お待たせいたしました。
ノーラ・ロバーツ先生の新刊『月明かりの海辺で』はお読みいただけましたでしょうか?


 

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あらすじはこんな感じです。

2005年7月、メイン州ロックポイントにあるショッピングモールで銃乱射事件が発生し、36人が尊い命を落とした。犯人は地元の高校に通う3人の男子高校生。わずか8分間の凶行だったが、生存者たちは心に深い傷を負い、その後の人生を大きく左右されることになった。
事件当時、親友を喪いながらも第一通報者となった女子高生のシモーネ、モールのレストランでアルバイトをしていた大学生のリード、現場に駆けつけ、主犯格とみられる男子高校生を射殺した女性警察官のエシーは、被害が拡大するのを食い止めたとしてマスコミに称賛され、世間にその名を知られることとなる。しかし、3人を逆恨みした犯人の妹パトリシアは、長い年月をかけて自らの姿を変え、3人に復讐を果たそうと計画していた......。

親友を銃弾から守ることができなかったシモーネ。デートの約束を取りつけたばかりだった片思いの相手を目の前で亡くしたリード。事件現場で彼らを助けることとなった警察官のエシー。
物語は奇しくも事件の救世主となっていた3人を中心に、「あの凄惨な銃乱射事件はなぜ起きなければならなかったのか?」という謎を軸にしながら、生き残った側の記憶や隠された想いを縫うように進んでいきます。

親友を亡くしたことで生きる目的を見失いかけているシモーネは、聖飢魔IIさんもびっくりのファンキーな髪型をすることで憂さを晴らし、男子との一夜の恋に溺れる生活。運よく命を取り留めたもう一人の親友・ミーはそんな彼女を心配しますが、本人はどこ吹く風で、家族とも衝突し孤独を深めていくばかりでした。
一方、警察官として変わらず活躍するエシーと、エシーの部下となり新米警察官としてのキャリアを邁進するリードは、「あの事件」の生存者たちが短期間で次々と死亡していることに不信感を持ち始めます。調べてゆくうちに裏で糸を引いていた真犯人の存在に気が付くのですが......。

上巻は群像劇のスタイルで、随所で起きる殺人事件が3人の生活に少しずつ影を落としていく......という緊張感満載のサスペンス。
殺されるターゲット一人ひとりの人生が崩壊する瞬間と、主要人物たちが自らの記憶を辿りながら行動に踏みだしていくさまが絶妙にリンクし、やがて殺人鬼との追いかけっこが繰り広げられるのですが、飽きさせない展開はさすがノーラ先生。ドキドキさせてくれますよ。

絶賛迷走中のシモーネとリードがどうやって出会うの?とか、まさかの犬が大活躍(恋愛的に)って本当?とか、まだまだ読みどころがてんこ盛りですので、どうぞお手に取っていただければ幸いです。

 

2018年9月21日 17:58 | | コメント(2)

ブログの更新、大変お待たせいたしました。
リサ・マリー・ライスの新刊『真夜中の情熱』はお読みいただけましたでしょうか?


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あらすじはこんな感じです。

ケイは最愛の祖父を誘拐犯から救出してくれたFBI捜査官ニックへの募る想いを心に閉じ込めてきた。政府機関を巻き込む巨大な陰謀を内部告発しようという自分との関係が公になれば、彼のキャリアに傷がついてしまうから。でも今や民間警備会社の社員となった彼とのいちどだけの関係なら許されるはず。そして情熱の一夜のあと、固い決意で彼のもとを去ったケイをバイオテロが襲う。絶対絶命の彼女が助けを求められる相手はただひとり、ニックだった。大人気シリーズが新展開!

今回もやってきましたヒロインが好きすぎるヒーロー選手権。ニック選手はかなり飛ばしてます。
本シリーズのヒーローとヒロインは『真夜中の約束』で脇役をつとめたあと、何度か言及されてきたニックとケイ。互いの存在を忘れられずにいた二人が再会し、組織ぐるみのバイオテロと闘うこととなります。
ともかくニックの愛が強すぎて大変。ケイと会うためなら国境もスッと越えて、隙あらばガンガン口説いてきます。しかしケイのほうはなかなかつれない対応。それもそのはずで、世界を滅亡させるバイオテロ計画を知ってしまった彼女は、不審死を遂げた親友の遺言を守るため、何もかも捨てて卑劣なテロリストと闘うことに決めていたのです。孤高のヒロイン・ケイは、最愛のニックとの関係も断ち、裏社会へ旅立とうとしていました。

と思いきや、惚れた相手を無視し続けられるほど強くはいられず、一度だけならと"最後の夜"をニックと過ごしてしまいます(一度では済まぬ......)。そうしてベッドを共にした日の夜明け、別れも告げずに部屋を抜け出した彼女は、覆面ジャーナリストにUSBデータを渡すべく待ち合わせ場所へと向かうのですが、突然現れたドローンの攻撃によりジャーナリストは死亡。自身も謎のテロリストに追われる身となってしまいました。

まあ、結局もうニックに助けを求めるしかないですよね。ということで「俺、捨てられた!?」と裸でブチ切れ中のニックに着信がいきますが、最初は怒り心頭でケイのSOSを微妙に聞いていません。でもまあ、速攻許しちゃいます......なにせ彼女にベタ惚れなのですから。
強さでいうと傭兵レベルの彼は、ドローンの監視を華麗にかわしながらケイのピンチを救い、所属するASI社(防犯エージェント)が所有する秘密のシェルターへと彼女を匿うことに。常にケイに構って欲しそうにムズムズしつつも、犯人を追いつめるべく腐心する頼もしい男です。

