名作紹介
2008年12月22日 |
【名作紹介】
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デヴィッドスンといえば……
扶桑社のデヴィッドスン第1弾は、『チベットの薔薇』でした。
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チベットで消息を絶った弟の行方を追って、現地におもむいた美術教師が経験する、驚異に満ちた冒険……
というと、よくある感じかもしれませんが、じつは本書の真の語り手は、出版社に勤めるライオネル・デヴィッドスンという人物。
彼が、美術教師の手記を入手し、著者を追うというプロセスが、チベットでの冒険と並行して進められていくのです。
しかも、舞台となるチベットは、1950年当時で、中国侵略を受けるまっただなか。
歴史的背景と、幻想味あふれる虚構を絶妙に組みあわせた、デヴィッドスンならではの冒険小説です。
おかげさまで、好評を得て3刷。
翻訳ミステリーが低調な昨今では、ほんとうにうれしい話です。
『大統領の遺産』ではじめてデヴィッドスンを知ったかたは、こちらもぜひどうぞ。(編集部・T)
2007年12月20日 |
【名作紹介】
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『切り裂かれたミンクコート事件』その2
『切り裂かれたミンクコート事件』にまつわる小噺をひとつ。
本書の413ページに、伯爵邸の図書館内にある蔵書の描写があります。
そこに置かれているのは、アリアドネ・オリヴァーの『デビューした女性の死』、アネット・ド・ラ・トゥールの『叫ぶ骨』、リチャード・エリオット『クモに噛まれて』……。
ゲラを読んでいて、おやっと思いました。アリアドネ・オリヴァーという名前に微妙に聞き覚えがあったからです。調べてみたらすぐにクリスティの小説に出てくる推理作家の名前だということに気づきました。
本格ミステリマニアのジェームズ・アンダースンは、こんな稚気あふれるお遊びを仕掛けてきていたのです。
どうやら他の作品も同じ趣向ではないだろうか。リチャード・エリオットのほうはすぐ気づきました。マイクル・イネスの『ストップ・プレス』です。
ところが、いくら考えてもアネットなんたらの正体がわかりません。間違いなく、ミステリに登場する架空の推理作家であることは確か。でも、マニアに程遠いわたしには見当もつかず……。
というわけで、本国のアンダースンにメールで問い合わせてみました。で、返ってきたのが「エドマンド・クリスピンの『お楽しみの埋葬』に出てくる、女性の変名でミステリを書いているJuddという男性」との返答。……ううう、気づきませんでした(というか、読んでなかった)。
メールにはこんなことも書いてありました。
「このアイディアの理由は単純に、私の手になる架空の登場人物たちが、別の実在する推理作家の創造した推理作家の書いた小説を読んでいるとおもしろかろうと考えたからです。この試みは、おそらく未だかつて、誰もやってみたことがないものと自負しております。ただ、哀しいことに、これまで評論家も読者も誰ひとりとして気づいてくれた人がいなかったのです……あなたから連絡があって本当にうれしかった」
―――いや、こちらも気づけて光栄でございました(笑)。
てなわけで、アメリカに置いておくのが惜しいほどの本格オタク、ジェームズ・アンダースン! ぜひ、みんなで読もう!
きわめて細々と続けております扶桑社海外文庫「本格」シリーズ、今後ともよろしくお願いいたします。
祝!『切り裂かれたミンクコート事件』本ミスベスト4!
弊社2006年11月末刊行の、ジェームズ・アンダースン『切り裂かれたミンクコート事件』が、『2008本格ミステリ・ベスト10』(原書房刊)の海外部門で4位に入賞しました! パチパチパチ! アンケートを見ていると、本年度のベスト1に上げてくださっている方もたくさんいらっしゃって、本当に嬉しく思います。皆様、心より御礼を申し上げます。
本書は、かつて文春文庫から出ていたものを弊社から出なおした『血染めのエッグ・コージイ事件』の続編にあたります。
前作と同じお屋敷、同じ主要キャラで、またしても殺人事件が起きるという趣向なので、『エッグ・コージイ』から読んでいただくにしくはないのですが、お話自体は独立した作品なので、単品で読んでいただいても問題ございません。
担当編集がこんなことを言うと問題かもしれませんが、個人的には、本作のほうが前作より本格ミステリとして数段パワーアップしているのでは、と思っております。30年代的というよりは、40年代的な本格の復古を目指していると体感的には思ったりもするんですが、何を言ってるのかわかりませんね、ごめんなさい。
ロジックの美しさ、ギャグの切れ、名探偵の競演と、申し分ない出来の年間ベストにふさわしい佳品でございます。この機会にぜひ書店でご購入いただき、ご一読のほどを!(編集Y)
(売れれば売れるほど、第三作の『39個のカフスボタン事件』が出しやすくなるのです!)
