業界ニュース
2011年01月14日 |
【業界ニュース】
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ステファニー・プラム、ついに映画化!
待ちに待った、ジャネット・イヴァノヴィッチ『私が愛したリボルバー』の映画化がついに実現。
現在はポスト・プロダクションに入っているようで、アメリカでは7月に公開の予定です。
ジェニファー・ロペスだとか、リース・ウィザースプーンだとか さまざまな名まえがあがってきたステファニー役は、けっきょくキャサリン・ハイグルに(『男と女の不都合な真実』『キス&キル』)。
このキャスティングには、一部でファンの風当たりが強いようですが、まあ、アンジェリーナ・ジョリーがケイ・スカーペッタをやるのよりは...
モレリはジェーソン・オハラ、そしてメイザおばあちゃんには、なんとデビー・レイノルズ!
監督は『ラスト・ソング』のジュリー・アン・ロビンソン。
日本での予定は、まだ入ってきていません。
2011年01月13日 |
【業界ニュース】
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ジョー・ゴアズ死去
巨匠ジョー・ゴアズの訃報が届きました。
享年79。
残念です。
奇しくも、亡くなった1月10日は、ダシール・ハメットの命日からちょうど50年めにあたります。
扶桑社海外文庫では、人類学を駆使して「殺人」の根源に迫る野心作『脅える暗殺者』と、50年代を舞台にした『路上の事件』を出版し、「このミステリーがすごい!」をはじめ、各方面から高い評価を得ました。
とくに後者の『路上の事件』は、ゴアズの自伝的側面も強い、青春ロード・クライム・ノヴェルで、彼を偲ぶには最良の作品ではないかと思います。
わたしたちにとってはくやしいこともありましたが、その『スペード&アーチャー探偵事務所』が遺作になってしまうのでしょうか。
まさに、ハメットが築いた道を追った作家生活だったといえますね。
ゴアズには、DKAシリーズをはじめとする私立探偵小説のほかに、強烈なサスペンス作品群があります(『脅える暗殺者』『狙撃の理由』『裏切りの朝』『野獣の血』など)。
扶桑社海外文庫では、その流れをくむ Glass Tiger を準備中です。
出版はもうしばらく先になりそうですが、どうぞお待ちください。
2011年01月12日 |
【業界ニュース】
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ハックルベリー・フィン、改訂
マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』および『ハックルベリー・フィンの冒険』の改訂版が出版されることになり、アメリカで話題になっています。
今回の改訂は、「N-word」すなわち黒人差別にかかわる語を書き換えようというもの。
ちなみに、このN-wordですが、『トム』では9回、『ハック』ではじつに219回登場するそうです。
かわりに採用される語は「slave=奴隷」だとのこと。
以前も禁書週間の話題のときに触れましたが、古典作品に残る差別的な表現は複雑な問題です。
とくに、児童書の場合は子どもにあたえる影響が大きいので、出版社や教育機関や図書館にとっては頭の痛いところです。
作品の価値が高いとはいえ、時代性による差別的な表現の部分は、現代人にとって許容できないということになります。
さらには、著者が当時のそういった差別的な考えかたに冒されている以上、作品それ自体が問題なのではないか、という議論さえあるのです。
とくに『ハック』は、アメリカ文学史上、最重要とさえいわれる名作であるいっぽう、発売当初からきびしい批判にさらされてきた作品でもあるので、事情は複雑です。
今回の改訂にはアメリカでも賛否両論...といいたいところですが、批判派が多いようです。
改訂の意図は理解できるが、それをやっては作品を損なう、という意見が大半。
そういった時代性もふくめて作品なのであり、「slave」と書き換えると時代錯誤が生じて、物語世界が崩れることになる、という考えかたです。
そのいっぽうで、あるアフリカ系の作家などは、こんな話をしています。
彼は最近、自分の子どもたちにじっさいにこの2作品の読み聞かせをしたそうです。その際、どうしてもN-wordについては、自分なりに読みかえてしまった、といいます。
さらに、子どもがもっと小さかったころ、シングル・ファーザーだった彼は、おとぎ話を読んであげる場合も「悪い継母」といった言葉は言いかえていたと告白しています。
それが作品を損なう行為だとわかってはいるが、親の心情としてはしかたないというのですね。
今回の改変を行なうのは、トウェイン研究の専門家。
N-wordだけの問題によって、こういったすばらしい作品が読まれなくなることだけは避けたい、という考えにもとづいているようです。
これは、『ちびくろサンボ』騒動を経験した日本でも重要な問題でしょう。
2010年12月21日 |