今回は女性生物学者がヒロインということで、生物兵器を駆使した薄っすらリアリティを感じさせる事件。本作のように、DNAを利用して個人攻撃が可能なウイルスが開発されるなんてことはいつか現実になるのでしょうか?
このウイルスちょっと効率悪いよね?とか、この方法じゃ犯人を撒けてないんじゃないかな?とか、敵も味方も時々うっかりさんなところがとても心配になるのですが、フェリシティをはじめとしたASI社員たちの優れた仕事ぶりや社内カップルのイチャ付き具合は前作に比べてもグレードアップしており、その無敵感に本シリーズの醍醐味を感じる人も多いはずです。

読みどころはニックの強すぎる愛です。愛が渋滞している、ということに尽きます。どんなに殺伐とした状況でも息をするように愛を語らおうとするニックですが、それがまた彼の頼もしいところでもあります。ヒロインがどんなに辛い状況でも、逃げずにしっかり受け止めてくれる、そんな胸板厚い系男子がお好きな読者さんにおすすめの一冊です。

2018年9月21日 17:47 | | コメント(0)

更新が大変遅れまして申し訳ありません。

エリザベス・ノートンの新刊、『つめたい夜を抱いて』はお読みいただけましたでしょうか?
本作はRITA賞(ロマンティック・サスペンス部門)を受賞した注目作。本格的なロマサスをお好みの方に、ぜひお手に取っていただきたい一作です!

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お話はこんな感じです。
サマンサ・パーカーは、18年前に兄を目の前で失った忌まわしい記憶に苛まれながら、事件が起きた故郷のヒドゥンフォールズに戻って教師をしている。職場へ派遣されてきた精神科医のイーサンとは生徒のトラブルを通して自然と惹かれあうが、彼もまた誰にも打ち明けられない過去を抱えていた。不器用なふたりの想いが少しずつ熱を帯びてきたある日、同僚の教師が遺体で発見され、その直後にサマンサも命を狙われてしまう。背後には、18年前の事件の真相を知るとある人物が関係していて......!?

サマンサとイーサンはどうやら過去に同じ殺人事件に遭遇したらしく、その記憶は彼らの心に暗い影を落としています。しかしサマンサ目線で語られる記憶にはところどころ靄がかかっていて、「なぜ殺されなくてはならなかったのか?」「だれがどうやって、だれを殺したのか?」が判然としません。18年前にいったい何が起きていたのか? この町で生活する者はみな一様に隠し事をしているような振る舞いをみせ、過去の事件にまつわる謎はラストまで不穏な気配を響かせ続けるのです。
小さな町を舞台にした本作で描かれるのは、学校であり、親子であり、切っても切れない身近な閉塞感でもあります。真実を知る糸口は、どうやら田舎町ならではのこじれた人間関係にあるようですが......。

一方、イーサンがこの町に来てからサマンサに降りかかる不審な出来事も、過去の事件を解明するキーとなっています。自宅に「出ていけ」と落書きされたのを皮切りに、化学準備室に閉じ込められて流血したり、同僚教師の遺体が自宅のテーブルに乗っかっていたり、用務員のケニーに突然襲われたり......と散々な目に遭わされますが、それと同時に18年前の事件に関わっていたとされる人物も、ひとりまたひとりと明らかになっていく。イーサンは過去に何をしでかしてしまったのか?という緊迫感も、ストーリーをさらに盛り上げます。

そんな動きがありながらもロマンスの描写は充実!
心に同じ闇を抱えるふたりはだからこそ惹かれ合うのですが、自身の弱さや幼さををそっと披歴していく静かな会話があり、夜のキャンパスを歩く穏やかなデートがあり、熱い夜もあり......とロマンチックなシーンが満載なのです。
もうひとつの魅力はヒーローがとにかく癒し系なところ。プンスカ不機嫌になる女をいつだって受け止めてくれるイーサン。「僕は頑固で理不尽な人が好きなんだ」ってまじかよ! 辛い経験をした人が優しいと、もはや存在自体が切なくて大好きになります。さまざまな負の感情も知ったうえで、人間の明るさやしなやかさを信じる男なのでした。ちなみに彼の両親や兄弟もとってもいい奴です。

ぶっとんだキャラクターはいませんが、登場人物の内面がしっかりと掘り下げられているので、丁寧な筋運びに委ねてじっくりと楽しめる一冊だと思います。
みなさまからの反響によっては、イーサンの兄弟たちを主人公に据えた続編エピソードを発表できる日が来るかも?しれません。
ぜひ応援いただけましたら幸いです!(編集KY)


2018年7月 9日 21:16 | | コメント(0)

大変お待たせいたしました!
ノーラ・ロバーツ最新シリーズ『世界の果てに生まれる光』はお読みいただけましたでしょうか?
今シリーズは3部作を予定しており、今作はその序章となります。

 

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上巻のお話はこんな感じです。

【あらすじ】
全世界の人口半数以上が死に至る謎のウイルスが発見された。瞬く間にパンデミックと化し、人々が混乱と狂気に陥るさなか、人気作家のマックスと恋人のラナは疫病の蔓延するニューヨークを脱出。途中で知り合った生存者たちと力を合わせて安住の地を求める。仲間になった者には一見なんの共通点もなかったが、実はあの大規模なパンデミック以降、それぞれ不思議な念力を手に入れていた。ロマンスの女王がディストピアを舞台に描く、震撼のラブサスペンス&ファンタジー!