2007年11月27日 |
【名作紹介】
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ロビン・マッキンリイと言えば……
ピーター・ディキンスンですね。
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SF/ミステリー・ファンのみなさまなら、この『キングとジョーカー』はよく。ご存じでしょう
かつてのサンリオSF文庫のなかでも、屈指の名作と謳われていた作品です。
現実とは異なる歴史をたどった英国王室。
王宮内で起こる、突拍子もないいたずらの数々は、やがて予想外の殺人事件を生みます。
いったい、このいたずらの仕掛け人=ジョーカーは誰か?
そんな魅力的なミステリーを、勝気な王女の目をとおして描いた作品。
山口雅也氏の解説を付し、復刊しました。
(編集部・T)
2007年10月30日 |
【名作紹介】
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究極のライフル―ハイパーショット―
今回『最新鋭機を狙え』を刊行したトレヴァー・スコットの日本初紹介作品が、この『究極のライフル―ハイパーショット―』です。
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「ハイパーショット」とは、作中で開発されたライフルの名称で、これはレールガンです。
ドイツの企業がレールガンの小型化に成功。
いっぽうで、超高性能のスコープを開発した技術者が登場します。
両者を組みあわせれば、まさに悪魔の兵器となり、戦争の形態は一変、しかも軍需産業は莫大な利益を手にすることになります。
こうして、究極のライフルをめぐるプロ同士の熾烈な争奪戦がはじめり、そこに謎の連続殺人がからんで、スケールも大きく展開していきます。
理屈抜きに楽しめる、謀略アクション。
『最新鋭機を狙え』といっしょに、ぜひどうぞ。(編集部・T)
2007年09月27日 |
【名作紹介】
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【名作紹介】奇術師の密室
『深夜の逃亡者』の刊行にあわせ、未読のかたは、こちらもぜひ。
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脱出マジックに失敗して以来、全身麻痺で、車椅子に座らされたままの老奇術師。
あとを継いだ息子、その妻、妻の弟、息子のエージェント、さらには乗りこんできた保安官が、奇術道具満載の部屋の中で繰りひろげる、丁々発止、二転三転、荒唐無稽、驚天動地の騙しあい。
それを、傍観者として見ることしかできない老奇術師が語っていくところがまた、いい味を出しています。
ミステリー好きなみなさんなら、『探偵 スルース』や『デストラップ 死の罠』といった舞台劇を思いだされるでしょうが、そこはそれ、マシスンのこと、うれしくなるようなショック描写の連続で盛りあげてくれます。
もちろん、読み終わられたおおかたの読者は、怒濤のどんでん返しに、「いくらなんでも、やりすぎだ!」と思われることでしょう。
実際、最後の真相を確認しようと、編集部に電話をされてきたかたもありました。一読して理解できなかったということではなく、あんまりな展開に心配になられたようです。
まあ、それも無理はない、と、正直わたしも思います。
しかしですね、マシスンがこれを書いたのは、70歳目前のころのはず。
それでもなお、これだけの仕掛けをほどこした小説を構築し、しかもあきらかに本人も楽しみながら書いているということに、なんとも幸せな気持ちになります。
おかげさまで、本書は2006年度の年間ベストに軒並み選出されるという結果になりました。
こういった小説を楽しめるなら、まだまだ日本もだいじょうぶ(笑)。(編集部・T)
2007年03月16日 |
【名作紹介】
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担当書の思い出 悪女パズル その3
森泉さんが亡くなられたことを知って、最初に思ったのは、なんとか『蜘蛛の迷路』(と森泉さんは『女郎ぐも』のことを呼んでいました)を出版できないか、ということでした。
おそらくなら、9割がた、いやほぼ完成した状態の訳稿があるはずなのです。
森泉さんが、最後のときを懸けて心血をそそいだ、「ピカピカの新訳」が。
大家さんに教えてもらったご遺族の方に、原稿、あるいはフロッピイでそれらしきものがあれば、ぜひ探してみて欲しいと電話でお願いし、その日は帰宅しました。
しかし、結局、原稿は発見されませんでした。業者の方が入って遺品整理が行われたようですが、よくわからなかったとのこと。今にして思えば、ワープロをそのまま譲り受ければ良かったのかも、と思ったりもします。そもそも、もっと早く連絡を取っていれば……。後悔の念がわが身をさいなみます。
その後、同窓生の方からご連絡をいただき、早稲田の一文では眉目秀麗な才女として、みんなのアイドルでいらっしゃったというお話をうかがいました。僕のほうからは、これまでの経緯をお話させていただきました。
森泉玲子さんは、たった1冊の訳本を遺して、世を去りました。
だから、この本は、森泉さんが生きた証でもあります。
今、この時代にクェンティンが読めるのは、クェンティンを愛したひとりのご婦人の尽力があったからなのです。
今、僕の手元には、森泉さんが試訳として送ってくださった『蜘蛛の迷路』の7章と8章だけが、クリアファイルに入れて保管されています。(Y)
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