業界ニュース
SF話あれこれ
↑上でアシモフの話を書いたので、往年のSF作家についての情報を。
レイ・ブラッドベリが90歳の誕生日を迎えました。
1999年に脳卒中になり、いまは車椅子での生活ですが、まだまだ意気軒昂。
『華氏451度』の再映画化話は、メル・ギブソン監督などの名があがりながら、けっきょく映画会社からブラッドベリの手にもどるとのことで、新たな映画化を考えているそうです。
さらに『火星年代記』の映画化も交渉中とのこと。
まだ原稿も書いているそうですが、LAの自宅からアリゾナにいる娘さんに電話をして口述筆記し、タイプされた原稿を郵送してもらって手を入れているのだそうです。
「書くのが好きなんだ。自分が好きなことをやり、自分がやることが好きでいられるなら、簡単なことさ」
アーサー・C・クラークが1964年にBBCで語った未来予測番組が発掘されました。
クラークは、21世紀にはコミュニケーション技術の革新で、どこにいても人間同士がコンタクトできるようになり、地球はひとつになると説明しています。
まったくおっしゃるとおり。
バイオテクノロジーで動物を知性化するとか、宇宙開発などについてもかたっていますが、このへんは、まあ。
クラークはiPADを予測した、なんて話もありますが。
2010年09月02日 |
【業界ニュース】
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『隣の家の少女』DVDついに発売!
日本公開され、爆発的な話題を呼んだ『隣の家の少女』映画版のDVDが、9月8日(水)、ついにリリースされます。
販売:キングレコード梶^品番:KIBF-781
内容はまさに完全映画化。
保証いたします。
で、DVDパッケージを開けたら、目に飛び込んでくる超怪しい二人組の写真・・・。
どこからどうみても「日本で同様の事件を引き起こした凶悪犯」にしか見えませんが、
すいません、うちの編集部の担当二人です・・・(汗)。
まさか、キングレコードの担当者さん(傑作ゾンビホラー『処刑山』で、「海に行けばよかった・・・」の名コピーを生んだ方です)の取材でインタビューをうけたときは、こんな使われ方をされるとは思いもしませんでした・・・。
せっかくのDVDの価値を落としていないかと汗顔の至りですが、
この映画がパッケージ化されて世に出るというだけで、もう何も申し上げることはございません。
劇場公開に行きそびれた方、地元では公開のなかった方、
ぜひDVDをご購入いただき、奇跡の実写化をその目でお確かめ下さい!
(編集Y)
2010年08月30日 |
【業界ニュース】
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またもやe-book話
ローラ・リップマン、といえば、テス・モナハンのシリーズや単発のサスペンスなど、日本でも10作以上が邦訳されている人気作家ですが、彼女の新作がちょっとした話題になっています。
最新作 I'd Know You Anywhere は、アメリカで8月17日に発売されたのですが、最初の5日間の売れ行きを見たところ、e-book版の部数がハードカバー版をうわまわったというのですね。
ハードカバーが4000冊売れたのに対し、e-book版は4739。
版元のHarperCollinsの担当者によると、最初の1週間でe-bookのほうが売れた本ははじめてだそうです。
つまり、ほかの本はまだそこまでの事態にはなっていないということでもありますが、では、この本の場合、どうしてそんな結果になったのか。
さきほどの担当者によると、書評のおかげではないか、とのこと。
よい書評が出ると、e-bookの売れ行きのほうがすばやくのびるのだそうです。
どうやら、書評を見た読者が、いますぐ読みたい、と思い、より早い手段としてデジタルを選ぶのではないか、というのですね。
本を買おうとすると、書店へ出かけて買うか、ネットなら配送を待たなくちゃいけないわけですから。
なるほど、これは、納得しやすい説明です。
つまり、リップマンの今回の作品も、いい書評が出たわけですね。
ちなみに、アメリカの大手の出版社では、現在のところe-bookのシェアは、全体の収入の8%とのこと。1年前には3〜5%だったので、パーセンテージでは倍近くのびていることになります。
