2016年10月アーカイブ

続いて、今月の新刊のご紹介をば。

他社さんでも続々紹介の続いている人気作家カレン・ラニー(本当の発音はカレン・レイニーだそうですが、今作に関しては他社さんの先例に従いました。ご理解のほどを)の、扶桑社初登場となる『伯爵とキスのつづきを』をご紹介します。

 

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 あらすじはこんな感じです。

 

ロンドンの貴族に稀覯本を売りに来ていたマーガレットは、訪れた屋敷の仮面舞踏会でモントレイン伯爵マイケルと出会う。

お互い名前も知らないまま月の下でダンスする二人。キスする直前でマーガレットは逃げ出すが、マイケルは彼女の面影がどうしても忘れられない。

やがて再会の機会を得たマイケルは、彼女にただ一度だけのキスを要求する。しかし強く惹かれ合う二人がキスだけで終われるはずもなく......。

繊細な心理描写と美しく官能的なラブシーン。大人の恋愛を描く極上のリージェンシー!

 

ぶっちゃけ、傑作だと思います。

 

翻訳者さんは、昔からこの小説が本当に好きで好きでたまらなかったそうで、自分にとっては宝物のような作品で、何度も何度も読み返してきた「とっておき」だとのお話でした。

 

ゲラを読んだ上司の出版局長(女性)も、「なにこれ、すごく面白いんだけど」と一言。大変めずらしいことに(笑)、本が出来たら持って帰ってもう一回読むと申しておりました。

 

お話自体は実にオーソドックスなヒストリカルです。そこにエキセントリックなところは何もない。

だから、あらすじを書いてみても、どこがどう本作は素晴らしいのかという大切な部分を、うまく皆様にお伝えできていないもどかしさがあります。

でも実際読んでいただければ、すぐわかります。ああ、これは、ものが違うな、と。

 

世間的にはカレン・ラニーはスコティッシュものの作家だと思われているかもしれませんが、そこは先入観を持たずに、ぜひ本書を手にとっていただきたい。

なぜなら本書には、読者がヒストリカルに求めるすべてが、ぎゅっと凝縮された形で詰まっているからです。

 

とにかく、まず文章が美しい。ヒストリカルには珍しい、磨き抜かれた短文を積み重ねてゆく、詩的な文体。会話の応酬もしっかり練り込まれ、無駄なく切り詰められています。

それから、ヒロインとヒーローの二人――マーガレットとマイケルが、じつに愛おしい。

本書の主人公は双方、最近のロマンスでは珍しいほどに、奇矯なところのない、ごくふつうで奥ゆかしく、ただひたすら真摯に生きる地に足のついた人物です。そんな、知的で良識的で我慢強く一途な二人の、不器用でせつない大人の恋模様が、ベテラン作家の手慣れた筆致でしっとりと展開するわけです。

しかも、本作ではキャラクターが必要最小限まで絞り込まれ、実際、多くのシーンがマーガレットとマイケルのやりとりだけで成立しています。だからこそ、ふたりが近づき、結ばれ、それでも離れようと決意し、なお離れがたく、しだいに胸を焦がしてゆく過程が、どこまでも生き生きと伝わってきて、読む私たちの胸を切々と打つのです。

後半で展開される濃密でピクチャレスクなラブ・シーンの数々(いちおう、表紙にはメイン・アイテムのリボンをちゃんと入れてみました!)も、エロティックでありながら実にセンシティブで、読んでいると温かい情感で心が満たされていくかのようです。

若干、終盤の締めに関しては、甘いというか足早なところもありますが、二人が巻き込まれる事件の首謀者像の造形もよくできていると感心しました。

いわば、『伯爵とキスのつづきを』は「ロマンス小説そのもの」――どこまでも無駄を削ぎ落とし、リージェンシー・ロマンスのエッセンスだけで構成したうえで、さらにすみずみまでじっくり磨き抜いたような、まさに王道をゆく逸品なのです(いわゆる「劇的な部分」は少ないかもしれませんが、そこを売りにしないこぢんまりしたつくり自体が、リージェンシー・ロマンスの本道ともいえるでしょう)。

 

最近、いいヒストリカルにめぐりあっていないとお嘆きの皆様、ぜひ本書を読んでその渇を癒やしていただければ、と願ってやみません。

出来栄えはこちらが保証いたします。ぜひご一読のほどを!(編集J)

2016年10月22日 05:37 | | コメント(0)

またまた更新を滞ってしまって申し訳ありません。

まず先月発売したリサ・マリー・ライス『真夜中の秘密』のご紹介から!

 

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あらすじはこんな感じです。

 

 元SEALのジョーは任務中の大怪我から回復し、意気軒高。

軍隊仲間たちが待つASI社で働ける日を待ち焦がれていた。

一方、彼の隣人のイザベルは大きなトラウマを抱えたままのようだ。

何が原因なのかは謎だ。

家の修理のお礼に料理をそっと届けてくれる彼女への想いを募らせながら、

ジョーはただ彼女を見守っていた。

ところがある日、ジョーの元に「イザベルを守れ!」と書かれた謎のメールが届く。

メールの主は、敵か味方か、そもそも彼女は何者なのか?