物語は、ロサンゼルス空港で謎の伝染病"ドゥーム"が発見され、みるみる世界が朽ちていくというスリリングな描写からはじまります。
ちなみに原題は『YEAR ONE』。パンデミックで何十億もの人々が亡くなった後、新しく始まる歴史の"最初の一年"を意味しています。

今作でスポットが当たるのは、人気作家のマックスと恋人のシェフであるラナのふたり。
作中では、ドゥームに罹患した影響で特殊能力を発動した者たちが次々に現れるのですが、実はこのカップルは元から能力保持者でした。といってもラナは蝋燭を灯せるくらいの念力しか持っておらず、己の力を自在に操るマックスを熱いまなざしで見つめるばかり。しかしそんなか弱き乙女も、次第に恋人に劣らぬ能力を花開かせ、敵を戦慄させるほどの最強っぷりへと急成長を遂げるのです。
マックスたちは狂暴化した住民に襲われながらも魔術で撃退、何とかハドソン川を渡り、ペンシルバニア州へと向かいますが......。

ラナのように、ウイルスの免疫者として不思議な能力に目覚めた者たちを、作中では「アンキャニー(uncanny)」と呼んでいます。これには神秘的な、不気味な、超人的な、不自然な......などの意味があるようでして。そんな彼らに襲い掛かる犯罪者集団「レイダース」は、アンキャニーたちを"人ならざる者"として無残に痛めつける悪魔的存在として描かれています。
荒廃した世界で覚醒したのは「光」と「闇」の魔法でした。
ラナとマックスはふたりで過ごした愛おしい日々を取り戻すことができるのでしょうか。

そんな彼らに下巻の終盤では衝撃の展開が訪れます。

【あらすじ】
マックスとラナは生存者たちが身を寄せ合う街「ニュー・ホープ」へと辿り着き、久々の安息を手に入れる。新たな命を授かったふたりは静かな幸福を噛みしめるものの、心の奥には、弟のエリックが仲間を殺め、裏切りとともに姿を消した記憶が暗くわだかまっていた。ある日、平和な日々を取り戻すべく街のリーダーとなったマックスのもとへ、犯罪集団が大規模な奇襲を仕掛けてくる。彼らの狙いがラナだと知ったマックスは命を賭けて闘うのだが......。恋人たちの想いが胸を打つ衝撃のラスト!

そう、マックスの弟であるエリックが曲者なのです。
昔から出来の良いお兄ちゃんへのコンプレックスをこじらせていた彼は、念力を手に入れた途端、「もうお兄ちゃんの言うことなんてきかない! ひとりできるもん!」と人格を豹変させてしまったのでした。
重度の中二病ウイルスに見舞われたエリック。遅れてきた反抗期です。
裏切者へと転じたエリックのとある行動が、ラナを窮地に陥れるのですが--。

ノーラ渾身の終末ファンタジー、最後まで目が離せませんので、ぜひお手に取ってみてくださいませ!
〈光の魔法〉3部作は、このあと年1冊(各上下巻)のペースで出版されていく予定のため、日本での刊行も少しお時間いただいてしまいますが、お待ちいただけましたら幸いです。(編集K)

 

2018年4月25日 21:44 | | コメント(0)

毎年、ネット上のファンサイト『Romance Hills 勝手にロマンス』様で開催されている、『勝手にロマンス大賞』も今年で5回め。

これまでも、弊社はリサ・マリー・ライス、ナリーニ・シン、カレン・ラニーなどで入賞をはたしてまいりました。

 

そして今年! なんとミア・シェリダンの『世界で一番美しい声』がロマンス小説のコンテンポラリ部門と、エロティック・ロマンス部門の二部門で、第一位を獲得しました!

 

ご投票いただいた皆様、本当にありがとうございました!

 

世界で一番美しい声 ブログ画像.jpg

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 当ブログでの記事は こちら

 

当初、ご連絡をいただいた際、コンテンポラリー部門とエロティック部門の二冠とうかがい、軽くのけぞりました......(前回のカレン・ラニーのときも思いましたが、そんなにエロティックでしたかね?)。いやあ、本当に感謝感激でございます。

編集者もトーチャード・ヒーローもの(ヒーローが苛烈に虐げられる展開の作品)は大好きで、ローラ・キンセイル『嵐に舞う花びら』のゲラを新宿の喫茶店で泣きながら校正していたのを思い出します。そういえば、同じく類似要素のあるジュディス・デイヴィス『折れた翼』をご紹介くださったのも、本書の翻訳者である高里ひろさんでした。

『世界で一番美しい声』のほうも、個人的に担当できて本当にしあわせでした(本当にいい話なんですよ! 詳しくは過去記事をご参照ください)。
熱い応援をくださった読者の皆様(とくに出版されてすぐにAmazonレビューに激烈な賛辞を送ってくださった皆様)、それから、最高の目利きにして練達の翻訳者さんである高里さんに、この場を借りて心からの感謝を捧げたいと思います。

また、合わせて下記の作品もベスト5に選んでいただきました!

 

ロマンス小説 パラノーマル部門
3位 冬の盾と陽光の乙女(上下) ナリーニ・シン
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当ブログでの記事はこちら。

 


ロマンス小説 エロティックロマンス部門
4位 天国の港 リサ・マリー・ライス
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当ブログでの記事はこちら。

 

▼ロマンス小説 エロティックロマンス部門
5位 真夜中の探訪 リサ・マリー・ライス

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当ブログでの記事はこちら。

こちらの三点も、まだお読みでないなら、ぜひお手にとっていただけると幸いです!

なお、『勝手にロマンス』様には、恒例のプレゼントとして、新刊のノーラ・ロバーツ上下巻に加えて、ミア・シェリダンの原書にはさまっていた特製しおりをつけて提供いたしました。ほしいと思ってくださる方に当たりますように!

 

今後とも、扶桑社ロマンスにご愛顧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます!(編集J)

2018年4月19日 13:48 | | コメント(1)

お待たせいたしました。

いよいよリサ・マリー・ライスの新刊『シエナに恋して』が発売されます。

ちなみにこれで、最新作を除く彼女の全作品が、うちと二見さんからちゃんと出版されたことになります。すごくないですか? 実はこれ、めったにないことなんですよね。

すべては、買い支えてくださっているファンの皆様のおかげでございます。改めて心より感謝申し上げます!!

