2020年12月末発売の新刊は、『つけ狙う者』(上・下 染田屋茂・下倉亮一訳)。
前年、『砂男』(上・下)を発売して、大変好評を得ました、ヨーナ・リンナ警部シリーズの第5弾です!
解説は、チャールズ・ウィルォード『拾った女』以来の登場となる、杉江松恋さんにお願いいたしました。
北欧ミステリーが大好きな上司が、今回も自ら担当しております。ようやく編集者も読み終わりましたので、遅まきながら更新いたします。


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 あらすじはこんな感じです。

国家警察の警部ヨーナ・リンナが姿を消してから8カ月――彼の後任となったのは、臨月間近のマルゴット・シルヴェルマン。
いま彼女が担当しているのは、独身女性の連続惨殺事件だ。
どの被害者も残酷なまでに顔面を傷つけられていたのみならず、犯人は、犯行の直前に被害者の姿が映った映像を警察に送りつけていた。目撃者もなく、被害者どうしの接点や共通点もないなか、警察は過去の犯罪歴から強迫的な執着を持つ性犯罪者の洗い出しを進めるが、容疑者らしき人物は浮かんでいなかった。
マルゴットからの依頼を受け、事件の第一発見者に催眠聴取を行った精神科医のエリック・バルクは、遺体が奇妙な姿勢を取らされていたことを知る。エリックの脳裏に浮かんだのは、共通点のある9年前の事件だった。
容疑者の牧師ロッキー・キルケルンドは、エリックの精神鑑定により医療刑務所の精神病棟に送致されたが、本人はアリバイを主張していた。もしあの事件に真犯人がいて、今も凶行を繰り返していたとしたら・・・・。

前作『砂男』は、シリーズ主人公であるヨーナ・リンナ「自身」の事件でもありました。


連続殺人鬼との過酷な闘争のすえ、前作のラストで姿を消したヨーナは一体どうなったのか。
まずはそのあたりが、本作前半の主眼となります(まあシリーズというくらいで、あのまま死んだりはしていないわけですが)。
一方で、本作のメインとなるのは、妙齢の女性の連続惨殺事件。
第二の事件が発生し、妻を惨殺されて記憶の混濁している発見者の夫から証言をとるべく、催眠学者のエリックに声がかかります。エリックは、シリーズ第一作『催眠』にもメイン・キャラとして登場した、ファンにとってはお馴染みの人物。彼もまた、この事件に深く巻き込まれていきます。

前作では、前半戦を公安警察のサーガ・バウエル警部がひっぱり、やがてヨーナ・リンナ自身の事件として物語が反転、深化していく構成が目をひきました。
今回もまた、同じことがヨーナとエリックに役者を変えて繰り返されているともいえます。

『羊たちの沈黙』のトマス・ハリスが打ち立てたサイコ・スリラーの王道を継承しながら、『ミレニアム』以降の北欧ミステリーに特徴的なタイプの警察官たちを主人公にとるケプレルの作風は、堅固でスピ―ディで安定感があります。ここ数作の特徴としては、

●長期的なスパンで事件が展開し、長い闇のなかで悪意を増大させた強烈な個性派サイコ犯が、被害者だけでなく、捜査側の登場人物の人生にまで甚大な影響を与える傾向が強い。

●主要登場人物がみな、まあまあ酷い目にあって、ぼろぼろになるまでサディスティックにいたぶられる。キャラ愛の裏返しですね(笑)。

●あらゆる登場人物が、なんらかの闇や、過去や、謎や、過剰さを抱えていて、類型にとどまらない「えぐみ」を漂わせている。たとえばエリックが恋に落ちる盲目の女性ジャッキーは、ちょっとしたエリックの失敗に激昂してなじりまくるヒステリックな一面を見せるし、その娘マデレーンは母親には見ることのできない自室の部屋の壁一面に汚言や卑語を書きなぐっている、など。本作のヨーナも、ほとんどジョン・ルーサー顔負けの狂犬ぶりを発揮するようになってきてて、好感度はだだあがりです。

本作では、解説の杉江さんもおっしゃっている通り、「キリスト教の信仰」がやがて事件の大きな背景として浮かび上がってきます。舞台設定としても、市街地の住宅街から場末のドラッグ・スポット、田舎街、さびれた工場地帯と、スウェーデンのさまざまな風土と環境が垣間見られて興味深いところです。

そこで暗躍する、謎の〈黄色いレインコートの牧師〉とは?
(おおおっ、なんかニコラス・ローグ『赤い影』の〈赤いレインコート〉を彷彿させて怖いですね!)

読んで損はぜったいにさせません。
よろしければ、ぜひお手にとってみてくださいませ!(編集Y)




















2021年1月10日 09:00

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