ブログの更新遅くなってしまい、申し訳ありません…。
さて、5月末刊残りの2点、まずはグリン・ダニエル『ケンブリッジ大学の殺人』です。
『悪女パズル』『オックスフォード連続殺人』『切り裂かれたミンクコート事件』…細々と続けて参りました「扶桑社本格路線」本年度の結実でございます!

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グリン・ダニエルの名前は聞いたことがない方も多いかも知れませんが、本書の翻訳者・小林晋さんが国書刊行会さんの世界探偵小説全集の月報で「知られざる巨匠たち」として紹介していた、あの人物です。
あらすじはこんな感じです。

ケンブリッジ大学が明日から長期休暇に入るという夜、フィッシャー・カレッジ内で門衛が射殺された。副学寮長のサー・リチャードは、一見単純に見える事件に複雑な背景があることに気づき独自の調査に乗り出すが、やがて帰省した学生のトランクから第二の死体が発見され……。
めくるめく推理合戦、仮説の構築と崩壊、綿密きわまる論理的検証、そして卓越したユーモア。考古学教授を本職とする著者がものした、本格ファンの魂を揺さぶる幻の40年代クラシック・パズラー、ついに本邦初訳なる!

予め言っておきますと、文体はヘビー。発端は地味。最初は、読み進めるのに苦労されるかもしれません。
でもね、中盤戦に入ってからは、ホントに素晴らしいんですよ! 地味だけど!

ノリとしては、仮説の構築、崩壊、再構築を主眼とするという点で、コリン・デクスターに近いものがあります。40年代ということでいえば、むしろクロフツあたりを意識した作風なのかも。
小出しに謎解きに必要な因子が提示されて、その都度事件の解釈が組み変えられていく流れもクロフツっぽいですが、より意識的に「毒入りチョコレート事件」「陸橋殺人事件」みたいなことをやろうとしているのがよく分かります。
クロフツ的な捜査/検証形式の本格と、バークリー的な本格批評としての仮説並列形式の折衷、止揚といった感じでしょうか。
一番感心したのは、「確定事項」「未確定事項」を峻別する、通常の本格よりきびしい姿勢です。
それぞれの「仮説」がどれくらいの「確かさ」の上に立脚しているかを、どの探偵役も、ものすごく執念ぶかく検証している。(主に名探偵の)言ったもん勝ちが主流の本格ミステリにおいて、証言の信頼性や証拠の信憑性、それらによって構築される「仮説」の妥当性にこれだけ真摯に向き合っている例は少ないと思うんですよ。このへんのこだわりには、著者が考古学者だということと関係しているのかもしれませんね。

まあ、担当者としては、容疑者一覧の検討リストと、アリバイ表を完備した本格というだけで、もう涙がちょちょぎれんばかりなんですが………ああ、なんだか熱く語っちゃいました……(汗)すいません。
とにもかくにも、玄人のクラシック本格ファンを唸らせる逸品。ぜひご賞味くださいませ!(編集Y)

2008年6月 9日 21:07

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