活躍する痛快作『奪還』(M.A.ロースン著 髙山祥子訳)や、アクションの巨匠が犯罪史上最大の謎に挑んだ『わたしは切り裂きジャック』(上・下)(スティーヴン・ハンター著 公手成幸訳)なども、名前をあげてくださった方がいらっしゃいました。本当にありがたい限りでございます。

他の出版社に比べると、探しにくい店の奥にひっそりと棚があることの多い版元ではございますが、ぜひこの機会に合わせてお読みいただけると嬉しく思います。

 

来年もハンターやカッスラー、ロリンズをはじめ、面白い小説、マニアックなミステリーを積極的に発刊していきたいと考えておりますので、扶桑社ミステリーに今後とも厚いご支援を賜りますよう、心からお願い申し上げます!(編集Y)

 

 

 

 

 

2016年12月12日 18:43 | | コメント(0)

年末ベスト10企画における『拾った女』の快進撃・・・。本当にありがたいことです。

そこに、編集者にとってまた新たな嬉しいニュースが!

 

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『ハイキャッスル屋敷の死』(レオ・ブルース 小林晋/訳) が、今週発売されました『2017本格ミステリ・ベスト10』で見事4位を獲得しました!!

 

すげえ嬉しい! なんなら『拾った女』より嬉しい!!

小林先生、ちゃんとみんな褒めてくれましたよ!(泣)

 

『拾った女』の場合は、編集者も前任者も望外のご評価をいただいて感無量、といった感覚なのですが、一応のところレオ・ブルースは、創元さんで出された『死の扉』が本ミス1位、次に弊社で出した『ミンコット荘に死す』は本ミス3位と、連続ベスト3入りを果たしており、じつは正直けっこうびくびくしておりました(笑)。

と申しますのも、今回はいつにも増してなかなかに通好みの内容でして、表面上のお話を追うだけだと、陳腐な作品と受け取られかねない危惧もありまして・・・でも、なんとか4位にはいれて本当によかったです。

作品の真価について掘り下げ、すばらしい解説を書いてくださった真田啓介さんのおかげですね。この場を借りて、心から感謝申し上げます。

 

ご投票を賜りました皆さま、本当にありがとうございました!(五体投地)

 

当ブログでの作品紹介は「こちら」。

 

せっかくなので多少禁じ手かと思いつつも、近日中に「完全ネタバレ版」の作品紹介を別途アップしようかな、と思っております。

真田さんの解説を読めばもう十分といえば十分なのですが、人を変えて語ればまた、見え方も多少は違おうかと。

 

いよいよ、週末には「このミステリーがすごい!」が発売ですね。

『拾った女』は、全ベスト10制覇なるのか? 編集者が『拾った女』以上に気に入っている『ジグソーマン』の巻き返しはあるのか??(あるわけない) 

なんにせよ楽しみに待ちたいと思います。(編集Y) 

 

 

2016年12月 8日 14:45 | | コメント(0)

連日、年末のベスト10企画を賑わわせています弊社の『拾った女』(チャールズ・ウィルフォード 浜野アキオ訳)でございますが、

今度は、週刊文春の「第40回ミステリーベスト10」2016の海外部門

 

第5位 を獲得しました!   実にめでたい!

 

順位的には早川さんと似たメンツでしたが、やっぱりここは『傷だらけのカミーユ』がぐっとあがってきましたね・・・(笑)。

 

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ふだんはあまり皆様の目に触れない書店の片隅に

ひっそり置かれている日陰もののレーベルではございますが

12月8日以降、重版分もあがりますので、ぜひこの機会にご購入のほどを!

書店様におかれましては、ぜひとも平台にて他社商品とともに面陳のほどを!

 

さあ、あとは残すところ「このミステリーがすごい」ですね・・・・

果たして入賞するのでしょうか?? 期待が高まります!!(と一応いってみる)

(編集Y)

 

 

 

 

 

 

 

2016年12月 2日 06:09 | | コメント(0)

先日、『拾った女』(チャールズ・ウィルフォード 浜野アキオ訳)が、『IN☆POCKET』の2016年文庫翻訳ミステリーベスト10で総合第3位、翻訳家&評論家部門で第1位を獲得したとの情報をアップしたばかりですが、今度は

11月25日発売の『ハヤカワミステリマガジン』誌上での「ミステリが読みたい!」2017年版海外篇において、

堂々の3位入賞を果たしました!

 

実にめでたい! 本当にありがとうございます!!

 

前任者Tも編集者の前では平静を装っていますが、

きっと内心嬉しすぎてとろけてしまいそうなのではないかと。

 

皆さんもそろそろ、「そこまでみんな言うなら読んでみようかなあ」という気分になって来ましたよね?

ぜひなってほしい!・・・いや、なってください。どうかお願いいたします・・・(三跪九叩頭礼)

 

とはいえ、正直なところをいえば、ノワールという若干廃れ気味のジャンル自体が、すでに読者の皆さんから縁遠いものになってしまっている感もいなめません。

 

ノワールとはそもそも、どういうジャンルなのか。

ミステリー的な文脈のなかで、本書はどう位置づけるべきなのか。

本書のラストはどう解釈されるべきものなのか。

 

決して長い小説でもなければ、大上段に構えたお話でもありませんが、じっくり読めば読むほど、底の知れない作品だと思えてなりません。

 

一人でも多くの方に『拾った女』をお楽しみいただくためにも、編集者なりにいろいろ考えたことを、このブログで5回くらいに分けてアップしてみようかな、と思っておりますので、その際は本書を片手にじっくりお付き合いくださいませ。(編集Y)

 

 

 

 

2016年11月26日 03:14 | | コメント(0)

発刊以来、各処から絶賛の声を頂戴しておりましたチャールズ・ウィルフォード著『拾った女』(浜野アキオ訳)ですが、

 

講談社『IN☆POCKET』の2016年文庫翻訳ミステリー・ベスト10で、総合3位、

翻訳家&評論家が選んだベスト10で、なんと1位を獲得しました!

 

本当にありがとうございます!

弊社の作品が1位とか、どんな世界線でしょうか(笑)。本当に嬉しいです。

 

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ちなみに、他の上位作は上下巻の大作が多いですが、『拾った女』は335頁でさくっと読めます!

 

追って、またいろいろと情報をアップしていきたいと思っております。

一人でも多くの方にこの素晴らしいノワールが読んでいただけますように。(編集Y)

 

2016年11月20日 23:07 | | コメント(0)

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