大人気シリーズ新章もいよいよ佳境に!

 

いったん整理しますと、〈真夜中〉シリーズは、まず『真夜中の男』、『真夜中の誘惑』、『真夜中の天使』という三部作がありまして、昨年お届けした『真夜中の復讐』、『真夜中の約束』、そして本作とつづくわけです。

初期三部作は、〈ミッドナイト・マン〉ジョン・ハンティントンが、命を狙われたインテリア・デザイナー、スザンヌをガードマンとして守り抜き、やがて恋に落ちる『真夜中の男』から始まります(当時インターネットでは、ジョンがとある理由で壁のレンガを握りつぶす衝撃シーンから広く「レンガ社長」と呼称されており、本当に読者の皆様から愛されているなあと嬉しく思ったものでした......)。

彼の友人で刑事のバドが主役を張る『真夜中の誘惑』が第二作。彼女が素晴らしすぎてすぐに果ててしまうので、そうならないようにポーの『大鴉』と野球の散文詩を、行為のあいだじゅうヒーローが暗唱し続けるという前代未聞の長大なラブシーンは、猛烈にエロティックでありながら、ユーモアもたっぷり。LMR(リサ・マリー・ライス)史上最高のラブシーンだと、編集者は今も信じてやみません。

第三作『真夜中の天使』は、ジョンの盟友コワルスキが、盲目の歌姫アレグラのボディガードとして戦う物語。まさに「美女と野獣」の古典的設定に、「盲目」というファクターを絡めたアイディアは秀逸で、ヒロインがついに光を取り戻そうというなかで、自分の面相が受け入れられるか不安にかられるこわもてのコワルスキ、というラストのシチュエイションも、じつにロマンティックでした。

 

で、このジョンとコワルスキの会社が順調に軌道にのって、部下たちも増えた現状をふまえて展開しているのが、昨年新たに開幕した新章というわけです。カップルも部下の世代へと移行しています。

 

前の三部作はエローラ・ブックスというセンシュアルなロマンスをメインにした電子専門の出版社から発売されていましたが、『真夜中の復讐』からは版元をハーレクイン系列の電子出版社カリーナ・プレスへと変えています。他社さんの別シリーズではエイヴォンを版元にしていたので、この版元選択にはちょっと驚きましたが、結果的には引き続き弊社から新章をご紹介できるかたちになって、本当に良かったと思っております。

ちなみに余談ですが、アメリカでは、Amazonの読み放題スタートの煽りを受け、多くの電子出版社が大変な損失をこうむり、会社をおおいに傾かせました(ちゃんとお金を出して買っていた多くのロマンス・ファンが、みなさん定額に移行して、出版社の収入が激減してしまった)。エローラ・ブックスも同様で、編集者やデザイナーを放出し会社規模を縮小せざるを得ない状況に陥り、どうやら噂にきくところでは今後の展開もなかなかに厳しいようです(本当に残念な話です)。

おそらく、そういうこともあっての移籍なんでしょうね・・・なんかせつないですが。

 

さて新章に関してはみなさんご存じのとおり、『真夜中の復讐』と『真夜中の約束』の二作は、登場人物(ジャッコとメタル)がほぼセットで扱われているうえラストでつながっているので、明らかにひとかたまりのお話と考えてよいでしょう。

今作『真夜中の秘密』では、心機一転、新たなる展開を迎えます。

 

ヒロイン、イザベルは現代のケネディ家と称される名家の令嬢(このパターンはLMRでは初めて)でありながら、一族郎党数千人皆殺しという恐ろしいテロの悪夢を経て、今は傷ついた心と身体を抱えたまま、ようやっとその日の暮らしをやり過ごしています。彼女の隣人であるジョーも、戦地で簡易爆弾にやられて九死に一生を得たものの、大怪我を負ってのリハビリには時間がかかり、なんとかようやくもうすぐ社会復帰できそうといった状況。

この二人が、お互いを求め、癒やしを得ていく過程が本書の読みどころとなっています。

正直をいえば、LMRには今までにも似たプロットをとるスタンドアローンの長編があったかとは思いますが、キャラが変わればずいぶんお話の雰囲気も変わりますし、何より、ぼろぼろの「要介護ヒロイン」状態から脱したイザベルの、目の覚めるような「闘うヒロイン」への変貌ぶりは驚くばかりです。おそらくLMR史上、もっとも振り幅の大きいヒロインといえるのではないでしょうか(笑)。

一方でサスペンス小説としては、本書だけでは大統領候補爆殺テロの全貌はいまだ明らかにならず、ラストシーンで次回に続く、という構成。主人公カップルも、ちょっと意外な二人が務めることになっております。

というわけで、なるべく早めに続編をお届けしたいということで、『真夜中の炎(仮)』は12月2日に発売の予定でございます。こちらもぜひお楽しみに。(編集J)

2016年10月22日 02:25 | | コメント(2)

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