扶桑社社員が薦める 扶桑社海外文庫読むなら、まずコレ!

扶桑社海外文庫を初めて読むあなたに、「まずコレ!」というタイトルを勝手に推薦。編集者から販売担当、宣伝マンまで、一冊の本に込められた扶桑社社員の想いがここに!
連載第1回目はこちら

  • 〈シグマフォース〉シリーズに勝るとも劣らない傑作

 

 

 

 

ジェームズ・ロリンズといえば、〈シグマフォース〉シリーズです。2004年に最初の作品 "Sandstorm"(邦題『ウバールの悪魔』)が発表されて以来、シリーズはすでに10作を数えます(邦訳はいまのところ7作)。2010年には、大物映画プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスがシリーズの映画化権を取得していて、映画化の作業も進行している様子(ラウレンティスは2010年に亡くなっていますが)。そういうわけで、このシリーズがロリンズの主戦場であるのは間違いないところです。

しかし、扶桑社海外文庫で出したのは、残念ながらこの大ヒットシリーズではなく、2003年に発表された『アイス・ハント』でした。いや、「残念ながら」というのは、実のところまったくの嘘で、個人的には、この作品、〈シグマフォース〉シリーズに勝るとも劣らない小説だと思っています。

〈シグマフォース〉シリーズの主人公は、いわば、最新の科学的知識を身につけたジェームズ・ボンドたちです。米国防総省の秘密組織〈シグマフォース〉のメンバーは、元特殊部隊の兵士であり、それぞれ物理学、生理学、分子生物学等の最先端の知識にも通暁している。そういう意味では、イアン・フレミングが生んだヒーローよりは、クライブ・カッスラーの生んだヒーロー、ダーク・ピットと、架空の組織〈NUMA〉の名前を挙げるべきかもしれません。

ちなみに、ロリンズはカッスラーの大ファンだそうで、先日来日したカッスラー御大曰く、「ジェームズは私の大ファンなんだ。最初に小説を読んだ感想を伝えたときなんか、奴さん、感激して涙を流さんばかりだったよ。フッフッフ」(大意)とのこと。

『アイス・ハント』の登場人物たちは、そんな〈シグマフォース〉の、天才的で、国家に献身的なヒーローたちに比べると、ずいぶんと人間臭い。主人公のマットこそ「元グリーンベレー」といういかにもな設定ではあるものの、それにしたところで、「多少は腕が立つ」以上の意味はないように思えるし、そのマットを含め多くの登場人物たちは、北限の地で起こりつつある地球規模の災厄を前にすればほとんど「個人的」とでも呼べそうな問題に囚われ、抜き差しならない人生に倦んでいたりする。この人間臭さが『アイス・ハント』の魅力の一端をなしています。もちろん、本作の魅力はそれに尽きるものではありません。

2015年には、この『アイス・ハント』の前年に発表された『アマゾニア』も扶桑社海外文庫から刊行予定です。ご期待ください!

書籍第2編集部 生田敦

 

※連載第5回 「『装飾庭園殺人事件』異色の経歴の著者が描く、一風変わったミステリー」

※紹介情報、紹介者肩書等は公開時(2014年9月)のものです。

ページの先頭へ