2012年末には、この割合が20〜25%に増加しているのではないかと見こんでいるそうです。
2010年08月29日 |
【業界ニュース】
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ケッチャムの最新作
ケッチャムの近況について、読者の方からコメント欄にお問い合わせを頂戴いたしましたので、遅まきながら回答させていただきます。ほんとにお返事遅れてごめんなさい。
えー、ケッチャムをごひいきにしてくださり、誠にありがとうございます。
海外のWikiなどをご覧になるとご了解いただけると思うのですが、2001年の『黒い夏』以降、あまり長いものは書いていないのが実際のところでして、日本オリジナル編集の中編集『閉店時間』内でご紹介した『川を渡って』(2004)、『雑草』(2006)も、本国では薄い“単行本”としてそれぞれ出版されています。2000年以降書かれた未訳作で一番長いのは2008年の“Old Flames”だと思いますが、これとて『地下室の箱』より短いものです。
まあ、作風からいえば、むしろ短編・中編(ノベッラ)向きの作家さんなのかもしれませんが。むしろ、“Peaceable Kingdom”“Closing Time”などの短編集にこそ、近年の成果がぎっしり詰まっているといえるかもしれません。
と思っていたら、つい先日最新作の情報が舞い込んでまいりました……。
2010年08月24日 |
【業界ニュース】
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ル・カレvsフレミング
1966年に録音されていたジョン・ル・カレへのBBCのインタビュウが発掘されたとのこと。
そのなかでル・カレは、イアン・フレミングを手きびしく批判しているそうです。
いわく、
「ボンドは嫌いだ。あれがスパイとは思えない」
「ボンドをエスピオナージュに分類するのは大きな誤りだ」
「ボンドは、いわば国際的なギャングスターだ」
「政治的なコンテクストが欠落している。アメリカやソビエトの指導者が誰であってもボンドには関係ない」
まあ、最後の部分はわかる気がしますが、だいたいいまではル・カレ自身が「エスピオナージュに分類するのは大きな誤り」な作家になっちゃいましたよね(ええと、これはいい意味で言っています)。
フレミングもル・カレも、諜報活動を実体験として知っている作家ですが、そのアウトプットはまるでちがいます。
それは、戦争の最中に現場のスパイをやっていた人と、外務官僚機構の内部で見ていた人との差もあるでしょうが、それ以上に作家としての資質・目指したもののちがいでしょうから、これは仕方がないのでは。
このインタビュウが行なわれた1966年といえば、ル・カレは『寒い国から帰ってきたスパイ』につづき『鏡の国の戦争』を発表したあと。
フレミングは64年に死去し、遺作『黄金の銃を持つ男』や短編集『ベルリン脱出』が出版されたあとです。
なるほど、当時の読者には、フレミングからル・カレへの世代交代は鮮烈に映ったことでしょう。
もっとも、ル・カレが言うほど、ジェイムズ・ボンドはギャングっぽくはないと思いますよ。
なにしろ、ボンドは映画のイメージが強すぎます(このインタビュウの時期には『サンダーボール作戦』まで公開されてます)。
しかし、フレミングが描くボンドは思ったよりも内省的ですし、暗い影すら背負います(北上次郎氏の『冒険小説論』の卓抜なボンド論をご参照ください)。
ついでに言うと、たしかにボンドは米ソの指導者には左右されないかもしれませんが、そりゃあ英国人ですからね。
ちなみに、そのボンド映画の新作は、まだはっきりしない状態。
いっぽう、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の再映画化は実現しそうだそうですよ(スマイリーは、ゲイリー・オールドマン)。
夏休みになにを読むか
欧米の人たちにとっては、夏休みになにを読むかは重要な問題らしく、今年の夏はどんな本がおススメかをマスコミがとりあげたりもします。
beach readなんていう言葉もありますね(休暇中に海辺でゆっくり読む本、といったところでしょうか)。
日本ではお盆休みも終わって、通勤電車もいつもの混雑具合にもどりましたが、オバマ大統領は、いまが夏休みの最中(8月24日現在)。
