編集部日記

2011年09月27日
【編集部日記】

扶桑社ミステリー在庫僅少本フェア


先週より、紀伊國屋書店新宿本店にて、
扶桑社ミステリー在庫僅少本フェアを開催中です!

二階文庫コーナーのレジ真正面の一等地。
本当にありがとうございます!


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 ↑ おおっ 『ドクターから愛をこめて』がもう売り切れそうです!! 

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新宿紀伊國屋さんで扱っていただけたのは、以下のタイトル。
すべて、ほぼ残部100部未満です。

・ドクターから愛をこめて  アーヴィング・ウォーレス著 591円
東京駅栄松堂で海外文庫売上一位を永年驀進した
究極のロングセラー、ついにその役目を終える!
オジサン向けSEX浪漫ノヴェルの金字塔!

・夜の終わる場所   クレイグ・ホールデン著 820円
『この年の自信のベスト1だったのに、各種アンケート
では下位に甘んじて淋しかった。(北上次郎氏・談)泣』!!
2000年度翻訳界を代表する重厚なる警察小説!

刑事エイブ・リーバーマン シリーズ  スチュアート・カミンスキー著 
あらゆる書評家の絶賛を浴び、5作で力尽きた名シリーズ!
都市を、犯罪を、そして人間を知りつくしたシカゴの老刑事。
今は亡き知と情の才人が心をこめて彫琢した、感動のモジュラー型警察小説。


大傑作『憎しみの連鎖』は残部15冊、早いもの勝ち〜

愚者たちの町  680円
裏切りの銃弾  650円
冬の裁き     660円
人間たちの絆  820円
憎しみの連鎖  980円

狼の夜(上)  トム・エーゲラン著 840円
狼の夜(下)  840円
空前の北欧ミステリーブーム前夜にひっそり発売され、
ひっそり散った傑作(時代を先取りしすぎた編集T orz)
生放送中のスタジオを占拠したテロリストとの息詰まる攻防!
危機また危機、『24』を超えるスリルと謀略が展開する。

ぜひ、皆様、足をお運びくださいね!

(以下、生々しいぶっちゃけ話)

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2011年08月27日
【編集部日記】

(速報)スティーヴン・ハンター新作、ついに訳了! ほか


かねてより、続報があればお伝えすると申し上げておりました、スティーヴン・ハンターの新作『Dead Zero』(邦題未定)ですが、ついに上・下巻分とも翻訳があがりました!

これから、鋭意編集作業が進められるわけですが、
一応のところ、例年どおり12月頭の発売で世に問うめどはたったかと存じます。
といいつつ、何がどうなるかはわかりませんので、あくまで「予定」ということで御了承ください。

いろいろ、すごいっすよ、マジで。ご期待ください。

また、F.P.ウィルスンの始末屋ジャックシリーズ最新作、『Infernal』(邦題未定)も無事、翻訳はあがっております。
いよいよ、大詰めに向けて物語も盛り上がってまいりました。
会社の要請で隔月刊でお届けしていることもあり、これから発売時期を販売部と詰めなければならないのですが、なるべく早く読んでいただけるよう頑張って交渉したいと思います。
刊行時期が決まったら、またご報告申し上げますね。


なお、10月頭に出す次の新刊は、
ジェフ・ニコルスンの『装飾庭園殺人事件』
別冊宝島の「隠し玉」で、編集子が本年度最大級の魔球としてご紹介した、例のやつ。
翻訳してくださった風間賢二さんがツイッターでもさかんに発信されているとおり、
ぶっちゃけ、傑作です
もしかすると、もしかするよね・・・・これ。

刊行点数は(発行部数も)微々たるものですが、アクション、ホラー、本格系と全方位作戦を展開中の扶桑社に、よりいっそうのご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。(編集Y)


2011年07月20日
【編集部日記】

またまた『キラー・インサイド・ミー』情報


 このブログで何度となく取りあげてきたので、いいかげん嫌がられるかもしれませんが、ジム・トンプスン不朽のノワール『おれの中の殺し屋』の映画化『キラー・インサイド・ミー』について、また朗報です。

 DVD発売を記念して、ヒューマントラストシネマ渋谷にてミステリーサスペンス映画祭が行なわれます。
 おなじみ滝本誠氏がセレクトしたあざやかな映画群に、トークショーをプラスした特別企画。
 その開幕と閉幕を飾るのが、『キラー・インサイド・ミー』です。
 扶桑社のミステリー読者にはど真ん中のイベントではないでしょうか!?

 なお、『キラー・インサイド・ミー』は全国での公開がつづいていますので、お近くの映画館をチェックしてください。
 DVD発売を待つのもいいですが、ぜひ映画館の暗闇で!

