12月2日発売の扶桑社ロマンスは、大変久しぶりのことですが、2冊ございます。
まず一本目は、初紹介作家マリアナ・ザパタ『銀盤より愛をこめて』(高里ひろ訳)。
海外ロマンスではいささか珍しい、「フィギュアスケート・ロマンス」の登場です!

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あらすじはこんな感じです。

子供のころからスケートだけに打ちこんできたジャスミンだったが、たいした成績も残せないまま26歳となり、ペアのパートナーにも捨てられてしまう。
そんなとき、犬猿の仲のスター選手アイヴァンから、1年間限定でペアを組まないかとの申し出を受ける。複雑な思いを抑えてチャンスに飛びついてはみたものの、傲岸なアイヴァンとのあいだには喧嘩がたえない。
だが、彼のスケートに対する強い思いを知って、ジャスミンのなかで何かが芽生え始める......。
スポーツ・ロマンスの第一人者、初紹介!


担当しておいていうのもなんですが、これは本当に掘り出し物、マジで面白いですよ!

マリアナ・ザパタという作家さんは、アメリカ最大のロマンス・サイト「オール・アバウト・ロマンス」(AAR)のロマンス・オールタイム・ベスト100で6位に入っている作家さんで(年度じゃなくて、「オールタイム」ですからね?)、前々から、ご紹介する機会がつくれればいいなと思っていました。

とはいえ、日本ではあまりスポーツ・ロマンスというジャンル自体が盛んとはいえないこと、
その6位に入っている『The Wall of Winnipeg and Me』(2016)が、よりによってアメリカン・フットボールが題材だということ(別に競技に対してはなんの他意もございませんが・・・・あまりに日本の女性読者にとっては縁遠いジャンルかと)、
セルフパブリッシングで出てきた作家さんということもあって、とにかく一冊一冊がどれもべらぼうに長いこと、などなどあって、どうしようかといろいろ悩んでおりました。

ただ、彼女の作品のなかに一冊、フィギュアスケートが題材の作品がありまして。
おお、フィギュアか。
フィギュアなら、他のスポーツよりはロマンティックな感じで、皆さん読んでくださるんじゃないだろうか。
昔からコミックなら、川原泉先生の『銀のロマンティック...わはは』とかあったし、最近は槇村さとる先生の『モーメント』とか小川彌生先生の『銀盤騎士』とか、たくさんフィギュアものの連載もあるし。
あと、自分は若かりし頃、ふとはいった映画館で『冬の恋人たち』ってのを観たことがありまして、これがもうホントにホントに良いフィギュア恋愛映画なんですよ(あんまり観たって人に会ったことがないが)!
そこで、翻訳者の高里さんに読んでもらいましたら、とても面白かったと太鼓判を頂戴しまして、しかもなんとか一巻本におさまりそう。満を持して、冬真っ盛りの12月に発売するに至ったというしだいです。

とにかくヒロインがスポ根!
とにかくヒーローが傲慢! でも純情(笑)!
キャラがもうね、とてつもなく素晴らしいんですよ。
実力はあるのに、結局26になるまで優勝したことのないヒロインのジャスミン。ヒスパニック系の大家族(しかも離婚家庭)に育って、自分だけ金のかかるフィギュアをやらせてもらいながら、大きな成果を今もあげられていない負い目が、彼女にはあります。
ジャスミンにとって、アイヴァン・ルーコフは最大の天敵です。彼は全米選手権にも世界選手権にも勝ちまくり、オリンピックの金メダルまで獲っている正真正銘の大スター。でも会うたびにジャスミンに嫌味を飛ばし、「ミートボール」呼ばわりしてくる、猛烈にいけすかないヤツなのです。
そんな彼が、ペアの相手に突然契約を解消されて失意のどん底にあるジャスミンに、声をかけてきます。一年間限定でペアを組まないか、俺たちなら世界を獲れる、と・・・・。

実際、アイヴァンは、しょっちゅうジャスミンにちょっかいをかけてくるんですが、実はずっと昔からしっかり彼女のことを見てるんですね。彼女だけを見ている、といってもいい。
彼女の才能も、彼女のひたむきさも、彼女の足りないところも、そして彼女の人間的魅力も。

傲岸系ヒーローが、次第に内に秘めた優しさを見せてゆく。その過程を描きだすザパタの手腕は、確かなものです。多少品のないところはありますが、丁々発止とつづく会話のセンスもいかしています(アイヴァン「ぼくは掘り出しものだ」 ジャスミン「すぐ埋めるべきね」......って、おい(笑))。

362頁から始まる、「自分は負け犬だ」と語るジャスミンの苦悩と、それに真摯にこたえるアイヴァンの言葉は、読む者すべての胸を熱く打つことでしょう。
373頁のアイヴァンのセリフは、とくにやばい。ふつうに泣けます(読んだ皆さん、そうでしょう?)。
ここを読むだけでも、本書を手に取った価値はある。そう思います。

あまりにスポ根すぎて、触れられてドキドキなんて次元はとうに超越している二人ですが(なんならリフトから落とされるまである)、むしろ高校生カップルのようなうぶさと一途さ、切れ味抜群のWツンデレぶりが存分に堪能できます。

そのほか、スポーツ界のハラスメントや、SNSの悪質投稿の問題など、現代的視点にも事欠かず、純粋にスポーツ小説としても読みごたえのある内容に仕上がっていると思います。

ロマンス・ファンの皆さんだけでなく、ひろくフィギュアを愛好するファンの方々にもぜひ読んでほしいと思っております。多少マニア目線で見ると妙なところもあるやもしれませんが、そこは広い心でジャスミンとアイヴァンの頑張りを応援してあげてほしいところ。ステイホームのお供に、ぜひご一読ください!(編集J)





2020年12月10日 17:13

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