薔薇の木に薔薇の花咲く 1

著者名

いしかわじゅん

判型

文庫判

定価

628円(本体571円+税)

発売日

2000/04/27

ISBN

9784594028992

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この本の内容

単行本は、まず一巻目が、91年の12月に出た。
 双葉杜の昔馴染みの編集者が、うちで出そうといってくれていた。週刊宝石の担当者は、うちでぜひといってくれていた。版元は、光文社だ。本は連載したところで出すのが一番いいが、光文杜の問題点は、あまり漫画を出版していないことだ。
 漫画の単行本が売れるには、いくつか条件がある。版元が漫画の単行本をたくさん定期的に出していることも、大きい条件のひとつだ。光文社は、不定期に少ししか出していない。これは、売れにくい。ただでさえ、ぼくはベストセラー作家ではない。たまに売れることもあるが、売れないこともある。少しでも環境のいいところで出したい気持ちはある。
 結局、担当者の熱意に押されて、光文社で、まず第一巻を出した。
 ところが、これが売れないのだ。というよりも、第一、書店で見かけないのだ。
 たくさん定期的に出している出版社の本がなぜ売れやすいのかというと、それは、棚が確保されているからだ。書店の棚に専用の場所があり、客は、目当ての出版社をたやすく見つけることができる。これは、理想的な環境だ。光文社には、残念ながら、それがまだない。かつて、少年誌の王者『少年』を出していた光文社だが、その後、漫画の歴史は、ぷっつり切れたままなのだ。
 ぼくは、ちょっと悩んで、版元を変えることにした。こういうことは初めてなのだが、この鉱脈をぜひ、多くの人に見てほしかったのだ。ひとりでも多くの読者がほしかったのだ。
 とりあえず、しばらく塩漬けにすることにした。今出したばっかりで、もうほかの出版社から同じものを出すのもなんだし、かといって、2巻目から続きをそのまま出すのも妙なもんだし、それで、当分は封印して、しばらくしたら、中身を組み替えるなりして、もう一度出そうと思っていたのだ。  数年が経った。

………(中略)………

 この時点で、双葉社では出せなくなっていた。これだけ長くほっておいては、仕方がない。
 どこか違う版元を探さなくてはいけない。
 塩漬けにしている途中で、小さい出版社から、いくつか語はあったのだが、どうせなら多少は大きいとこから出したいなどと色気もあり、断っていたのだ。
 扶桑杜文庫から、出さないかという話があった。
 まさに、〈多少は大きいとこ〉である。
 ぼくはすぐに話を決め、『薔薇の木』と『こけし岳』を、この際洗いざらい出してしまうことにしたのだ。一巻目を出してから、実に8年以上。連載が終わってからでも4年ちょっと。長年の懸案を果たして、今は、すっきりとした気分である。

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