昨年は、オバマが休暇に持っていく本がリストアップされてて、ミステリーとしてはペレケーノスがあげられたりしていましたが、今年は紹介されないなあ...と思っていたら、ニュースが届きました。
夏休みをすごすマーサズ・ヴィニヤードに到着した翌日、オバマはポロシャツにジーンズ姿で地元の書店に登場し、紙袋をいくつか下げて出てきました。
買った本は、Brad Leithauserの A Few Corrections と、ピューリッツァー賞の小説部門を受賞したPaul Hardingの Tinkers 。文学づきましたね。
それに、子どもたち用に、ハーパー・リーの『アラバマ物語』とスタインベックの『赤い小馬』。手がたい。っていうか、親としては鉄壁の選択。
とくにハーパー・リーは、発表から50周年ということで盛りあがっているし、なにしろ、人種差別に立ち向かう弁護士の父親を娘の視点から見る小説ですから、ハマりすぎかも。
しかし、出版業界的に騒ぎになっているのは、書店側がオバマに、ジョナサン・フランゼンの新作 Freedom のリーディング・プルーフをわたしてしまったこと。
フランゼンにとっては『コレクションズ』以来となる長編小説 Freedom。
じつはこの本、オバマに手わたされた日から10日ほどあとの、8月31日の発売が予定されています。
しかし、出版前から大きな話題になり、いま、ちょっとしたフランゼン・ブームが起きているほど。
出版社側は、発売当日まで世の中に出ないよう、きびしく規制をかけていたのです。
書店がオバマにわたした“プルーフ”というのは、出版社が事前に製作し、書評やパブリシティ用として、関係者だけに配る見本のこと。
書店が持っていてもおかしくはないのですが、売り物ではありません(だから、この書店もオバマに売ったわけではなく、プレゼントしたわけです)
あきらかにこの書店が、出版社が設定した禁を破ってしまったということで、どうせならとここが早めに売りだしちゃうんじゃないかとか、もしかしたら出版社が発売を前倒しにしちゃうんじゃないかとか、さまざまな憶測を生んでいるらしい。
さらに、このニュースを知った読者があちこちの書店にやって来て、お前が持ってる本を出せ、と迫る事態も起きてるそうで、思わぬ余波というところですね。
もちろん、こういうときの常で、いいパブリシティになったじゃん、という皮肉な意見も。
2010年08月23日 |
【業界ニュース】
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世界一稼ぐ作家は? 2010年度版
2年近く前、「世界一稼ぐ作家は?」というForbes誌の記事を紹介しましたが、今年5月までの1年間の収入で見た最新データが発表されましたので、また興味本位でのぞいてみました。
1位 ジェイムズ・パタースン 7000万ドル
アメリカで売れる小説の17冊に1冊はパタースンの作品になる計算なんですって!
しかも本だけじゃなく、グラフィック・ノヴェルやTV化等々、プロジェクトも多彩。
この人、いまだに原稿はすべて手書きだそうですよ。
2位 ステファニー・メイヤー 4000万ドル
この2年で大躍進したのは、この作家ですね。
映画化も、世界的に大成功。
3位 スティーヴン・キング 3400万ドル
これは納得。
ミュージカルや『コロラド・キッド』のドラマ化もあるそうですよ。
4位 ダニエル・スティール 3200万ドル
1年間に、ハードカヴァー4冊の新刊があったんですって。
3位のキングとはわずかな差...と言いたいところですが、円換算で億単位ちがうのですね。
5位 ケン・フォレット 2000万ドル
ついに『大聖堂』のドラマ化が放映!
6位 ディーン・クーンツ 1800万ドル
未読のかたは、どうか『チックタック』を読んでくださいね。傑作。
7位 ジャネット・イヴァノヴィッチ 1600万ドル
こちらをご参照ください。
8位 ジョン・グリシャム 1500万ドル
初のジュヴナイルを発表したり、既刊を電子書籍化したりしています。
9位 ニコラス・スパークス 1400万ドル
小説も映画化も順調に成功をつづけているようです。
10位 J・K・ローリング 1000万ドル
シリーズが完結して日が経っていますが、それでもさすがに。
最後の映画もこれからですしね。
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