読めばハマる!扶桑社ミステリー&ロマンス 入門ガイド 扶桑社海外文庫座談会

好評「扶桑社ミステリー&ロマンス入門ガイド」の第二回連載を公開します。
第一回を読みたい方はこちらから。これさえ読めば、あなたも扶桑社海外文庫のトリコに…!?

 

 

00年代前半 「扶桑社ミステリー」と「扶桑社ロマンス」の両輪時代

冨田 00年以降の扶桑社海外文庫においては、95年に創刊された扶桑社ロマンスが、扶桑社ミステリーと並んで、人気を博すようになってきます。ロマンス文庫創刊前からダニエル・スティールシャーリー・コンランといったおもに女性読者向けの小説を出版していましたが、扶桑社ロマンスになってからは、バーバラ・テイラー・ブラッドフォードノーラ・ロバーツなどが人気を集めました。特に、ノーラ・ロバーツは、創刊から今日まで、レーベルの看板作家になっています。

吉田 最初の頃の売り文句として、ノーラ・ロバーツはミステリーとロマンスの融合なんて言い方をされていましたね。

冨田 日本では実際に、ミステリーと銘打っている出版社もありました。

吉田 彼女はサスペンス要素の強いロマンス、いわゆる「ロマンティック・サスペンス」というジャンルの開拓者だったんですね。当時うちが出していたダニエル・スティールやバーバラ・テイラー・ブラッドフォードは、女性の一代記ものや、夫婦ものといった、旧来の王道ウィメンズ・フィクションが中心でした。そのなかで、ハーレクイン出身の彼女の加入はラインアップを豊かにしてくれたと思います。その後、ノーラ・ロバーツは名実ともに世界ナンバーワンのロマンス作家へと羽ばたいてゆきます。

しかも、非常に多作な作家で、扶桑社ロマンスでは今でも毎年4点ほどの新作を刊行しています。ここまで多作で、人気と実力を兼ね備えた作家は、なかなかいません。なんせ、書き足りないからという理由でハーレクインを出て、しかも別のペンネームまで立てた人ですから。

井野 一方、扶桑社ミステリーはどうだったんでしょうか?

吉田 扶桑社ミステリーに本格的に、ノワール紹介の流れが訪れるのは00年ごろからですか?

冨田 いや、その流れは、早いうちからありました。当時の編集者だったKさんがこのジャンルに目が利いたからで、91年にジム・トンプスングリフターズ』を映画化に合わせて刊行していますし、それ以前にはチャールズ・ウィルフォードマイアミ・ポリス』もあります。

グリフターズ
グリフターズ
マイアミ・ポリス
マイアミ・ポリス

井野 ジム・トンプスンの刊行は扶桑社が最初だったんですか?

冨田 90年に河出文庫から『内なる殺人者』(注・のち扶桑社海外文庫で『おれの中の殺し屋』として改題・改訳のうえ出版)が出ていました。ただ、当時は「ノワール」という言葉は使われていなかったと思います。

おれの中の殺し屋
おれの中の殺し屋

    日本において、ノワール作家としてのジム・トンプスンを評価したのは「ミステリマガジン」で、1993年と96年のノワール特集から『ポップ1280』連載にいたります。わたしはそれを単行本化しただけで、それが一定の評価を得たので、『残酷な夜』『失われた男』などの作品を刊行していくことになります。

ポップ1280
ポップ1280
残酷な夜
残酷な夜
失われた男
失われた男

    ただ、わたしやKさんは、根がSFなので、ノワールを刊行する一方で、『魔法の猫』のようなアンソロジーも出していました。

そして、90年代後半からは、スティーヴン・ハンターの刊行が始まります。

魔法の猫
魔法の猫

吉田 スティーヴン・ハンターは、どういう経緯で発売したんですか?

冨田 当時ハンター作品を出版していたのは、新潮文庫でしたが、そこで権利を取りながら刊行されていない作品が一作ある状態で、次に書かれた最新作を扶桑社が取得したと聞いています。それが『ダーティホワイトボーイズ』で、従来のハンターの作風とは異なるクライム・ノヴェルで、扶桑社の特色にあっていると考えられたのでしょう。当時はマイクル・コナリージャネット・イヴァノヴィッチといった注目の作家がおり、それらとならぶ顔としてラインアップに入れられたようです。その後、この作品がシリーズを形成することがわかり、扶桑社でそれを追って出版していくことになるのですが、当時、新潮文庫で刊行されずに残っていた作品というのが、シリーズ第一作の『極大射程』でした。

井野 スティーヴン・ハンターについては、13年に『極大射程』を扶桑社ミステリーで復刊し、最新作『第三の銃弾』も同年刊行しました。両作は密接な関連があるので、ぜひ併せてお読みいただければと思います。

ダーティホワイトボーイズ
ダーティホワイトボーイズ
極大射程
極大射程
第三の銃弾
第三の銃弾

2014年4月の扶桑社ミステリー&ロマンスの新刊

  • 大平原の嵐のように

    大平原の嵐のように

    お尋ね者の烙印を押されて逃亡生活を送る医師のジェスは、目前で撃たれた賞金稼ぎを介抱するが、黒装束に隠されていたのは豊満な女性の身体だった。波瀾万丈のヒストリカル !

  • 切り札は愛の言葉

    切り札は愛の言葉

    侯爵家次男でギャンブラーのジャレットは、経営を任された祖母のビール製造会社で、地方の醸造家アナベルから提携を持ちかけられる。不道徳極まる、その条件とは?

ページの先頭へ