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 お話はこんな感じです。

 

ニック・ロッシは写真が掲載されるだけで女性誌を売り切れにするセクシーセレブ。

フェイス・マーフィーにとっても、親友の兄というだけでなく憧れの人だった。

そんな彼と夢の一夜を過ごし、不運続きの人生は終わったと思った彼女だったが、

出張先のイタリア・シエナで大事件に巻き込まれる。

一方フェイスを追って、自分のルーツでもあるシエナへやって来たニックは、

街をあげての祝祭の中、帰属意識を実感し、新たな人生を考え始める。

大人気作家のイタリアへの愛着にあふれたラブ・サスペンス!

 

今回の本は原題を『Murphy's Law』、すなわち、『マーフィーの法則』といいまして、ある程度お歳を召された方なら覚えておられるだろうアレを、タイトルにしているんですね。

「マーフィーの法則」は、「失敗する可能性がある場合、必ず失敗する」みたいな、なかなかうまくいかないことへの笑いをふくんだ、標語・教訓集のようなもので、日本でも80年代から流布し始め、90年代前半には大流行しました。別にマーフィーという人がひとりで考えたものではなくて、自然発生的に成立したアメリカのジョーク集のようです。

本書では、各章の冒頭に「マーフィーの法則」が付され、とことんついていない人生を送ってきたヒロインのフェイス・マーフィーの有り様とオーバーラップさせています。

そもそも本書は、『Dying for Sienna』のタイトルで2006年にエリザベス・ジェニングズ名義で出ていた初期の作品を、2014年に大幅な加筆・改筆を施したうえ、リサ・マリー・ライス名義で出し直したものです。

邦題は一応、この旧タイトルに寄せてつけたものですが、実際、新版では、シエナの風光明媚な街の様子や、パーリオと呼ばれるお祭りの情景描写が大増量されており、むしろ邦題にふさわしい内容に仕上がっているのではないかと思っております。

 

今回のヒロインは、数学の天才という、LMRお得意の理系才女。ナチュラルな美貌の持ち主ですが、男性経験はほとんどないという、いつもながらのうぶな性格設定となっています。

一方のヒーロー、ニックは、大人気スポーツ選手で究極のセレブ。ロマンスのヒーローとしてはオーソドックスな人物像ですが、この作家としては珍しいヒーロー・キャラかもしれません。

冒頭から、いきなり二人の熱くたぎる官能シーンで幕をあけるのも、いつにない展開。

しかし、夢のような一夜は、ニックの不用意な一言で最悪の結末を迎えることに・・・。

 

その40数時間後、ヒロインは仕事で飛んだシエナで、殺人事件に巻き込まれます。さらにヒロインを追って(それとシエナ最大の競馬祭りパーリオに参加するため)、ニックも自身のルーツでもあるシエナへとやって来て、物語は恋愛・ミステリーの両面進行で展開していきます。

 

内容として特記すべきは、作品のテイストが、ロマンティック・サスペンスというより、コージー・ミステリーに近い部分ではないかと思ったり。もともと初期に書かれた作品だからでしょうか、なんかLMRとしてはとても新鮮なテイストだという感じがします!

ふだんの「何者かに命を狙われる女性と、それを護る特殊部隊あがりのヒーロー」という、サスペンス/スリラー要素はかなり薄められ、代わりに本書では、冒頭で起きる殺人事件の謎解きと犯人当てというミステリー要素が、作品の中心的なテーマとなっています。つまり、どちらかといえば、旅情ミステリーのような雰囲気が濃厚なんですね。終盤では、それなりに意外な真相も明らかになりますし。

まあ本作でも、ヒロインは終盤、真犯人に命を狙われて危機一髪の目にあったりもしますが、追い詰められたときのアクションが、ふだんが昨今のアクション映画風のノリだとすれば、今回のはヒッチコック映画の1シーンのような、ちょっとクラシカルなのんびりしたところがあります。

このへんのテイストを意識して読んでいただくと、いっそう楽しめること請け合いかと。

 

脇役陣も、かなり変人度の高い数学者軍団に、イケメン刑事、毒舌検死医など、大変魅力的。

それから、彼女のイタリアもの(『ヒーローの見つけ方』『シチリアの獅子に抱かれて』)ではいつもそうですが、とにかく異国情緒にあふれた描写に目を惹かれます。シエナのお祭りと風物、町並み、歴史、料理などについて、観光ガイドのように詳細に触れられており、皆さんも読めばきっと、シエナに行ってみたくなるはずです。

ぜひ、ご一読いただけると幸いです!(編集J)

 

追伸:

コメント欄のほうで問い合わせがありました、ナリーニ・シンの新刊についてですが、いろいろと社的な事情もございまして、早くても年内、もしかすると年度内、といった感じで進行できればいいなと今のところ考えております。お待たせいたしますが、なにとぞご理解を賜れば幸いに存じます。 

2018年3月 1日 22:28 | | コメント(1)

ノーラの新刊のご紹介ができていなくて、本当にすみません。

担当編集者が長く修羅場にありまして、本人は解消されしだい必ずや更新すると申しておりますので、なにとぞご寛恕のほどを・・・。

 

で、スキップして、まずは今月刊のご紹介をさせてください。

季節ものということで、今月の扶桑社新刊はクリスマス・アンソロジー!

書名は王道で『聖なる夜に抱きしめて』としました。

 

そして著者は・・・ダイアナ・パーマー さらには、リンゼイ・マッケンナマーガレット・ウェイ

最初のページには、ダイアナ・パーマーからの日本の読者へのメッセージも入っています!

 

で・・・・なんで扶桑社から、ダイアナ・パーマーが???

