ファスト化する日本建築

著者名

森山高至

判型

新書判

定価

1155円(本体1050円+税)

発売日

2025/04/24

ISBN

9784594100063

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ためし読み! 

この本の内容

早い工法、安い建材、簡単な計画── 
最近の建物、 なにかがおかしい!?

・「木」を貼りたがる公共施設
・写真映えを優先する建築デザイン
・迫るタワマンの「大規模修繕」問題
・理念のない大阪・関西万博 ……etc.

建築エコノミストが現代日本の建築業界を蝕む「腐敗」を斬る!


いま、日本の建築業界の根底が揺らいでいます。
たとえば、有名建築家によって設計された施設が、オープン時には華々しい見た目から話題になったものの、本来なら何十年ともつはずなのに、数年で朽ちてしまい、何億円と補修費用がかかる……というニュースが世間を騒がせています。
また、住宅や商業施設では、石や無垢材といった自然木材を目にする機会は減り、化粧板や合成素材といった「フェイク建材」が巷に溢れ、本物の素材を扱える職人は姿を消しつつあります。
どうしてこのようなことが起こっているのでしょうか。
バブル崩壊以降、社会に余裕がなくなり、建設においても「早い・安い・簡単」、つまり「ファスト」を追い求めた結果、ますます建築業界も疲弊し、社会に悪循環をもたらしている……と説くのは、建築エコノミストの森山高至氏です。そんな建物の「ファスト化」は、わたしたちにもたらすのでしょうか。
そこで本書では、建築文化の成立を歴史から読み解き、ひるがえっていまの建築業界に山積する問題とその原因はなにかを、「住宅」「公共施設」といった身近なところから、オリンピックや大阪・関西万博のような「国家」レベルの大規模なものまで、さまざまなテーマから徹底的に解説します。


「『ファスト』が建築と結び付いたとき何が起きるでしょうか。
本来、建築とは『ファスト』とは真逆なものであったと思います。
長い時間をかけて造り、長い時間使用する。建築とは、本来じっくり考え、ゆっくり建てるということが前提だったのですが、それが、この何十年かのうちに、すぐに効果があって、てっとり早く手に入るものになりつつあり、その結果が、すぐにダメになって、すぐに必要がなくなるような事態が起きているのです、建築なのに。そのことは、社会や企業の行動にも影響を及ぼし、その結果、建築を考える建築家や、建築の構造や設備を考えるエンジニアにも、デザインを考えるデザイナー達にも、その傾向は現れはじめました。
 そして、挙げ句の果てには、大型の公共施設の建築から、都市計画にも、都市の作り方から国の有り様に向かっても、ファスト化は進行しています。
壊さなくてもいい街を壊し、通さなくてもいい道路を通し、残すべき街が無くなり、直さなくてはいけないインフラが放置されている。(中略)
建築家やデザイナーが、できた瞬間だけ評価を得られればいいと、写真映えや話題性を優先した設計デザインをおこない、早過ぎる老朽化や表現の陳腐化を知らんぷりで次の仕事をこなす。
 そして、人々が、自分の生活が手一杯で、周囲の環境や、地域文化の継承や、社会制度の維持などを意識することなく、切り離された生活を送っていくようになる。
そうしたファスト化に向かう社会現象を、私たちの暮らす社会環境そのものが産み出しているのではないか、そのことを「ファスト化する建築」を通じて見ていくことが本書の狙いです」
──森山高至 (「はじめに」より)


【目次】
第一章 公共施設のファスト化
「腐る建築」とは/建築文化を作る気候条件と生活様式/人口減少時代の多目的公共施設/安易な建築思考がもたらす悲惨な結果 ……ほか

第二章 商業施設のファスト化
商業施設のはじまりは百貨店/バブル崩壊で衰退する百貨店建築/ファストデザインを支えるフェイク建材 ……ほか

第三章 住宅のファスト化
街並みと無関係な都市型狭小住宅の開発/下駄履きマンションの意味/玄関が家? 狭小賃貸住宅の登場/デザインをしなくなった家 ……ほか

第四章 建築人材のファスト化
枯れていく建築人材/建築業界を揺るがした耐震偽装事件/建設現場における進まぬIT化と進む後期高齢化/疲弊する林業と木材のファスト化 ……ほか

第五章 都市のファスト化
美しい国づくり政策/明治神宮外苑再開発問題/東京オリンピック誘致と新国立競技場問題/タワマンは大規模修繕ができるのか?……ほか

第六章 国際社会における国家のファスト化
2020年東京オリンピックメイン会場の迷走/再開発における解体工事の困難さ/テーマが見えない大阪・関西万博2025/軟弱地盤の夢洲会場と突如会場に現れた木造リング ……ほか

著者プロフィール

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森山高至
森山高至(もりやま・たかし) 建築エコノミスト/一級建築士 1965年岡山県生まれ。88年早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、齋藤裕建築研究所に勤務。独立後は戸建住宅から大型施設まで数多くの設計監理業務に従事するかたわら、建築と経済の両分野に精通した「建築エコノミスト」として地方自治体主導の街づくりや公共施設のコンサルティングにも従事。いわゆる「新国立競技場問題」「築地市場移転問題」では早くからその問題点を指摘し、難解な建築の話題を一般にも分かりやすく解説できる識者としてテレビやラジオのコメンテーターとしても活躍する。 主な著書に『非常識な建築業界 「どや建築」という病』(光文社新書)、『ストーリーで面白いほど頭に入る鉄骨造』(エクスナレッジ)など。

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