業界ニュース
2010年10月27日 |
【業界ニュース】
|
稼ぐ死者
フォーブス誌が物故セレブの長者番付を発表しましたね。
マイケル・ジャクソンがダントツの1位だというので、日本でも報道されました。
ジャッコの収入は2億7500万ドル。2位のエルヴィスが6000万ドルですから、たしかにぶっちぎりの1位。
3位はJ・R・R・トールキン。『ホビットの冒険』の映画化もあるし、本もいまだに年間50万部売れているんだとか。
4位、チャールズ・M・シュルツ。
5位、ジョン・レノン。
このへんはいいですよね。
では、6位に入ったのは誰だったでしょう?
2010年10月21日 |
【業界ニュース】
|
マーク・トウェインがベストセラー作家に
ここ数日、amazon.com や Barnes & Noble といったアメリカのネット書店で、マーク・トウェインの“新作”の予約がベストセラー入り。
ジョン・グリシャムやケン・フォレットを抑える人気ぶりだというのです。
その本は、The Autobiography of Mark Twain, Volume 1 という、3巻本の第1巻で、11月15日発売予定。
マーク・トウェインにAutobiography(自伝)なんかあったっけ? と思ったあなたは正しい。
トウェインは原稿を完成していたわけではなく、今回の本は当時の新聞雑誌の記事なども寄せ集めて作られたようです。
トウェイン自身は、この自伝について、発表するといろいろと差しさわりがあるので、自分の死後百年ぐらい待て、と言い残していたそうです。
それが、めでたく出版されるというわけですね。
この1巻めは、760ページ、定価34ドル95。
おもとめやすい電子ブック版もありますよ。
2010年10月13日 |
【業界ニュース】
|
ブッカー賞レース
ブッカー賞、なんてのは、このブログにはそぐわない話題みたいですね。
あ、サラ・ウォーターズがノミネートされたりしてるから、そうでもないですか。
さて、英国のことですから、賞の選出には賭けが付きもので、ブックメイカーがブッカー賞ギャンブルを行なっています。
ところが、今年は異変が。
ノミネート作品のなかに、トム・マッカーシーという作家の C があります(20世紀はじめのテクノロジーの開花期を描いた実験色の強い作品らしい)。
先週、この作品への賭け金が異常に集中。ブックメイカーによっては賭けを停止する騒ぎになりました。
ブックメイカーのラドブロークス社によると、7月にノミネート作品6作が発表されてから、集まった賭け金はトータルで10000ポンドほどだったそうです。
ところが、先週の水曜、午前中だけで C に15000ポンドあまりの賭け金が集中したというのです。
驚いたラドブロークスは、この賭けの受け入れを停止。
その時点で C の倍率は、4:6だったそうです。つまり、4賭けて勝ち金が6ということですね。
ちなみに、ほかの人気作品はエマ・ドノヒューの Room で、倍率は1:5だったそうです。
今年のブッカー賞は、これぞという有力候補がいなかったそうですが、急に流れが変わってしまったわけです。
「サルマン・ラシュディが候補にいたら驚かないが、限度を越えた説明のつかない事態なので停止を決定した」とラドブロークス。
いったい、なにがあったのか?
ブックメイカーのウィリアム・ヒル社は、賭けを停止する理由はないとして、続行。
「選考委員のうち3人が、自分の好みとしておなじ作家の名まえを漏らしてはいるが、疑わしいところはない」としています。
そして、この賭けはたくみなパブリシティ戦略ではないか、とほのめかしています。
つまり、賭け金をつりあげて世間の注目を引こうとしている、というわけです。
C の版元は、もちろんこれを否定しています。
ちなみにウィリアム・ヒルの C の倍率は、10:11だって!
で、昨日、ついにブッカー賞が発表されました。
その結果……
2010年10月07日 |
【業界ニュース】
|
世界一大きな本
という触れこみなのが、これ。
角度を変えると、こんな感じ。
世界の大陸の地図と、おもなスポットの写真が載っているんだそうで、大きさは6×9フィート(およそ180cm×270cmといったところ)。
製作したゴードン・チアーズ氏は、もともとペンギンやランダムハウスといった大手で仕事をしていたそうですが、この企画を出したところ、どちらでも受け入れられず、それならということで独立し、これを作りあげたといいます。
1冊10万ドル。
31冊しか作らないそうですが、すでに2冊はアラブ首長国連邦の博物館がお買いあげ。
チアーズ氏は、予定部数はすべて売れるだろうと強気です。
これが発表されたのは、ドイツ・フランクフルトで開催されている国際ブックフェアの会場。
ブックフェアといっても、電子書籍が注目をあびていて、チアーズ氏は納得行かないご様子。
「いまはすべてがデジタルで、あっという間に消去されてしまう。しかしこの本は、500年かそこらはもつよ」
なるほど、端末がどうあれ、これなら紙の本の勝ちかも。
扶桑社は、今年はフランクフルトに参加していないんですが(翻訳出版社としては異例のこと)、実物を見たかったですねえ。
2010年09月29日 |
【業界ニュース】
|
Kindleのベストセラー騒動
ご存じ amazon.com の電子ブック用リーダー、キンドルのベストセラー・リストが物議をかもしています。