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実は、ダイアナ・パーマーは、ハーレクインからケンジントンに移籍いたしまして、こうしてついにうちでも扱えるようになったのですね。

どれくらいハーレクインさんとの契約がまだ残っているのかは正直こちらにはよくわからないのですけれども、本人は謝辞にもあるとおり、今後ともケンジントンで書いていくつもりのようです。

経緯としては、シルエットを出てケンジントンに移籍したタラ・ギャヴィンという名物編集者を追って、彼女を慕うパーマーやマッケンナ、ウェイといった作家たちが次々とケンジントンと契約を交わしたということのようです。

なんにせよ、しがないロマンス編集者といたしましては、ハーレクインのど真ん中で活躍してきた大作家さんたちに対しては、どこか憧れに近いような感情がずっとあったわけでして(まあ「隣の芝生は青い」っていうのも、もちろんあるんですが、やはり、どストレートのカテゴリーロマンスをいっぺん担当してみたいな、という思いが強かったと申しましょうか)。

彼女たちの作品をこうやって担当できるのは、本当に編集者冥利に尽きます。

 

収録作は以下の三作品。いずれも、カテゴリー感の強い王道のクリスマス・ロマンス揃いです。

 

まず、全体の半分350ページを占めるのが、ダイアナ・パーマーの『スノウ・マン』。

彼女の代名詞ともいえる(?)、傲慢ヒーローとドアマットヒロインの出てくる典型的なラブ・ロマンスです。

FBIの職を首同然で辞して、父の農場を継ぐために故郷のコロラドに戻ってきたメドウ。農場のことは古参のカウボーイたちに任せつつ、請われるままに保安官補の職を始めたメドウでしたが、悩みのタネは農場経営だけではありませんでした。隣の牧場に、飼っている犬のスノウがひっきりなしに侵入し、逆に隣の牧場からは先方の飼い猫のジャービスがやって来るのです。そのたびに、牧場主のダルが怒鳴り込んでくるのですが・・・・・・ダル。傲慢で不愉快な天敵。若き日のメドウの恋心を踏みにじり、あざ笑った嫌な奴。でも、彼の前に出ると緊張してドジばかりしでかしてしまう・・・今も彼のことを愛しているから。

骨董品盗難の事件捜査と平行して、反発しあいながらも惹かれあう不器用な男女の恋模様が描かれます。とくに、ヒロインに難癖ばかりつけてくるろくでもないヒーロー像は、まさにこれぞダイアナ・パーマーといったところ(ヒロインのおいおい大丈夫かと不安になるくらいのダメさかげんも、いかにもって感じです)。愛らしいワンコとニャンコの大活躍にもご注目を。

長らくハーレクインさんで『テキサスの恋』『ワイオミングの風』のシリーズを続けてきたダイアナ・パーマーですが、心機一転、新たな設定で物語を執筆しており、しがらみのない形で読める久しぶりの新作ということもできます。未だにダイアナ・パーマーを読んだことのないロマンス・ファンの皆様にとっても、大御所の芸風を知る格好の入門編となるでしょう。「踏みつけられれば踏みつけられるほどに輝きを増す」といわれる(笑)D・パーマー印の「ドアマットヒロイン」の衝撃を、あなたもぜひ体感してみてください。

さらにパーマーは、本作を皮切りにこれから新しいシリーズを始めるつもりのようです。本作がなんとか売れてくれれば次の作品もまた順次紹介してまいりますので、ハーレからの古参ファンの皆様も含めて、ぜひ(買って)応援していただければ幸いです。

 

続くリンゼイ・マッケンナの『キャスのカウボーイ』。純愛系のハートフルなクリスマス・ラブ・ストーリーとしては、アンソロジー中でも一番素直に楽しめる一作かと。

雪嵐で閉ざされんとするワイオミング。高級家具の職人であるトラビスの住む住居兼仕事場であるログハウスの前で、車が事故を起こします。車中で意識を喪っていたのはキャス――高校生のころ愛し合っていたものの、彼の海兵隊入隊とともに離れ離れになってしまった忘れられない女性でした。

トラビスの介抱を受け、気がついたキャスは、自分が別れてからもずっと愛してきた男性の元にいることに驚愕します。猛吹雪で、これから一週間は身動きがとれないなか、閉じ込められた二人は過去、そして現在と向き合うことになります。

従軍経験者を苦しめるPTSDをメインテーマに、ミリタリー・ロマンスの書き手としては第一人者といっていいリンゼイ・マッケンナが、愛し合いながら離別した二人が再び真実の愛を見つけるまでを、詠嘆的な筆致で温かに描き出します。終盤の、これでもかといわんばかりの「感動のプレゼント」イベント連打には、マッケンナのロマンス作家としての技の冴えが感じられます。

退役シールズ・ヒーローものが流行るずっと昔から、ミリタリーものを書き続けてきた大御所の実力が存分にうかがえる一作です。

 

収録作の最後は、マーガレット・ウェイの『アウトバックの夫』。

雪まみれだった前二話とは打って変わって、こちらは真夏のアウトバック(オーストラリアの奥地)を舞台とした陽光と熱気に満ちたお話。ご存じの方も多いかと思いますが、マーガレット・ウェイはオーストラリアの作家さん。そして、オーストラリアの12月は、夏真っ盛りのうだるような暑さのなかでクリスマスを迎えるのです。

スコット・マッカーシーと結婚して18ヶ月、幸せの絶頂にいたダーシーは、夫の浮気を伯母から伝えられ絶望の淵へと叩き落とされます。激しい口論の日々、そして離婚・・・・・・それから二年後、義母だったソフィーからのたっての願いで、久しぶりにアウトバックにあるマッカーシー領を訪ねることにしたダーシーは、空港まで迎えに来たかつての夫スコットと再会を果たします。運命の相手と信じた人。今も素敵で魅力的な男性。でもその口ぶりは当然ながら、いまやすげなくて・・・。

これもマッケンナ作品と同様、一度すれちがって別れざるを得なかったふたりが、再びクリスマスという特別のときを過ごすなかで愛を取り戻すまでを描いたラブ・ロマンスですが、とにかく脇役で出てくる女性たちが強烈!