【業界ニュース】
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マイクル・コナリーvsハリウッド
話は15年前にさかのぼります。
コナリーの初期2作『ナイトホークス』と『ブラック・アイス』の映画化オプションを、パラマウントが取得しました。1995年のことです。
しかし、この映画化は(みなさんもご存じのとおり)実現しませんでした。
まあ、ハリウッドの映画化話がなかなか進まないのは、日常茶飯事ですね。
作品が映画化されないだけならまだしも、この契約には、コナリーには痛恨の条件が入っていたのです。
それは、ハリー・ボッシュというキャラクター自体の映像化権です。
つまり、最初の2作だけではなく、ボッシュが登場する作品は、他社であっても映像化することができない条件になっていたのです。
コナリーは、映像化に強い意欲を燃やしていました。
なにしろ、「本の執筆より、エンターテインメント・ビジネスに関わりたい。それも映画よりもTVに」(!)と語っているぐらいなのです。
10年前には、みずから脚本を執筆して、1時間もののドラマ『特捜チーム レベル9』をスタートさせますが、シリーズ化はできずに終了。
その後もさまざまな脚本や企画を出したそうですが、いずれも失敗。
数少ない成功例が、イーストウッド監督・主演の『ブラッド・ワーク』であり、2011年に公開予定の『リンカーン弁護士』の映画化なのですね(こちらはマシュー・マコノヒー主演。『評決のとき』を思いだします)。
そんなコナリーにとっての切り札が、みずから創造したハリー・ボッシュだというわけです。
なにしろ、ミステリー・ファンへの知名度は抜群ですから。
ところが、そのボッシュの映像化権がパラマウントによって実質的に死蔵されてきたのです。
状況が変わったのが、2010年。
ついにパラマウントとの当初の契約が切れ、契約延長に1年間の猶予ができたのです。
コナリーにとっては、この15年は長い年月だったことでしょう。
彼は静かに逆襲を開始。けっきょく、権利を買いもどすため、パラマウントとの交渉を法廷に持ちこみました。
その結果、公判開始直前で両者の合意が成立。秘密裡に決着したため内容は明かせないとのことですが、ともかくもコナリーはボッシュの映像化権を取りもどしたのです。
しかしながら、これはコナリーのような大ベストセラー作家だからできたことともいえます。
権利者がハリウッドに勝利をおさめるというのは、じつにめずらしいことのようです。
そうはいっても、待たされたあげく、『おれの中の殺し屋』のようにきちんと映画化されることもあります。
こんなのや、さらにはこんな無茶な企画だって実現するんですからね。
ひたすら『マンハッタンの戦慄』の完成を待ちましょう。
2010年12月14日 |
【業界ニュース】
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ロアルド・ダールの未発表原稿
ダールが亡くなって、はや20年。
そんななか、彼の未発表原稿がe-bayに出品され、1900ドルで落札されました。
タイトルは、The Eyes of Mr. Croaker(クローカー氏の眼)。
これはもともと、Do-It-Yourself Children's Storybook という企画のために書かれたものだそうです。
著名な児童書の作家に物語の発端だけを書いてもらい、読者(子どもたち)が自由にそのあとを書きつなげるというアイディアの本でした。
企画者は、ジェリー・ビーダーマンとトム・シルバークライトという2人組で、ダールのほかにもパメラ・トラヴァース(メリー・ポピンズ)やリチャード・アダムズ(ウォーターシップダウン)などからも参加の了承を取りつけていたそうです。
原稿料は200ドル。
そのときのダールが書いた300語程度の原稿が The Eyes of Mr. Croaker というわけ。1982年のことでした。
ダールはさっそく原稿をわたし、「M・バランという人物にちょうど200ドル借りているから、原稿料はいますぐその人に支払ってほしい」と頼んだそうです。
しかしながら、この企画はけっきょく本になりませんでした(寄稿したのもダールだけだったようです)。
90年にダールは死去。
94年には地震でビーダーマンの家が被害を受け、父のガレージに荷物を移した際に原稿もまぎれてしまい、忘れ去られていました。
それがあらためて発見されたのです。
ビーダーマンは、あらためてDo-It-Yourself Children's Storybook を実現しようと、J・K・ローリングなどにも新たに参加を呼びかけているそうですが、いっぽうでダールの作品をe-bayに出品することにしたのです。
「最初のコンセプトのとおり、ファンに書きついで完結させてほしいというダールの願いを実現するため」だそうです。
売上は、ダールの遺族へのチャリティにするとのこと(ダールの遺族はいろいろたいへんですから)。
さて、なぜダールの話を扶桑社ミステリーのブログでしているかというと...
