今月のもう一点は、RITA賞の新人賞にノミネートされた気鋭の作家さん、キンバリー・キリオンの第一作『たったひとつの願い』です。


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あらすじはこんな感じです。

15世紀、エドワード王の治世。
リズベスは死刑執行人を父に持ち、ロンドン塔で治療師として囚人の敬愛を集める美貌の女性。
国王暗殺計画の証拠を手に入れた彼女は首謀者一味に狙われ、成り行きで、間諜として投獄されていたスコットランドの戦士ブロックとともにロンドン塔を脱出することに。
再三命を狙われながらも、ふたりは夫婦と偽ってスコットランドの地をめざすが、ブロックの野性的な魅力にリズベスは抗うことができず……。
息詰まるスリルと甘美な官能に彩られた鮮烈なるデビュー作!

全編に漂う官能的な雰囲気が、まず最大の魅力。
それが中世ものらしい波乱万丈の展開と、濃厚なキャラ立てとうまく噛み合い、必然性をもって描かれているのが、新人らしからぬこの作家さんの力量ではないでしょうか。

くせのある脇役たちも物語を盛り立てます。
ヒロインの父親に、国家の処刑執行人(日本で言うと、『子連れ狼』の拝一刀とか、山田浅右衛門のような役職ですね)という特殊な地位を当てて、ヒロインの出自や父との関係性に陰影をもたせているのも面白いところ。終盤、このお父さんがいい仕事をするんですよ……。
一方、ヒーロー、ブロックの母親がまたびっくりするようなキャラクターでして、そのへん読んでのお楽しみということで……。

物語の時代設定が15世紀後半、薔薇戦争の頃というのも本作の見どころです。
本書で重要な役割を担うグロスター公リチャードは、のちのリチャード三世。
シェイクスピアが『リチャード三世』で、二人の幼い甥をロンドン塔に閉じ込め死に至らしめた悪漢として描き出した人物です。
一方で、リチャード三世が実は、悪の権化などではなく、二人の王子の死にも責任のない善人と考える人々もイギリスには結構いて(リカーディアンと呼ばれる)、そのへんを扱った作品ではジョセフィン・テイの推理小説『時の娘』あたりが有名ですね。
弊社のミステリーで出ていたエリザベス・ピーターズの『リチャード三世「殺人」事件』も、リカーディアンの生態を描き出して出色でした。

本書では、うまく史実を織り込みながら、グロスター公の立ち位置や、前王エドワードの死の真相、ロンドン塔の子供の幽霊などに、独自の見解を加えています。

ロマンスとしても、歴史物としても、お腹いっぱいになるすぐれもの。
本当に面白いので、ぜひお試しくださいね。(編集J)

2011年9月15日 18:57

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