とくに、ダーシーの伯母であるレイチェルは、この人物を読むための小説といってもいいくらいに圧倒的な個性を発揮しています。思えば、ジェーン・オースティンの諸作にせよ、『ダウントン・アビー』にせよ、こういう強烈なおばちゃんの存在なくして名作とはなり得なかったのでした。

喧嘩別れした元ダンナの家族すらなお魅了する、絶世の美女としてのヒロイン像。

アウトバックに一大帝国を築き上げた富豪一家の、ゴージャスきわまりない描写。

この21世紀を舞台に、英国貴族以上に貴族的な生活ぶりを美男美女たちがエンジョイする姿は、まさに夢の世界を覗き見しているかのよう。マーガレット・ウェイの特徴がよく出た作品だと思います。

 

 久しぶりに落としたら立ちそうな700ページのヘヴィー&ボリューミーな1冊となりましたが、ノーラ・ロバーツやナリーニ・シンの旧刊で慣れている弊社ロマンス読者の皆様なら平気の平左でありましょう。

ぜひ本書を片手に、クリスマスの聖なる夜に(寝正月でもいいですが)、幸せで心温まるひとときをお過ごしください!(編集J)

 

 

 

2017年12月 2日 05:09 | | コメント(4)

8月刊行のリサ・マリー・ライス『天国の港』、もう読んでいただけましたでしょうか?

このところ、〈真夜中〉シリーズの新作が続いておりましたが、今回は一休み(?)して、著者お得意のイタリアものをご紹介いたします。

 

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あらすじはこんな感じです。

 

ホープはイタリア南部の都市バーリで、事故で入院した親友のかわりに英会話学校の
校長代理を務めている。

学校経営自体は順調だが、借りている家のまわりで不可解な現象が頻発。

住居侵入事件が発生するに及び、現地警察組織の本部長フランコ・リベラが護衛につくことになる。

かつて警察に容疑者扱いされ厳しい追及を受けたことのあるホープの警官嫌いは筋金入りだったが、フランコが放つセクシーで危険な魅力には抗えず......

イタリアの景勝地を舞台に大人気作家が贈る傑作ラブ・サスペンス! 

 

本作は、リサ・マリー・ライスが2003年にエリザベス・ジェニングズ名義で発表した作品を、大幅に書き直したうえ、2017年にリサ・マリー・ライス名義で出し直したものです。

初期作をベースにしているだけあって、この作家お得意のシチュエイションとストーリーラインとキャラ造形が、じつにストレートな形で打ち出された作品となっています。

また、イタリアは、ご本人が長く住んでいる土地柄(たしか夫君が外交官だったか)。勝手知ったる筆致で、美しい景勝地の風景や、人びとの生活ぶりがいきいきと描かれています。

リサ・マリーのイタリアものといえば、『ヒーローの作り方』『シチリアの獅子に抱かれて』がありまして、まあこういう言い方はなんですが、そこそこ似たり寄ったりの内容なわけですが(笑)、本作の場合、「海」が舞台、という部分が他の二作と異なる部分かと。編集者としては、二人で岩まで泳ぎっこするシーンなどは結構お気に入りです。

まあ、本作における『天国の港』というタイトル自体は、作中でも解説があるとおり、楽園にある実際の港、というよりは、『困った人間にとっての避難所』みたいな意味合いが強いようですが。

 

あれだけ家が危ないとわかっているのに、やたらと帰宅したがるヒロインの精神構造が解せないとか、ヒーローのお母さんのうっかりさん描写がほとんどアルツみたいになってるとか、多少気になる点もないではないですが、総じてリサ・マリー・ライスの魅力を堪能できる一作になっております。

 HOTなシーンもてんこ盛り(こういうのは初期作のいいところですね)で、リサ・マリー先生のそういった部分を特に欲しておられる皆様には、無条件に喜んでいただけるお話かと。

 

なお余談ですが、編集者といたしましては、今回は結構カバーまわりがうまくいったかな、と自負しております。

まずは、作中に登場するヒロインの「プラチナ・ブロンドのストレート、青い瞳の超絶美女」という設定にぴったりの写真が見つけられたこと。

加えて、女性にオーバーラップさせてある風景は、本作の舞台となるバーリの写真なのですが、オビをとったら・・・・

天国の港帯なしブログ.jpg

ね、どうです!? ちゃんと家が崖の上に立ってるんですね。そして周囲は海・・・。

読了された方なら、いい写真を見つけてきたな、ときっとわかっていただけると思います!(以上、どうせ誰も褒めてくれないので自賛してみました)

 

リサ・マリー・ライスに関しては、やはり旧作をリライトした未訳作をもう一作、すでに版権を獲得してあります(これで彼女の作品は二見さんとうちとで、全てが翻訳されることになります、すごいですね)。

さらに〈真夜中〉シリーズの最新作(『Midnight Fever』)を発表しているので、こちらもいずれご紹介できれば、と考えております(さらにもう1冊書いている最中、との噂も)。

 

ちなみに、扶桑社ロマンスは今月いっかいお休みをはさみまして、9月28日発売(いつもより早めですのでご注意ください)でノーラ・ロバーツの最新ロマンティック・サスペンス『Come Sundown』を発売いたします。

邦題は、『夕陽に染まるキス』(上・下)ときまりました。

ノーラ・ロバーツらしい、圧巻のサスペンスにしあがっております。こちらもお楽しみに!(編集J)

 

2017年9月 5日 21:07 | | コメント(1)

いつもいつも更新が遅くて申し訳ありません・・・。

今月発売のナリーニ・シン、〈サイ=チェンジリング〉シリーズ第13弾 『冬の盾と陽光の乙女』(上・下)、もう読んでいただけたでしょうか?

