続いて、今月の新刊のご紹介をば。

他社さんでも続々紹介の続いている人気作家カレン・ラニー(本当の発音はカレン・レイニーだそうですが、今作に関しては他社さんの先例に従いました。ご理解のほどを)の、扶桑社初登場となる『伯爵とキスのつづきを』をご紹介します。

 

伯爵とキスのつづきをblog画像.jpg

 ■オンライン書店で購入する
amazonセブンネットショッピング楽天ブックサービスhonto

 

 あらすじはこんな感じです。

 

ロンドンの貴族に稀覯本を売りに来ていたマーガレットは、訪れた屋敷の仮面舞踏会でモントレイン伯爵マイケルと出会う。

お互い名前も知らないまま月の下でダンスする二人。キスする直前でマーガレットは逃げ出すが、マイケルは彼女の面影がどうしても忘れられない。

やがて再会の機会を得たマイケルは、彼女にただ一度だけのキスを要求する。しかし強く惹かれ合う二人がキスだけで終われるはずもなく......。

繊細な心理描写と美しく官能的なラブシーン。大人の恋愛を描く極上のリージェンシー!

 

ぶっちゃけ、傑作だと思います。

 

翻訳者さんは、昔からこの小説が本当に好きで好きでたまらなかったそうで、自分にとっては宝物のような作品で、何度も何度も読み返してきた「とっておき」だとのお話でした。

 

ゲラを読んだ上司の出版局長(女性)も、「なにこれ、すごく面白いんだけど」と一言。大変めずらしいことに(笑)、本が出来たら持って帰ってもう一回読むと申しておりました。

 

お話自体は実にオーソドックスなヒストリカルです。そこにエキセントリックなところは何もない。

だから、あらすじを書いてみても、どこがどう本作は素晴らしいのかという大切な部分を、うまく皆様にお伝えできていないもどかしさがあります。

でも実際読んでいただければ、すぐわかります。ああ、これは、ものが違うな、と。

 

世間的にはカレン・ラニーはスコティッシュものの作家だと思われているかもしれませんが、そこは先入観を持たずに、ぜひ本書を手にとっていただきたい。

なぜなら本書には、読者がヒストリカルに求めるすべてが、ぎゅっと凝縮された形で詰まっているからです。

 

とにかく、まず文章が美しい。ヒストリカルには珍しい、磨き抜かれた短文を積み重ねてゆく、詩的な文体。会話の応酬もしっかり練り込まれ、無駄なく切り詰められています。

それから、ヒロインとヒーローの二人――マーガレットとマイケルが、じつに愛おしい。

本書の主人公は双方、最近のロマンスでは珍しいほどに、奇矯なところのない、ごくふつうで奥ゆかしく、ただひたすら真摯に生きる地に足のついた人物です。そんな、知的で良識的で我慢強く一途な二人の、不器用でせつない大人の恋模様が、ベテラン作家の手慣れた筆致でしっとりと展開するわけです。

しかも、本作ではキャラクターが必要最小限まで絞り込まれ、実際、多くのシーンがマーガレットとマイケルのやりとりだけで成立しています。だからこそ、ふたりが近づき、結ばれ、それでも離れようと決意し、なお離れがたく、しだいに胸を焦がしてゆく過程が、どこまでも生き生きと伝わってきて、読む私たちの胸を切々と打つのです。

後半で展開される濃密でピクチャレスクなラブ・シーンの数々(いちおう、表紙にはメイン・アイテムのリボンをちゃんと入れてみました!)も、エロティックでありながら実にセンシティブで、読んでいると温かい情感で心が満たされていくかのようです。

若干、終盤の締めに関しては、甘いというか足早なところもありますが、二人が巻き込まれる事件の首謀者像の造形もよくできていると感心しました。

いわば、『伯爵とキスのつづきを』は「ロマンス小説そのもの」――どこまでも無駄を削ぎ落とし、リージェンシー・ロマンスのエッセンスだけで構成したうえで、さらにすみずみまでじっくり磨き抜いたような、まさに王道をゆく逸品なのです(いわゆる「劇的な部分」は少ないかもしれませんが、そこを売りにしないこぢんまりしたつくり自体が、リージェンシー・ロマンスの本道ともいえるでしょう)。

 

最近、いいヒストリカルにめぐりあっていないとお嘆きの皆様、ぜひ本書を読んでその渇を癒やしていただければ、と願ってやみません。

出来栄えはこちらが保証いたします。ぜひご一読のほどを!(編集J)

2016年10月22日 05:37

コメント(0)

Comment

コメントする

ページの先頭へ