2011年07月04日
【編集部日記】

名探偵たちの年齢【その2】


【承前】

 さて、そもそも話の発端になったコナリーですが、彼の場合はボッシュにきちんと年をとらせているのですね。
 みなさんの印象では、いかがですか?
 たしかに近年の作品では、警察の年金について細かく語ったり、足腰が弱くなったり、老眼鏡を使ったりといったシーンが見られます。
 さらに今度の新作では、ホテルの屋上を調べるのに、自分では行きたくないからと、若い刑事に非常階段をのぼらせる、というくだりも。むかしのボッシュとは思えないですよね。
 じつは、じっさいのLAPDでは、現在最年長の殺人課刑事は58歳だといいます。つまり、ボッシュはその年齢を越えていることになります。こうなってくると、リアリティの問題が出てきます。ウソくさくなってしまっては、シリーズの存続にかかわります。
 そのためコナリーは、ボッシュに犯罪捜査を続けさせるための道を模索中だそうです。
 たとえば、市警をやめて、検察庁づきの特別捜査班に就かせるとか、あるいは、ボッシュの娘にバトンをわたしてしまう、といった思いきった変化を加えることになるかもしれないとのことです。

 こんな話を聞くと、扶桑社海外文庫で出版していた、スチュアート・カミンスキーの老刑事エイブ・リーバーマンのシリーズを思いだします。
 シカゴ市警の刑事リーバーマンは、シリーズ開始当時で、すでに60歳(ちなみに、パートナーのハンラハンも50代)。それから、物語の進展とともに年をとっていきました。
 アメリカは実質上、定年制度がないらしいので、自分が働けると思うかぎりは現役なのですね。
 リーバーマンは、年齢を逆手にとった人生経験と知恵で、事件を解決していきます。いいシリーズでしたが、わたしどもの力およばず、途中で断念することになってしまいました。申し訳ありません。

 これが英国だと、公務員たる警官には、退職・引退の時期がやってきます。
 ご存じのとおり、イアン・ランキンのリーバス警部は『最後の音楽』で引退となりました。
 それでも読者は、リーバスの復帰をもとめているそうです。ミステリー界の大立者オットー・ペンズラーも、ランキンに言ったそうです。「イアン、これはバカげているよ。きみは作家なんだ。リーバスに年をとらせなきゃいいだろう」アメリカ作家たちの作品を見てきたペンズラーらしい言葉です。
 ベストセラー作家のリーバスらしく、政治界からも反応があったそうです。スコットランド議会で、警察官の退職年齢を65歳に引きあげるよう法務省に嘆願しよう、という声があがったのです。そうなれば、リーバスがあと5年働けるから。もちろんこれは、政治家のジョークだったようですが。
 ま、いずれにしろ、ランキンはリーバスの復帰を考えているようですよ。

 引退後も事件にかかわることになったのが、大御所ルース・レンデルの主人公ウェクスフォード警部(失礼、「元警部」ですね)。
 前作で退職し、孫と遊んだり読書にふけったりして暮らすウェクスフォードは、この夏に出版される新作 The Vault で、コンサルタントとして捜査に復帰します。
 しかし、その立場上、みずから現場に立つことができません。
 作中で彼は、自分で目撃者を尋問できないと妻にこぼすそうです。「入っていって、直接話を聞けたらいいんだが。小説のなかの素人探偵みたいに」

 話は一転、ヤングアダルト小説が流行した英米では、ミステリー作家がつぎつぎとジュヴナイルを発表しました。
 たとえば、ジョン・グリシャムが昨年はじめたシリーズの主人公は、13歳。
 これはこれで、年をとっていくのでしょうか?

 そうそう、扶桑社にはもうひとつ、スティーヴン・ハンターのボブ・リー・スワガーのシリーズがあります。
 こちらは、ご存じのとおり、着々と年齢を重ねています。
 父親からつづく年代記でもあり、生まれたときもヴェトナム経験も描かれていますから隠しようがありませんし、なにより、年をごまかすといった操作はこの作風には合いません。
 さて、そのハンターですが...詳細はまた追って!

名探偵たちの年齢【その1】


 扶桑社がマイクル・コナリーを初紹介してから20年近く。
 この秋刊行される新作 The Drop で、ハリー・ボッシュは60歳になるのだそうです。
 ボッシュが60歳!

 それにあわせて、〈ウォール・ストリート・ジャーナル〉に、探偵たちの年齢についての興味深い記事が掲載されましたので、ご紹介します。

 人気シリーズほど、長期にわたって執筆され、時間も経過していきます。
 1976年に初登場したマット・スカダーは、著者ブロックによると72歳になるといいますし、ジェイムズ・リー・バークのデイヴ・ロビショーも73歳になる計算だそうです。

 もちろん、これらはあくまで計算上のこと。
 作家たちは、登場人物の年齢を操作して、若いままにとどめています。
 それがごまかしだとしても、「そうしないのは、美意識として正しくない」とジェイムズ・リー・バークは言います。
 ブロックは、今年発表されたひさしぶりのスカダーもの A Drop of the Hard Stuff で、80年代のアルコール依存症との戦いを描きなおすという形で、若いスカダーを無理なく取りもどしています。

 しかしながら、現実をリアルに描くミステリーにおいて、肝心の主人公の年齢が非現質的というのは、どうなのでしょう?
 それでも、年齢の操作は行なわれないほうが少ないぐらいのようです。