 

ナリーニ13上下ブログ.jpg

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あらすじはこんな感じです。

 

 〈アロー部隊〉に所属する瞬間移動者(テレポーター)のヴァシックは、暗殺者としての過酷な任務を果たすなか、いつしか死の安らぎを望むようになっていた。そんな彼に、実験のため集められた共感能力者(エンパス)たちの護衛という新たな任務が与えられる。ヴァシックが担当することになったアイビーは、能力の高まりのせいで再度の条件づけを経験しながらも自我を保ってみせた強い女性だった。その輝きに触れて、彼の凍てついた心は溶け始める。

〈サイネット〉をむしばみ壊滅的な被害を引き起こす感染。それを食いとめる鍵が、共感能力者たちの封じ込められていた能力にあることが改めて確認され、〈アロー部隊〉のメンバーとEサイたちは、感染の影響で生じる大規模な集団発症事件と〈サイネット〉崩壊の危機に力を合わせて立ち向かう。命を懸けた作戦のなかで、ヴァシックとアイビーはその精神的な絆をしだいに深めてゆくが、一方でアイビーはヴァシックの身体に生命に関わる問題が潜んでいることを知る......巻末には特別短編を収録!

 

今回の主役は、最近登場機会が増えて、ヒーロー昇格の予兆をなんとなく漂わせていた(笑)ヴァシック。

彼は暗殺集団〈アロー〉の戦士であり、もともとはミン・ルボンの私兵のような位置づけにありましたが、ケイレブ・クライチェックがサイ社会の実権を握ってからは、ケイレブの指揮のもと親友のエイデンたちとともにサイネット崩壊現象の最前線に立って、身体を張って戦っています。

一方、彼は手に最新鋭の籠手状コンピュートロニック装置を装着しているのですが、これが彼の脳や神経と直結されているにもかかわらず機能不全を起こしているせいで、そのまま放置すれば命を落とすことになるとの恐ろしい宣告を受けています。

もともと彼は命の危険を承知でこの実験的装置のテスターを引き受けており、その意味ではいわゆる「デス・ウィッシュ(死にたがり)」として描かれています。過酷な任務の繰り返しのなかで心をすり減らし、意識下ではいつ死んでもいいと本気で思っているんですね。

この「死」に引き寄せられた「冬の霜」のような目をした男に、生きる意思と未来への希望をもう一度与え、諦念にとらわれた捨て鉢な生き方を変えさせる......それが、本作で登場する「陽の光」のように暖かな心をもつヒロイン、共感能力者アイビーの役割、というわけです。

 

物語の外見上は、ヴァシックが特命を受けてアイビーを警護するという、「男が女を守る」ロマサス系の王道パターンをとりつつ、実際には、闇にとらわれたヒーローを陽のヒロインが癒やすという、いわゆる「トーチャード・ヒーローもの」の変奏にもなっている点が本作のキモではないかと。

 

実際、お姫様のように「命のタイムリミット」を抱えているのは、今回ヒロインではなくてヒーローの側です。また、ヴァシックが幼年期に経験した凄惨な訓練の描写にはたっぷり筆が割かれる一方で、アイビーの方は後半に進むにしたがって自らの強大な能力に目覚め、常に前向きにヒーローを導き、母性的ともいえる愛の力で包み込み、ゆっくりと癒やしてゆきます。

その意味で、これまで「圧倒的に強い男が壊れかけの女性を救う」という定式をとることが多かった〈サイ=チェンジリング〉シリーズにおいて、本作はその「裏パターン」を志向しているといっていいかもしれません。

「騎士とお姫様」パターンの究極形ともいえるケイレブとサハラの物語(『黒曜石の心と真夜中の瞳』)の次作に、同じサイどうしのカップルを主役に当てつつも、太陽のような女性が影に生きる男性を救済してみせる物語をもってくるというのは、いかにもナリーニ・シンらしい。とある作品を書いている際に出てきた別のアイディアを次作で模索するというのは、これまでも彼女が何度もとってきた手法だからです。

また本作は、ヴァシックとエイデンという、親友どうしの真実の絆を描く「バディもの」としても機能しています。これまで出てきた、チェンジリングのアルファどうしのライヴァル関係や、「ゴースト」三人組の緩やかな仲間意識もとても魅力的でしたが、幼い頃から支え合ってきた二人の友情というのは、飛び抜けてきわめつきに尊いもんです。

あと、前作で結ばれたケイレブとサハラのその後の様子(ほとんどバカップル)も堪能できます。ほんとケイレブってのは、いろんな意味でいいキャラしてますね(笑)。

物語としても、サイネット崩壊現象がカタストロフィ寸前の状況に突入すると同時に、「どうすればサイネットは救われるのか」という究極の命題にもある程度の答えが見えてきて、いよいよ終幕、という切迫感がみなぎってきました。

 

ラブシーンについていえば、前作では地上最強の念動力者が興奮するたびに地割れや地殻変動を引き起こしてなかば笑わせにかかっていましたが、本作のヒーローはテレポーターなので、興奮しすぎて我を忘れると、ついつい馴染みの場所に転々とテレポートしてしまうという(笑)。

「やだお尻冷たい」「今度は俺が下になろう」みたいなことをそこそこ大真面目にやってて、結構受けます。

カバーでヒロイン(ちゃんと瞳に金色の輪っかを入れてあるんですよ)の両サイドに、雪景色の林地と星空の下に広がる砂漠を入れてあるのは、そのへんから来ております。

でも、この「テレポーター」という設定自体、ヴァシックのよるべなさというか、どこにもとどまれる場所がない彼の内面と深くつながっていて、その「碇」を下ろす場所となるのがアイビーってことなんでしょうから、なかなかよくできているなあ、と相変わらず感心させられる次第。

 

最後に個人的なおすすめとしては、上巻314頁あたりのヴァシックにぜひご注目ください。強もてのくせしてなんなんですかこの中学生男子みたいなうぶな可愛さは!ふう......もう、こたえられません!