このジェリー・ビーダーマン、現在はTVプロデューサーなのですが、もともと作家で、アーヴィング・ウォーレスの甥っ子なのですね。この企画当時、ウォーレスはいろいろと助言してくれたそうですよ。
2010年11月10日 |
【業界ニュース】
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クライム・ブックのビッグ・タイトル
11月9日、満を持して発売された本が、犯罪実録として脚光をあびることに!?
その本は、ジョージ・W・ブッシュの Decision Points 。
もちろん、前アメリカ大統領の回想録なのですが、Waging Nonviolence という団体が、この本を書店の犯罪書の棚にならべようという運動をはじめたのです(←このリンクに掲げてある書影はパロディですので、ご注意)。
彼らは、すでにトニー・ブレアの回想録を犯罪書に分類するという実績を積んでいます(犯罪どころか、ファンタジー棚に置く書店もあるとか)。
今回のブッシュ本への運動も、マイケル・ムーアが支持したり、ガーディアンが取りあげたり、BBCがラジオで流したり、ついにはロシアの英語ニュース・チャンネルがTVでインタビュウしたりと、注目されてます(むしろ、米国外で?)。
そのブッシュ氏当人は、あちこちで本のプロモーション中。
『ホワイトハウス・スキャンダル』(抜群におもしろいんですが、残念ながら品切)という本には、大統領をやめたブッシュ・パパがお店で買い物をしたとき、お釣りが自動的に計算されるレジの機械を見て驚愕したという話が出てきます。やっぱり世間とズレてたんでしょうねえ。
2010年10月28日 |
【業界ニュース】
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Dorchester その後【追加あり】
ペイパーバック出版をやめて、電子書籍への切り替えを発表した Dorchester Publishing の続報です。
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アメリカの出版社は、著者から著作権の一部を期限つきで譲り受けたうえで、さまざまな出版活動を行なうのが一般的です。
そこで、ペイパーバック出版をやめることになったドーチェスターは、権利を著者に返還しているそうです。
ところが、それにもかかわらず、ドーチェスターは電子書籍を売りつづけている、というのです。
このままでは、電子書籍の売上はいったんドーチェスターに入るわけですが、著者との契約を解消した以上、版元が収入を得るのはおかしいわけですね。
ある著者は、ドーチェスター版の自分の本の電子書籍版を販売している amazon や B&N などに販売中止を申し入れているそうですが、まだ解決されていないようです。
いっぽう、ドーチェスター側も取材に応えていないとのこと。
じつは、電子書籍においては、販売終了を電子書店に通知をしても、タイムラグができてしまって、しばらく売りつづけられてしまうということが、日本でもよくあります。
しかし、今回のケースはそんなイージー・ミスとは思えず、雲行きがあやしいですね。
* * *
さて、ドーチェスターを窓口にしていたノワール・レーベル Hard Case Crime ですが、こちらは無事に新たな版元を見つけたようです。
英国の出版社、Titan Books。映画やTV本、グラフィック・ノヴェル等々を手がけるところで、これはこれで水があうかもしれません。
まずは、ひと安心。
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MWAが、エドガー賞の選考から、ドーチェスターで出版された作品をはずすと宣言。
アドバンスやロイヤリティの支払いがとどこおっている著者がいるのだそうです。
MWAは、以前もハーレクインに対して同様の措置をしたことがあります(すでに解決済み)。
今度は、RWAが追随する、なんていうこともあるかもしれません。
ドーチェスターは作品も多いので、あまり揉めなければいいのですが。
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