このところ、キンドルのベストセラー1位をキープしていたのは、ジョナサン・フランゼンの話題の新作 Freedom だったのですが、先週来、首位から陥落。
それ以来トップを独占しているのは、エレクトロニック・アーツ社の Scrabble だというのですね。
そう、「スクラブル」とは、クロスワード・パズルのように単語を作りあうゲーム。
つまり、ゲーム・ソフトが本を追い落として、ベストセラーの1位となっているわけです。
ところが、これに対して出版社・著者・エージェントがこぞって猛反発。amazonに批判が集まっています。
この程度でなぜ? と思われるかもしれませんが、CBSインタラクティブ・ビジネス・ネットワークのブラウン氏によると、大きく3つの理由があるそうです。
(1)カスタマー・サービス上、本とアプリケーション・ソフトは扱いをわけるべき
それはそうですよね。
たとえばアップルは、iTuneとiBookとアプリケーションについて、ベストセラーをわけて発表しているそうです。
(2)著者にとって不利益になる
これは意外かもしれません。
海外では、著者の新作についてエージェントが出版社と交渉する際、前作がベストセラー・リストに載ったかどうかも大きな材料になります。
つまり、「それだけ人気が高い作家なのだから、今度の作品も高く買ってくれ」というふうに、交渉を有利に進められるわけです。
いまのところ、キンドルのベストセラー・リストはそれほど重視されていないそうですが、電子ブックのこれからの市場を考えれば、今後は注目度が高まるはず。
それなのに、ゲーム・ソフトを入れてしまうと、そのおかげで本来ならベストセラー・リスト入りするはずの本が落ちてしまうことになります。
これが、著者にとって不利益になる、という理由です。
(3)まったく基準のちがうものを同一に扱っている
本とゲーム・ソフトでは、売れる数がまったくちがいます。
たとえば、電子ブックで5万部売れればヒット商品といえますが(これはアメリカの話。日本で5万ダウンロードあれば、超大ヒットでしょう)、iTune用のゲーム・ソフトでは、1日に5万売れるソフトもあるとのこと。
これでは、しばらくのあいだ「スクラブル」から首位を奪える電子ブックはないだろう、というのです(記事では、「トワイライト」や「ハリー・ポッター」の新作でも出れば別だが、と皮肉まじりに言っています)。
さて、アプリケーション・ソフトが外されて、電子ブックのみのリストになることはあるのでしょうか。
2010年09月28日 |
【業界ニュース】
|
ラルフ・ヴィチナンザ
文芸エージェントとして活躍してきたラルフ・ヴィチナンザが死去。
享年60歳。
就寝中に、脳動脈瘤で亡くなったそうです。
SFやファンタジーに強いエージェントだったので、扶桑社はさほど付きあいがありませんでしたが、なにしろ彼はスティーヴン・キングを扱っていましたので、関係がまったくなかったわけではありません。
われわれにとってはなかなかきびしい相手でしたが、そのまま裏を返せば、著者にとってはよいエージェントだということにもなります。
たとえば、彼のクライアントだったSF作家のナンシー・クレスも、故人をたたえる追悼文を書いています。
「本人にとっては安らかな死(easy death)だったというが、残された者たちにとって、死が安らかなどということはありえない」
フランクフルトで開催される国際ブックフェアを目前にしての急逝。
残念だったことでしょう。
2010年09月08日 |
【業界ニュース】
|
ある編集者
ラリー・アシュミードが亡くなりました。78歳。
ご存じないですよね。
Doubleday、Simon & Schuster、Lippincott、そしてHarperCollinsと、大手の出版社であまたのベストセラーを世に送りだした名編集者です。
こんな話があります。
ロンドンの出版社に友人を訪れた際に、彼はそこにあった、オクスフォード英語辞典の誕生について書いた原稿をつかみ、「これをベストセラーにするよ」と言ったといいます。
それが『博士と狂人』となったとか。
スーザン・アイザックス、アン・リヴァーズ・シドンズ、トニイ・ヒラーマンなど、彼が手がけたベストセラー作家はたくさんいますが、なかでも有名なのはアイザック・アシモフでしょう。
出版社に就職したてのころ、上司から預かったアシモフの原稿の科学的な誤りを徹底的にチェック。それ以来、2人は長い交友関係を結ぶことになります。
『アシモフ自伝』のなかで語られているエピソード――ある原稿でアシュミードが「この段落は意味不明」とチェックしてきた。それに対しアシモフは「わたしにはわかる」と書いて突き返した。
こりゃあ、やりにくい作家だわ。
ただしアシモフは、編集者にはボツにする権限があり、それに対してはなにも言わないのだ、とのこと(ほんとか?)。
アシュミードは、もともと地質学の博士課程を修了し、奨学金返済のために石油会社に就職したのち、出版社に転職したという変わり種。
そんな彼が編集者という職業を知ったのは、9歳のとき。
地元の図書館で、あるミステリー作家が朗読会をしたのですが、彼女は兼業作家で、昼は編集者として働いているのだ、と説明。
そして、編集者とは、マンハッタンの摩天楼のなかで一日じゅう原稿を読んでいる仕事なのだ、と語り、アシュミードはそれにいたく感銘を受けたのだそうです。
海外の編集者はそんな理想的な仕事なんでしょうか。
≪前のページへ 1 2 3 4 5 ...次のページへ≫