 

ちなみに次作の『Shards of Hope』はエイデンの物語。その次の『Allegiance of Honor』でいよいよシリーズも一区切りとなります。

お恥ずかしながら、13巻ともなると、さすがに近年は結構ぎりぎりの採算となっておりまして、会社に脅かされながらも「熱いファンの皆さんが待っているんです」と説得して、なんとかシリーズを続けているというのが実情でございます。皆様に置かれましては、ぜひとも「買って」応援していただければ、こんなに嬉しいことはございません。

あと一息です。ゴールを目指して、みんなで力をあわせて頑張ってまいりましょう!(編集J)

 

2017年7月29日 19:34 | | コメント(2)

続きまして、今月発売されました新刊、ミア・シェリダン『世界で一番美しい声』のご紹介です。

日本では初紹介となる作家さん。セルフ・パブリッシングで人気が出て、商業出版に進出してからもなお、たいへんな勢いを維持している人です。

本作は、アメリカのAmazonの読者レビューで、2017年5月の時点で3200を超え、しかもほとんどのレビューは満点の5つ星をつけ、平均4.8と大絶賛をうけています。

3200っすよ、3200。

日本でも、よほど期待度が高かったのか、発売3日の売上初速はすごい伸びを示しまして、「ああ、みなさん発刊を本当に心待ちにしてくださっていたんだなあ」と感慨しきり。

さらには、すでに国内のAmazonでも、弊社としては珍しく8つもレビューがついていて、そのうち7つが5つ星、1つが4つ星。いずれもみなさん絶賛してくださっていて、じつにありがたいかぎりです。

「間違いなく、今年のロマンス本のベストの一つ」との声もあります。正直、もっと言って、言って、あちこちで言いまわってほしいところです(笑)。その一つ一つの声が、次のミア・シェリダン作品を出す大きな力となりますので・・・。

 

世界で一番美しい声 ブログ画像.jpg

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あらすじはこんな感じです。

 

ブリー・プレスコットは、父親と自分を襲った恐ろしい事件のせいで心に深く傷を負い、逃げるように故郷を離れてメイン州にある湖畔の町ペリオンへとやってきた。

新しい環境で人生をたてなおそうとするブリーを、周囲の人びとは温かく支える。

そんななかブリーは町で偶然、アーチャーとい う若者に出逢う。

彼もまた、過去の事件でひどい傷を負い、苦しみを抱えて孤独に生きてきた人間だった。

二人は友情をはぐくみ、やがて惹かれあうが――甘美なラブシーンに彩られた純愛ロマンスの傑作登場!

 

カバーまわりでは一応伏せているのですが(途中までブリーはそのことを知らないので)、本作のヒーロー像は、「トーチャード・ヒーロー(傷ついたヒーロー)もの」の、とある典型を示しています。

日本語版のタイトルに採用した「世界で一番美しい声」というフレーズも、オビで用いた「あなたのくれた静寂」というフレーズも、じつは本書のなかで実際に登場する言い回しです。

まあ、別に隠すほどの設定でもないとはいえ、ぎりぎりのところを攻めてみたわけです。

弊社では昔、ローラ・キンセイル『嵐に舞う花びら(上・下)』や、ジュディス・ジェイムズ『折れた翼』といった、トーチャード・ヒーローものの傑作を出版したこともあるので、路線としてもやってみたかった本でした。

 

とにかく、美しく、そして、爽やかに胸に迫る物語です。

主人公のふたりはそれぞれ、愛する家族の死に関わる、重く辛い過去を抱えています。

メイン州の湖のほとりにあるスモールタウン、ペリオン。

疲れ果て、そこに逃げこんできたヒロインと、その街で世捨て人同然に生きるヒーロー。

世界の片隅で、二人に運命的な出逢いが訪れます。

自らに自信がもてず、相手への想いに応えられないのではないかと、つねに不安にとらわれる二人が、不器用に、お互いを思いやりながら、近づき、やがて愛を深めていく過程は、真に感動的です。

とくに、世間から独り離れて生きてきたせいで子供のまま大きくなったかのような、純粋無垢なアーチャーのキャラクターは、ロマンスの文脈では珍しく、新鮮な魅力を放っています。

そして何より、平明でリリカルな散文詩のような文章が胸にしみる。すべては、原文の繊細な語感を丁寧に日本語へと落とし込んでくれた訳者さんのおかげといえます。

 

ラブシーンの、ひめやかで叙情的な美しさも、本書の大きな魅力のひとつでしょう。

お話の展開上、前半はブリーがアーチャーをリードする流れが続くので、無垢なヒーローにいちから愛の手ほどきをするヒロイン、という極上の設定が楽しめます。

そのうち、アーチャーは大変物覚えが良いということで(笑)、後半では攻守交代したセンシュアルなシーンが頻発します。たとえ激しくとも決して品位を喪わない、ピクチャレスクなラブシーンをご堪能ください。

 

本作を含む、12星座をモチーフとした〈サイン・オブ・ラヴ〉シリーズには、結構他にも作品がありますので、この流れで別のミア・シェリダン作品もご紹介していければうれしいかぎりです。ぜひ皆様も仲間内のロマンス好きにお勧めくださいね!(編集J)

 

 

 

 

2017年6月23日 16:16 | | コメント(3)

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