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戦後史開封[社会・事件]編
戦後史開封
[社会・事件]編

 ■産経新聞「戦後史開封」取材班著
 ■文庫判
 ■定価/700円(税込)
 ■1999年12月16日
 ■ISBN 4-594-02819-5
 ジャンル:扶桑社日本文庫  

産経新聞好評連載「戦後史開封シリーズ」完結編!

「昭和23年〜●スパイ事件」から抜粋

◎二重スパイ獲得に暗躍した米ソ

 昭和二十四年十二月のその日のことを、元陸軍大佐、花田正大郎(仮名・故人)の三女(56)ははっきりと覚えている。「小学校から帰ると、消息不明だった父が、ロシア人の着るモコモコの外套を着てGHQ(連合国軍総司令部)のジープで突然帰宅していたのです」
 東京都杉並区の自宅で、シベリア抑留から帰ってきた父と、母、子供たちの平和な生活が戻った。だが、それもつかの間だった。
 半年近くたった二十五年五月、日系二世の男が花田家を訪れる。三女はふり返る。「父は『ちょっと話しに行って来る』と言っていっしょに出た。二カ月近くも帰ってこないので大騒ぎになった。目隠しされグルグルと都内を回されどこかに連れていかれたとかで、帰ってきたときは憔悴していた。『シベリアでの行動を書いた供述書は厚さ三十センチほどにもなった』と言っていた。後に監禁場所が岩崎邸(東京・湯島のキャノン機関本部)だとわかった」
 ところが、こんどはソ連人らしい男が自宅に現れる。
 「梅雨時で雨がざんざん降る日の夜だった。玄関のブザーが鳴ったので出ると、目の前にレインコートを着た赤ら顔でザンバラ髪の大男が、全身ぐっしょりぬれて立っていた。私は悲鳴をあげた。カタコトの日本語で『静かにしろ。花田はいるか』と言うや、土足のまま上がってきた」
 ここからは、二女(64)の記憶になる。
 「母が『土足はやめてください』と言っても、コートのポケットから拳銃をちらつかせながら『花田を出せ』『どこに行っているのか』しか言わない。家中を捜していないとわかると、『来たことはだれにも言うな』と言って帰った」
 花田はシベリアから復員した京都・舞鶴港でGHQの防諜部隊であるCICにソ連での行動を聴取された。
 生前花田は「(収容所で)裸にされ後ろから拳銃を突き付けられ、全員の復員をエサにソ連共産党入党と日本での協力を強要され、部下たちのためにやむを得ず空返事した」と、家族に語っている。
 GHQ情報収集と日本の共産化を狙ったソ連に対し、日本人スパイを“消毒”して自国のために“転用”しようとした米国の執念。それが、こんどはソ連の焦りを呼んだ。



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