 スー・グラフトンのキンジー・ミルホーンは、1981年の『アリバイのA』当時で32歳。それから30年たちましたが、新作でも40歳ぐらいです。
「更年期のキンジーを見ることはないでしょう」とグラフトン。

 リー・チャイルドの場合は、最初の数作では主人公ジャック・リーチャーを実時間にあわせて年を取らせていましたが、肉体的なアクション・シーンがかなり無理になってきたことに気づき、40代なかばぐらいの印象で年齢を止めることにしたそうです。

 パトリシア・コーンウェルもそうですね。
 スカーペッタは、数年前に年齢をリセットされました。
「80歳になった彼女の話なんて、誰も読みたくないでしょう」とコーンウェル。

 ジョン・サンドフォードの主人公ルーカス・ダヴンポート(ダベンポート)も、1年に2〜3ヵ月程度しか年齢を進めないように操作されてきましたが、22年書きつづけた結果、50歳になろうとしています。
 そこで、新作 Buried Prey では、主人公の新人警官時代を挿入。おかげで、「セックスを作中に復活させることができた」そうです。なるほど、そういう問題もあるのね!
 ちなみにサンドフォードは、かつてルーカスを作中で殺してシリーズを終わらせようとしたそうですが、編集者が大反対。理由は、これまでのシリーズ作品が売れなくなってしまうから、とのこと。
 おかげでサンドフォードはシリーズを書きつづけ、いまや21作。本人はSFやノンフィクションを書きたいのに、読者はルーカスものをもとめつづけているのです。

 そう、探偵が年をとらず、シリーズがつづくのは、読者のニーズにこたえ、あるいはそれを見こして出版社が書かせるという、経済的な側面が無視できません。
 年齢のないキャラクターの典型としてあげられるのが、マイク・ハマーやジェイムズ・ボンド、ロバート・B・パーカーのスペンサーや、ロバート・ラドラムのジェイソン・ボーン。これらのヒーローは、時間を超越したがゆえに、作家の死後も後継者によって書きつがれ、さらに読者を楽しませ、出版社をうるおすことになったのです。

 ふりかえってみれば、シャーロック・ホームズは引退して養蜂家になりましたし、ポアロは正面から老いと死が描かれました。作家の側に主人公たちの最後の作品を書こうという意志があったのでしょう。
 かたや、フィリップ・マーロウは、20年におよぶ執筆期間があっても、年齢もあいまいで、最後も描かれずに終わったわけですが、逆にそのおかげで、永遠の私立探偵のイメージを決定づけることになったといえますね。

2011年05月20日
【編集部日記】

「キラー・インサイド・ミー」お見逃しなく!


弊社『おれの中の殺し屋』(ジム・トンプスン著)を原作とするマイケル・ウィンターボトム監督、ケイシー・アフレック主演の映画『キラー・インサイド・ミー』。もうご覧いただけましたか?

ヒューマントラストシネマ渋谷での最終上映がいよいよ5月27日(金)に迫ってまいりました。
関東在住で、まだご覧になっていない方はぜひ、この機会に足をお運びください。

逆に、各地ではこれから公開が始まる映画館も多数ありますので、ぜひお楽しみに!

(公開情報はこちらから)

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2011年05月17日
【編集部日記】

ケッチャム重版できました!


ジャック・ケッチャムの傑作中編集、『閉店時間』と、『オフシーズン』の続編にあたる『襲撃者の夜』に重版がかかりました!
とくに、『閉店時間』は、大変に思い入れの強い本なので、喜びもひとしおです。

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■オンライン書店で購入する
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収録作中、とくに「川を渡って」は、ウエスタンなのでとっつきにくいかもしれませんが、ケッチャムの作品中でも屈指の傑作ですので、ぜひご一読ください。
より一般のミステリファンには「ヒッチハイク」を猛烈にお勧めします。

訳者の金子浩さんが、ケッチャム入門と題して、翻訳ミステリー大賞シンジケートのブログで、きわめて明快にその作風と読みどころをまとめてくださっています(こちら)ので、ぜひあわせてご一読ください。


ケッチャムの提示する“つくりもの”ではない「悪」の実存と、天災のごとく降りかかる理不尽な加害のリアリズム(およびその逆説としての世界の平等性)、心の痛みすら伴う体感的な恐怖は、おそらく文学史上、唯一無二のものです。

同時に、その裏からほとばしる、立ち向かうことへの肯定的意思、被害者も加害者も報われない神なき世界でなお生きるひとびとの矜持は、意外にもみなさんの胸を打つかもしれません。

そして、そんな真摯で謹直ですらある作家性……ほんとうの痛みを知る繊細でたおやかな世界認識(そうじゃないと、9.11のあと小説が書けなくなったりはしない)を、なにかとジャンルホラー愛好とエキセントリックな過剰性でつつまずにはいられない、この人物の「含羞」と、出自を裏切らない誠実さを、編集者はこころから愛します。

ひとりでも多くの方に、ケッチャムの諸作を読んでいただけますように。(編集Y)



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